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悪役姫は綺麗になる。

「メアリーなんというか―――今まで御免なさいね?」


 ミリアリアが窓際で優雅にティーを嗜みながら朗らかに笑って礼を言うと、侍女のメアリーが銀のお盆を落とした。


「ど、どうなさったのですかミリアリア様っ……!」


 いやそこまで驚かなくてもいいんでなくって?


 乗っていた結構高い茶器も粉々だし、すんごく失礼な反応だけども今なら許しちゃう。


 今のミリアリアは……そう綺麗なミリアリアだ。


 だけど代金は給料から引いておくよう言っておくわね。


 そんなことを想いながらミリアリアはにっこりと微笑んだ。


「なんということはないですわメアリー。わたくし、今日は人生で稀に見るほど機嫌がいいの。なんていうの? 人生カチカク? 今なら世界の真理にだって手が届きそうですわ」


 まだなんも始まってないから説明なんてとても出来ないけどこの気分である、察してほしい。


 しかしさすがはメアリー。


 こんな突飛なミリアリアの言葉に、そう間も置かずハッと何かを察したらしい。


 メアリーはそっとミリアリアに歩み寄り、未だかつて人生の中で体験したことがないほどやさしく肩を叩いてきた。


「そうですか……ミリアリア様もそのような時期が来てしまいましたか。……ええ、実に素晴らしいご発想です。しかしです……夢はそっと胸にしまっておかなければなりません。淑女としてはもちろんですが、口にしてはお嬢様自身が後々とても苦しむことになるでしょう」


「そうなの? なぜかしら? 戯言と笑うことができないわ。メアリーは何でそんなに唇を噛んでいるの? 血が出てない?」


「何でもありません……古傷が痛んだだけです。お嬢様はもうすでにやんごとなきお方。しかし努々今の忠告を覚えておいていただきたいです」


「そう?」


 メアリーはただただ優しく、胃が千切れそうだと言わんばかりにお腹を押さえていた。


 きっと触れてはいけない傷に触れてしまったに違いない。だけど全然かわいそうに思えないのはなんでだろ?


 それはまあいいとして、言葉だけ見れば確かにミリアリアの言は空想の類なのは間違いなかった。


 ミリアリアちゃん最強育成計画は始まったばかりである。


 だからこそ動かなければならない。


 まだ始めたばかりで絶賛筋肉痛気味の腕で鉄扇をパチンと広げてミリアリアはメアリーに命じた。


「さて……では早速欲しいものがあるから、商人のマクシミリアンでも呼んでもらえるかしらメアリー?」


「は、はい。マクシミリアンでございますね。すぐに」


「よくってよ。今回は買取もお願いしたいからと伝えておいて」


「買取でございますか?」


 驚くメアリーにミリアリアはうむと頷く。


 これに関しては今までの生活を鑑みるに予想の範囲内だった。


「ええ。少々身辺の整理を。わたくし断捨離ブームですの」


「だんしゃ……はよくわかりませんが分かりました?」


「ではよろしくね。メアリー」


 大事なところなので丁寧にお願いして送り出す。


 出ていく時「近々槍でも降るかもなぁ……」なんて呟いたのは聞かなかったことにしてあげた。


 まぁ明日のおやつは出さないけれど。


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