サービス
これは小説ではありません。
コント台本になります。
たしか小説家になろうではコント漫才コンテストがあったと思い、試しに投稿して見ました。
B板付で開幕。
店の仕事をしている。
舞台袖 実況「早い早いテイクノブナガ! 今一着でゴール! 二着はヒゲキレンタル! 三着はサークルキューシー! どれもオッズでは超高倍率の馬同士です! 万馬券は間違いないでしょう!」
舞台袖A「や、やった……! フフフ……フフフヒヒヒ! 5000万円! となれば美味い飯だよな!? おっ? そういやぁこの店、前から気になっていたんだよな。入ってみるか!」
競馬場を後にしたAが上手舞台袖より出る。
B「へらっしぇゃー~ひ! お好きな席へどうぞー!」
極めて特長的な挨拶をするB。
A「……。面倒臭いラーメン屋かな?」
不審に思いつつも、とりあえずカウンター席に座るA。
A「メニューは……っと、サバ味噌定食280……280円!? 焼肉定食480円って安い!」
B「そうでしょう! 大サービスですよ!」
仕込みをしながら返答するB。
A「でも定食かぁ……。今日はもっと豪勢にいけるんだよなぁ。別の店に……ん!?」
メニュー表に掲載されている料理に驚くA。
B「お冷はセルフサービスなんで、あちらからご自由に! 漬物とご飯、味噌汁はお代わり自由のサービスです! 他にもデカ盛り完食無料サービスなんてのもありますよ!」
Bが仕込みをしつつ、システムの説明をしているが聞いていないA。
A「た、大将、これ何?」
メニューを指差し確認をするA。
B「あっ、コイツでございやすか? 気になります?」
A「……うん。まぁ。気にするなってのも無理だよね。これ。『シークレットサービス』。ゼロいくつ付いてんの? 一、十、百、千、万、十万……100万!」
B「お客さんお目が高い! これは究極のサービスですぜ! 内容は頼んでからのお楽しみですがね。だからシークレット何ですよ。なんつって! へっへっへ!」
A「これ……今まで注文した人いるの?」
B「それが生憎……」
A「そりゃそうだよな。……フハハハ!」
B「お、お客さん!? お気を確かに!?」
A「違うよ。大将運が良いな。金ならあるんだ。俺が最初の一人になるよ!」
B「本当ですか!? ありがとうございやす! シークレット一丁!」
舞台下手袖に行く店長。
A「いやぁ100万かー! ツイッターにでも上げたら爆バズるんじゃね?」
店内や『シークレットサービス1,000,000円』と書かれたメニューをスマホで撮影するA。
適当なタイミングで黒服が下手袖より出てくる。
A「『競馬で5000万当てたから、100万の食事を頼んでみた(❁´ω`❁)』っと……おわッ!?」
明らかな不審者に戸惑うA。
Aを見つめる黒服。
A「……え……誰? な、何か?」
Aの問いかけに無言の黒服。
黙ってAの背後に、背中合わせで立つ黒服。
A「あ、あのう……?」
B「お待たせしました。ご満足頂けたでしょうか?」
服装と口調が一変した店長。
下手より再登場し、凛々しい敬礼をAにする。
A「あの……これは?」
B「はっ! シークレットサービスでございます。大統領」
A「し、シークレット……? 大統領? ……ッ!? シークレットサービスってそういう意味!?」
B「はっ! もちろんです大統領。他に意味などございません」
しつこく敬礼するB。
A「これが100万の正体か……。でも俺の望んだサービスじゃ無いなぁ。まさか100万でこれだけって事は無いよね?」
B「あッ!? これはとんだ失礼を! 只今用意致します大統領!」
下手舞台袖に走る店長。
A「俺は腹が減っているの。ねぇ?」
黒服に話しかけるA。
しかし黒服は一瞥しただけで微動だにせず。
A「役作りが凝っている……さすが100万」
下手袖から店長が戻ってくる。
B「お待たせしました大統領!」
戻ってきた店長はアタッシュケースを手に抱えている。
B「どうぞこれを」
大事に抱えたアタッシュケースを恭しく手渡すB。
アタッシュケースには『☢』のマークがある。
A「……え? 何これ? 重っ!」
B「核ミサイルの発射装置です」
A「ちょっと!? 違うだろ!」
B「あっ! これは度々失礼を!」
店長は懐から手錠を取り出し、まずアタッシュケースに手錠を掛け、Aの手首にも手錠を掛けようとして振り払われる。
A「やめろ! 保管管理に文句言っているんじゃない! だいたい核の発射装置って随伴する将校が持つ物だろ! 海外ドラマで見た事あるぞ! 24時間リアルタイムが売りの奴で!」
B「お詳しいんですね? わかりました。軍事将校一丁!」
A「ち、違う! そう言う事じゃなくて! 俺は空腹なの! 食事がしたいんだ!」
B「しかし申し訳ありません。あいにくシークレットサービスは、この人件費と核兵器でギリギリの値段設定でやらせてもらってまして、これ以上の提供は難しいんです大統領」
A「核兵器込みで100万!? 意外とやり手だな……って違う! お金ならあるよ!」
B「それなら更なる追加サービスを付けますか? 最高級料理を提供できますよ?」
A「最高級料理? 何だ、あるじゃない! じゃあそれ注文するよ」
B「わかりました! エアフォースワン 一丁!」
A「待ったぁッ! ……ちなみに、それ値段いくら?」
B「日本円で5000億円程度です」
A「……キャンセルだ」
B「でもお金はあると……」
A「キャンセルだ!」
B「しかし、大統領に安全に食事を召し上がって頂く為には、エアフォースワンが最適のサービスなのですが……」
A「キャンセル!」
B「裏の格納庫に待機してあるんですが……」
A「キャ・ン・セ・ル!」
B「皆で一緒に頑張るぞー!」
A「団結!」
B「被告を無期懲役に処す」
A「判決!」
B「教会音楽。聖歌、交唱賛美歌」
A「ッ!? ……ッ!! 何それ!?」
B「anthemって言うんですけど、ご存じありませんか? 大統領たる者、賛美歌ぐらいは歌えないと……」
A「すまない……って何やらせんの! エアフォースワンは必要無いって言っているの!」
B「そんな……あっ、まさか……ホワイトハウスの地下シェルターをご希望ですか? あいにく、いま立て込んでおりまして」
A「おい!? 地下シェルターが立て込んでるってテロか戦争が起きてるんじゃないか!? 直ぐに陣頭指揮を執るべきだろう!?」
B「仰る通りです! 直ぐに向かいましょう!」
A「うむ。……違う! 食べる場所の問題じゃない! 大体エアフォースワンやホワイトハウスに予約出来るって大将あんた何者なの!?」
B「フフフ……!」
不敵に笑うB。
A「何がおかしい! そもそも5000億も持ち歩けるか! 一億入るアタッシュケースが5000個必要だぞ! ……5000万しか無いよ!」
B「5000万!?」
A「5000億は無理だけど、これなら何でも食える―――」
B「プププ……!! そんな端金で当店を!?」
A「端金!? このメニュー表、シークレットサービス以外、ワンコンインで全部いけるだろ!」
B「おっと、これは一本とられましたね、HAHAHA!」
A「腹立つ……! あーもう、そのサバの味噌煮定食でいいよ! ここで食べる!」
B「大統領がサバ味噌? サバ味噌って……! ぶふぅ!」
笑いを堪えるが吹き出てしまうB。
A「自分とこの料理を笑うな! 略すな! 良いだろ! サバ味噌食べる大統領が居て何か問題が!?」
B「も、申し訳ございません大統領! すぐにお持ち致します!」
下手袖に引っ込んだ店長が直ぐに鯖の味噌煮定食を持ってくる。
A「嫌に早いな!?」
B「はい大統領。味噌煮は作り置きが基本で盛り付けるだけですから」
A「まぁそれもそうか。じゃあ頂きます。はぁ……5000万儲けてサバ味噌かぁ」
Aが食べようとしたサバの味噌煮定食を黒服が食べる。
A「何すんだ!?」
B「毒味です大統領」
A「~~~ッ!! もういい! 大将! 勘定だ!」
B「お勘定はシークレットサービスの100万とサバ味噌定食280円で……えっと……」
A「100万280円ね! そんなに難しい足し算か? ほら! ギネスに乗りそうな無駄使いだよ全く!」
B「ありがとうございました大統領。ところで、一つ訂正がございます」
A「まだ何か!?」
B「私は大将は大将でも、定食屋の大将は世を忍ぶ仮の姿。真の姿は空軍大将です」
A「世を忍び過ぎている! と言うかいつまでサービス続いているの!?」
B「フフフ……。だからエアフォースワンやホワイトハウスの予約も―――」
SE:銃声
B倒れる
A「……え? 血が……? ふごぉッ!?」
黒服に首根っこ掴まれ地面に伏せさせられるA。
銃で周囲を警戒しながら、無線で連絡を取る黒服。
黒服「伏せて大統領! 緊急事態発生! 空軍大将が撃たれた! 狙撃だ! 総員退避!」
A「え? 退避って本当のテロ? え!?」
黒服「私は大統領を連れてエアフォースワンへ脱出する! シークレットサービス全員援護せよ!」
A「ちょっと! エアフォースワンって、5000億円も持ってないよ!?」
黒服「後で取り立てます!」
A「嫌だよ!?」
黒服「大統領! 早く!」
SE:銃撃戦
黒服、応戦しながら嫌がるAを立たせて下手袖に行く。
A「引っ張るな! 止めてー!」
暗転