第3.33話
配られたステータスプレートはスマートフォン、所謂スマホに酷似していた。
ていうか、これを考えたの絶対地球人だろ、って感じのものだった。まぁ、これからはステータスプレートではなくスマホと呼ぼう。そっちの方がわかりやすいし。
「みんな、使い方はだいたいわかるのかな? みんなの世界の物をモチーフに作られたと聞いているけど」
とりあえず、電源を入れてみた。
電気とかはあるのだろうか。充電差し込み口は無かった。まぁ、異世界のものは大抵、魔力とかだったりで動いてるイメージだし、そんなところだろう。
初期設定の画面が立ち上がる。
名前を入力してください⤵︎
「一条レイ」と入力してっと
ニックネームを入力してください⤵︎
ニックネーム…………? そんなのもいるのだろうか?
「あぁ、ニックネームってのは、本名をあまり知られたくない人もいるからね。特に何もなければ、本名でもいいよ」
ならニックネームは「レイ」にしておこう。
そうして、名前、年齢、誕生日など、当たり障りのないことばかりを聞かれた後、魔力を流してください、というメッセージがでた。
「魔力を流すっていっても、指なんかをそこの丸い部分に当てるだけでいいよ。それで、自分の魔力が端末に認識されるから」
要するに、指をホームボタンに当てろ、ってことか。指紋認証みたいな感じだな。
画面にチェックマークが出た後、ホーム画面が開いた。
見れば見るほどスマホにそっくりだった。
時計、カレンダー、写真、設定、ヒント、マニュアルといったアプリのアイコンがいくつか表示されている。
そのうちの一つ、ステータスというアプリを開くと、所謂、能力値が表示された。
一条レイ (人間)
レベル1
職業:未定
称号:〈数の使徒〉
状態:正常
HP :50/50
MP:50/50
筋力:E 敏速:E 体力:E
魔力:E 知力:E 器用:E
特殊(数):EX
ユニークスキル:《数の使徒》レベル1……【計数】レベル1
ん〜、あまりパッとしない。唯一高評価なのは、特殊(数):EX という部分か。ただ、スキルは【計数】、つまりは、数を数えるスキルってこと。詳しく見てみると……
【計数】レベル1…………
『数の使徒』としての第一歩は数を数えることから。
地味なスキルに思えるかもだけど、一歩一歩頑張っていこう。
……ということらしい。これのどこが特殊:EXなんだろ、って感じだけど、レベル1だしこんなものなのかもしれない。もう一つ気になるのは〈数の使徒〉という称号か。
〈数の使徒〉………………
おめでとうこざいます。あなたは〈数の使徒〉に選ばれました。
ぜひ、あなたの元いた世界の知識、知恵をもとに
この世界をより良いものにしていってくださいね。
困ったことがあったら、私を頼ってください。
by 知恵の女神 メティス
……もっと気になることが出てきた。知恵の女神さま——実在するのだろうか? あるいは、この端末を作ったのも、この女神さまだったりして。まぁ、そういうことは一旦置いといて、
「全員確認できたかな、まだの人がいたら、声をかけてほしい。……よし、大丈夫そうだね」
騎士団長さんが確認の質問をしている。……まぁ、名前じゃなくて、役職で呼んでいる時点で、名前を覚えているのかは察してほしい。言い訳にはなるが、名前が長いし、おまけにカタカナだし。一回で覚えられるわけがないよね。付け加えると、四、五ヶ月、同じクラスで暮らしたクラスメイトの名前すら、一割も覚えていないのだから仕方がない。そう、仕方がないのだ。
「それじゃあ、全員、能力値のところに注目してくれ。見ての通り能力値は、筋力、体力、敏速、魔力、知力、器用、そして特殊項目の七つがある。それぞれ、SSSランクから、SSランク、Sランク、そして、Aランク、Bランクという風に続く。一番下がGランクで、全部で十段階って感じかな」
G、F、E、D、C、B、A、S、SS、SSS。なるほど、ということは、十段階中の下から三番目か。……結構厳しいな。そして、EXランクは言われなかった。エクストラ、規格外という意味だったら、SSSランクの上でもおかしくないとは思うのだが、そんな都合の良い展開はないか。だいたい、数を数えるだけのスキルが規格外なわけないし。
ただ、すごく気になるのが…………
「俺、筋力Sランクだったぜ」
「は? 俺は筋力SSSだからな。ドンマイ、俺の勝ち」
「はぁ、脳筋男子ばっかじゃん……ねぇねぇ見て、私めちゃくちゃ器用ステータス高いんだけど。SSSだって、ヤバくない? モモちゃんは?」
「ん〜私は、魔力と知力ってのが高いかなぁ。それでも、Sランクだから、さっちゃんよりは全然大したことないよ」
……………………
………………
…………
……
これはちょっとヤバいんじゃないか? もちろん悪い意味で。話を聞いている限り、SSSランクのステータスを持つ人は最低でも八人。あまり自慢とかをしないタイプの人もいるから、三十一人中十人以上はSSSランクと見てもいいだろう。加えて、残りの人たちも、話を聞く限り、最低でもSランクの項目があるらしい。
これはクラス転移で一人だけ能力が一般人レベルだった、とかいうパターンだったり。本来は三十人のはずが、三十一人になってしまって、残りの一人にはチート能力が与えられなかった、とか。
微妙にありそうなのが怖い。
そういや、僕って、クラスの中で、席が一番後ろの窓際の端だったなぁ。転移の魔法陣からはみ出してたから、とかありそう。
…………ネガティブ思考はやめておこう。能力が低かったりしても困ることは……あるかもしれないけど、それでも、一般人レベルならまだ生活には困らないだろうし、もし、能力が低くて追放とかになっても、それはそれで、戦争とかに参加させられずに、自由にできるし…………流石にすぐに死ぬなんてことにはならないだろうし……
そこまで考えるとあることに気がついた。この世界の人のステータスの平均がどのぐらいかはわからないが、仮にこのステータスが一般人レベルだと仮定すると、SSSランクは、まず間違いなく最強クラスだろう。一般人レベルのステータスの僕が、SSSランクの人の攻撃を受けたらどうなるか……即死だろうな。
一番危険なのは、クラスメイトかもしれない。何せHPが50しかないのだ。これがどのぐらいかはわからないが、絶対に高くはないことはわかる。下手したら、SSSランクの人はHP5,000以上ある可能性だって少なくない。
役立たずだと言われるぐらいならまだいいのだが、喧嘩になれば死ぬ。かといって、クラスメイトのご機嫌取りは御免だしな。
まぁ、もしかしたら僕と同じくらいのステータスの人もいるかもしれない。三十一人もいるのだから可能性はゼロではないはずだ。
とまぁ、クラスメイトたちが友達と会話している間、一人で考え事をしていたのだが、手に持っていたスマホの振動で遮られた。
ヴゥゥゥゥ
ピコン、ピコンピコン
これをスマホじゃないとしたら、なんだというのか。
振動がして、画面を開いたら通知が連続で四つほど来た。
“技能レベル上昇のお知らせ”
“ レベルアップの条件を満たしたため、
技能【計数】のレベルが1→2に上昇しました”
“スキルレベル上昇のお知らせ”
“技能【計数】のレベルアップに伴い、
ユニークスキル《数の使徒》のレベルが1→2に上昇しました”
“新技能アンロックのお知らせ”
“ユニークスキル《数の使徒》のレベルの上昇に伴い、
新技能【足し算】を入手しました”
“新技能アンロックのお知らせ”
“ ユニークスキル《数の使徒》のレベルの上昇に伴い、
新技能【引き算】を入手しました”
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【計数】レベル1…………
『数の使徒』としての第一歩は数を数えることから。
地味なスキルに思えるかもだけど、一歩一歩頑張っていこう。
⚪︎技能詳細
•数を数えることに対する正確性の向上(微)(常時発動)
•数を数えることに対する速度の向上(微)(常時発動)
⚪︎レベルアップ条件
•数を数えること、数を使って物事を考えることを、
一定回数以上行うこと。
【計数】レベル2…………
『数の使徒』として一歩成長したね。
まだまだ先は長いけど、この調子で頑張って。
⚪︎技能詳細
•数を数えることに対する正確性の向上(小)(常時発動) (up⤴︎)
•数を数えることに対する速度の向上(小)(常時発動) (up⤴︎)
• ??? (new)
⚪︎レベルアップ条件
???
【足し算】レベル1…………
おめでとう。新しい技能のアンロックだね。
たかが、足し算と侮るなかれ。
使いこなせれば、きっと役に立つよ。
⚪︎技能詳細
•足し算に対する正確性の向上(微)(常時発動)
•足し算に対する速度の向上(微)(常時発動)
⚪︎レベルアップ条件
???
【引き算】レベル1…………
新しい技能のアンロック、二つ目だよ。
引き算なんて楽勝かな?
使いこなせるよう頑張っていこう。
⚪︎技能詳細
•引き算に対する正確性の向上(微)(常時発動)
•引き算に対する速度の向上(微)(常時発動)
⚪︎レベルアップ条件
???