悪役姫は精霊王に出会う。
頭に響いた声があまりにも神々しくてミリアリアですら一瞬固まり、メアリーとダークはピンと背筋が伸びている。
だがすぐにミリアリアは最高の笑みを浮かべて、現れた「彼」に視線を向けた。
「こんにちは。それはよかったですわ。家のメイドが入れるお茶は絶品ですのよ。きっと楽しんでいただけると思いますわ」
それに応えてニッコリと笑いかけた彼は、光る長髪に黄金の瞳を持った青年の姿ではあったがミリアリアにも一目でやばいとわかった。
人の形をしているけれど人ではない。
彼はとんでもない力の塊みたいなものだった。
まぁどんなにヤバかろうがお茶会はするんですけどね?
青年はふんわりミリアリア達の前に舞い降りると、祭壇に腰を掛けてミリアリアに語り掛けた。
「ようこそ精霊宮へ。ダークが世話になっているようだね」
「ええ。楽しく日々を過ごさせていただいていますわ。それで今更ですけれど……あなたが精霊王様……で、よろしいんですわよね?」
ミリアリアは人型の彼に尋ねると精霊王様は微妙は表情を浮かべた。
「そう呼んでくれる者もいるね。うん。精霊王実に偉そうな響きだろう?」
「偉いのは別に悪いことではないでしょう? とても素敵だと思いますわ」
「偉いわけでもないんだけどなぁ。では早速聞いてしまおうかな? 君は何をしにここへ?」
「あら? それはそんなに大事なことですの?」
「もちろん。過去ここに来た人間達はろくでもない事を考えているやつが多くてね。まずそこのところを尋ねておきたいんだ」
美しい顔立ちの精霊王様が少しすごんだだけでも、度を超えた迫力がある。
ミリアリアはヒリつく空気を感じながらも、それを表情の筋肉を一切揺らさずに受け流す。
「それはまた、ご苦労なさっているのですね」
「そうとも。出来れば面倒事は早めにはっきりさせてもらいたいのさ」
気軽な口調ではあったが精霊王様は結構警戒しているらしい。
ミリアリアはアララと内心苦笑して、パチンと指を鳴らした。
「そうですわね……では単刀直入に。メアリー!」
「ハハハハ、ハイ! ミリアリアサマ!」
「いくらなんでも緊張しすぎですわよ。メアリー、さっそくお茶の用意をよろしくて?」
「わ、私がですか!?」
「他に誰がいるんですのよ? ちなみにここでお盆を落とすと、どんなことになるのか見当もつかないから頑張るんですわよ? 豚にされてしまうかも」
「ぶ! 豚ですか!?」
「しないよそんなこと」
口を尖らせる精霊王様は、今度は首をかしげてミリアリアを見た。
「で? どういうこと?」
「何しに来たのかの答えですわ。見ての通りわたくしここにお茶しにきましたの。わたくし今は冒険者ですから冒険する道すがら選りすぐりのお茶菓子も仕入れてきましたわ」
「……本気で言ってる?」
「もちろん。お付き合いいただけます? ああ、ダークは里帰りですの。前にここにいたような気がするけれど記憶が曖昧なんですって。フフフッ。知っていることがあるのなら教えていただけると嬉しいですわ」
「フフッ……いいね。ボクもお菓子を食べるなんて久しぶりなんだよ。およばれしてしまおうかな?」
「ええ、光栄ですわ」
とりあえずなんとかなったかとミリアリアはちらりと旅の仲間の顔色をうかがう。
その顔色はみんなちょっと死にかけのように真っ青だけれど、まぁおおよそうまくいったのではと自負しておいた。




