表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『剣と魔法』の世界で『数と魔術』を極めてみました  作者: 都鷲斗 翔
第0章 少し長めのプロローグ 〜魔王討伐戦〜
2/10

2.00%

 ()()()()()




 頭で理解した後、真っ先にため息が出た。



 はぁ……どうしてこうなるんだろう……


 空を見上げてみる。

 そこにあるのは紛れもなく七つの月。

 美しく、どこか神聖さも感じられる。

 恐ろしく綺麗な光景。

 どこの世界でも月は綺麗だった。


 何となく周りを見回してみる。


 まず正面の方向。そちらの方向に月が浮かんでいるから、地球と同じであれば、おそらく向こうが南だろう。

 眼下には異世界ものではよく見る中世の街並みが広がっていることが分かる。

 七つもの月があるからなのか、夜にも関わらず割と明るかった。


 そして、背後には、異様な存在感を放つ壁、ではなく、山脈があった。

 さすが異世界、雲一つない夜空に突き抜けるかのような山々。目測だけど、数千メートルはあるかもしれない。


 あとは……目立っているのは街の中央の巨大な円柱状の建物だろうか。

 何だろう。

 結構距離はあると思うんだけど、普通にでかい。

 イメージとしては、現代で言えば東京ドーム、古代で言えばコロッセオといったところかな。


 クラスメイトたちは……皆一様に呆然としていた。まぁそりゃそっか。普通、異世界に来たってなったら混乱するよね。逆に落ち着いてる方がおかしいか。


 まぁ、自分のことは置いといて。


 僕やクラスメイトたちは聖職者らしき人に囲まれている。

 これはあれかな。

 この人たちが召喚しました、みたいな感じなのかな。


 この後はどうなるんだろ。

 さっきまでの憂鬱な気分が嘘みたいだ。

 読書をしている時のように、アニメを観ている時のように、漫画を読んでいる時のように、続きが気になる。

 この先、この後は、どんな展開になるんだろう。


 若干ワクワクした感じで待っていると、聖職者らしき人たちが左右に分かれた。

 聖職者たちをかき分けるようにして現れたのは、The王様という感じの人物、及び、近衛騎士団らしき人たち二十名程。


「ようこそ、勇者様方、国を挙げて歓迎させていただきますぞ」


 両手を広げ、口を開いたのは中央の王様っぽい人だった。

 やっぱり異世界ものだったら、言葉は通じるんだな。

 思ったより若そうな人だ。40代ぐらいかな。


「い、異世界かよ」

 ようやく事情が読み込めたのか誰かが呟いた。


 確か、あれは、クラスの中のお騒がせ者だけど、ムードメーカーの……誰か……だったと思う。顔も名前も知らないけど。いや、顔ぐらいは知ってるか。


「いかにも、勇者様方。もっとも、我等からすると、あなた方の方が異世界人と言うことになりますがな」


 大きく頷く王様(?)


「ゆ、勇者ってどうゆうこと?」

 次に口を開いたのは、普段は落ち着いた感じの人、だった思う、多分。

 確か、あの人は、どっかのお金持ちのご令嬢だったっけ。ま、当然のように名前は知らないけど。

 混乱してるのかな。


 そういや、景色ばかり見てたけど、他の人は今どんな感じかな。

 さっきまでは呆然とした感じの人ばかりだったけど、今は三つぐらいのグループに分かれていた。


 まず一つ目のグループ

 さっき呟いたムードメーカーの男子中心のグループ。

 クラスの男子の半分以上がそっちに集まってる。

 ざわざわした感じで、盛り上がっている。


 次に二つ目

 慌てた感じの女子のグループ。

 全員アワアワしていて落ち着きがない。

 普段の落ち着きはどこへ行った、って感じ。


 そして、三つ目

 逆に落ち着いた感じの人たち。

 ただ、落ち着いてるといっても、若干ソワソワしている。

 感情を表に出さないようにしているつもりでも、内心は結構焦っているんじゃないか?


 残りは、ところどころに散らばっているオタクたち。水を得た魚かよ、ってツッコみたくなる感じだ。


 二つ目のグループと三つ目のグループの違いはリーダー格の落ち着き具合かな。

 二つ目のグループのリーダー的な人は、さっきの混乱してそうな人だったけど、三つ目のグループの中心的存在は頼れる委員長さんだし、その委員長さんが落ち着いてるから、内心の落ち着かない感じを押し殺してるのかな。


 なお、僕は当然のように一人である。委員長さんみたいにコミュ力ないし……


 トントン


「ん?」


 肩を叩かれたので、後ろを振り返ると、噂をしていると本人が。


「えっと、どうかしましたか?」


 委員長さん、そんなに呆れた顔をしないでください。

 僕が何かしましたか。


「はぁ…………」


 あの、人の顔を見てため息をつくのはやめてもらえます?

 失礼だと思うんですけど。


「あの、どうかしましたか?」

「ん〜ん、なんでもないよ。ただ、君は何があっても変わんないなと思って。はぁ……不安に思った自分が馬鹿みたい」

「別にそんなことはないですよ。委員長さんも落ち着いててすごいと思います」

「…………」


 あの、そんなに見つめてこないでください。

 僕が何かしましたか。


「あの、どうかしましたか?」

「…………」


 あの、ほんとに僕が何かしましたか?


「あの〜、委員長さん、本当にどうかしましたか?」

「ねぇ、一条くん……」

「は、はい」


 びっくりした。急に肩をつかまれた。


「私の名前、何か分かる?」

「えっと、いいんちょ……じゃなくて……えっと……」


 やばい。ついさっき言われたはずなのに異世界に来て気を取られて忘れちゃった。


「え〜っと……あっ、()()さんでしたっけ?」

「でしたっけ、じゃないから。いい加減、人の名前覚えなよ。私は()()夢結めいだからね。……まぁ、君のおかげで少しは気持ちもほぐれたけど……とにかく、いい加減名前覚えてよね」


 名札を突きつけてそれだけ言うと、委員長さん、改め、二上さんは去っていった。

 危なかった。漢字は若干忘れてた。まぁ、自分が違う漢字を思い浮かべてたなんて分かるはずがないから、大丈夫だろうけど。


 大丈夫だよね。

 何となく名字を強調しているようにも感じたけど、さすがに気付かれてないよね。


 ていうか何か用があったのかな。

 まぁ、いろんな人の話を聞いて回ってるのかな。

 さすが頼れる二上さん。相変わらずのコミュ力。見習いたいな。


 そういや、さっきの王様っぽい人は何してるんだろ。


 ふと、そちらを見ると、王様っぽい人は、部下と思しき人に何やら指示を出していた。

 何を言っているのかまでは聞こえないけど。


「ウォホン、勇者様方、お待たせ致した。あなた方を王宮内にて迎入れる準備が整った故、我の後についてくるが良い。これから暫くの間、宿泊していだたく場所に案内させて頂こう」


 どうやら、部下との話し合いは終わったようだった。宿泊場所に案内するって言っていたけど、もう手配が済んだのだろうか。さっきのが、そのための指示だとしても、ずいぶん動きが早いな。


「そういえば、まだ名乗っていなかったな。余はこの国の王、アルヴィンである。そしてここは、戦いの女神さまを祀る都市にして、我が国の王都、ワルキナである。諸君らの衣食住については、当面の間、我が国が責任を持とう。何か困ったことがあれば、我らに言うが良い。今日はもう夜も遅い故、一先ず休むように。これからのことについては、明日説明させていただく」


 薄々分かっていたけど、ほんとに国王様だったんだな。まあ、あの格好で、王様じゃなかったら、逆に笑い物だけど。




 その後は国王様たちの後について行き、宿泊場所に案内された。


 見たところ特に階段もない塔からどうやって下に降りるのだろうと思っていたら、最初に王様が現れた辺りに、いわゆる魔法陣があった。さすが異世界。その上にクラス30人と先生、国王様御一行の計60人弱が乗ると魔法陣は赤く光った。そして、一拍置いた後は当然のように、大広間らしきところの、一段高くなっている場所に転移していた。


 その後は、ホテルのフロアのようなところを進んで、これまたホテルのような場所に行き着いた。


 通路の幅は広く、その両側にずらりと部屋が並んでいた。


 驚くことに全員一人部屋らしく、さっきまでの間に31部屋もの場所を手配したらしい。


 ここからは先生の出番だった。

「はい、じゃあ、部屋なんだけど、この通路の両側に15部屋ずつあるから、右側の部屋に手前から、出席番号1番の人から使ってね。で、右側の一番奥が15番の人、左側の手前が16番の人で、一番奥の部屋が30番の人ね。先生はそこの突き当たりの部屋を使うから、もし何かあったら、先生に言ってください。あとは、さっきあの人が言ってたようにお手洗いはそこの右手の方にあるからね。じゃあ、各自解散」


 ちゃっかり、先生は突き当たりの部屋を自分が使うことにしていた。まあ、突き当たりの部屋が確実に広いわけじゃないけど。


 なお僕は、名字が一条で、あ行なので、出席番号は1番だ。なので、一番手前の部屋を借りることになった。


 そして、向かいの部屋は出席番号16番の人なのだが、偶然にも二上さんだった。


「出席番号16番って二上さんでしたっけ?」

「ん? そうだけど。君さ、まさかと思うけど……」

「いや、あの、他人の出席番号までいちいち覚えてませんからね」

「分かってる分かってる。冗談だって。でも、出席番号順に並ぶ時は、隣だったと思うけど、覚えてないの?」


 あ〜、そういえばそんな気がしてきたかも。てっきり二上さんは、ただ、席が隣だっただけだと思ってたけど、そういや、出席番号順でも隣だった気がしなくもないかもしれない。


 また、二上さんが呆れた顔をしている。


 これ以上話していると、また、何か言われそうなので、話を切り上げておく。


「それじゃあ、おやすみなさい」

「はぁ……、おやすみ」


 一応、二上さんに挨拶をしておいて部屋の中に入ってみる。


 …………。


 言葉を失うぐらいの広さだった。

 高級ホテルのスイートルームも霞んでしまうほどの広さ。

 ていうか、天蓋付きのベッドって、どう反応したらいいんだろう。


 色々と部屋を見てまわると、ウォークインクローゼットっぽいところがあり、男女兼用らしき服が置いてあったので、その中から寝間着を選んだ。


 シャワーを浴びて、寝間着に着替えたものの、部屋がやたらと豪華すぎて、なかなか寝付けなかった。

 そもそも、元々転移する前は午前八時半ごろだったのに、異世界に来たら急に真夜中だったし、時間感覚的にも全く眠気が起きない。

 あとは、異世界に来た興奮やその他諸々で、全く眠れなかった。


 こういう時って時間がなかなか経たない。

 そろそろ、朝かな、とか思って、時計を見ても、全然時間が経ってなかったりする。

 異世界にも時計ってあるんだな、とか、どうでもいいことを考え始めると余計に眠れなかった。


 はぁ……全然寝付けない……




 ——そんな感じで一時間ほど過ごした後、不意に物音がした。

次回は明日午後7時に投稿させていただきます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ