悪役姫は、助言される。
敵らしき影は去った。
そして終了を告げたのはもちろん精霊王様の声だった。
「……まさかの瞬殺。こんなことある?」
「これで勝ちでいいんですわよね?」
気持ちよく倒せて機嫌がいいミリアリアに、精霊王様は信じられないと若干引き気味だった。
「あ、うん……いやどうかな。もうちょっと自分の心と向き合ってほしかったんだけど」
「そんなの日々向き合っていますわよ。まだこんな無様な部分が自分の中に残っていたことが屈辱ですわ」
アレは向き合ったからこそ、これではいけないと反面教師にしてきた自分の姿だ。
ありゃダメである。
今更出てきたところで心が乱れることはないが、主張までされると見ていられない。
しかし極悪で無様であればこそ、ザマァが成立するのもまた事実。そこの心の機微はわからない訳ではないミリアリアである。
「まぁ、あの自分でなければ、内なる彼らはいつか見限るのではないかという不安の現れといったところですわね……。我ながら情けない話ですわ」
「内なる彼らねぇ……それがどんなものなのか理解しているのならそれでいいよ。要は確固たる君があるかどうか、どんな時でも複数の意識と向き合う時には大事なことだ」
「まぁ。漠然としていることは否定しませんわ。不安があったことも認めます。いつかわたくしがもっと感情的になった時どうなるのか……わたくし自身わかりませんしね」
ミリアリアは彼らの強大な力をこの世界の誰よりも知っているだけに、その恐ろしさも理解している。
もし感情任せに暴走でもさせた日にはどうなるのか、ミリアリアだって肝の冷える話だった。
「その点は気を付けるべきだね。あとは、一方通行にならないでほしいというのは精霊側の意見だ。精霊の場合の話だけど、僕らの自我は本来弱いけれど、精霊もまた君達を見ている。力を借りるというのは双方に思いがあるんだと言うことを忘れないでほしい」
「ええ、忘れないでおきますわ。わたくしの中で繋がっている彼らはその点、精霊よりも熱心ですから、精々飽きられないように頑張ります」
「うん。しかし……聞けば聞くほど訳が分からないね。本当にそれは何なんだい?」
「せっかく色々とアドバイスしてくれたのに、台無しな質問をするのはやめてくださいまし。少なくとも敵ではない……はずですわ」
「君こそ……理解が深いんだか浅いんだかわかんなくなるようなこと言わないでよ。本当に大丈夫なのかい?」
「もちろんですわ。力どころか、彼らの記憶を垣間見ることもできますのよ? まぁ疑問に思ったことの答えを彼らが持っていればという話ではありますが、何より彼らはわたくし達以上にこの世界について詳しいですから、うまくやります」
「へぇ。それはすごい。じゃあ僕の事もわかったりするのかい?」
「……ノーコメントですわ」
いきなりの質問にミリアリアは精霊王様の設定を思い浮かべかけて、しかし首を振って余計なことを考えるのはやめておいた。




