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悪役姫は脱出成功する。

「ふぅ……成功ですわね! 素晴らしいですわ!」


 はずみだったが、複数人のテレポートを成功させてしまった。


 ミリアリアの進化が止まらない。


 城の外まで長距離移動できるというのなら、来るべき日に逃亡も視野に入れられるのは画期的だった。


 しかし画期的だと喜んでいたのはミリアリアだけだ。


 初披露の術に混乱している赤毛君はまるで怯えるハムスターのようである。


「な、なな。なんだここは!」


「さて、では決闘するとしましょうか! 勝負の内容はここにいるモンスターを先に倒した方が勝ちでどうです?」


「人の話を聞け!」


「何言ってますの。問答無用で勝負を吹っ掛けて来ておいて。場合によっては子どもだろうと首が泣き別れですわよ?」


「いや、それは……」


「あるでしょう。わたくしこれでも第一王女ですし。守るべき相手に勝負を吹っ掛ける騎士なんてどうなんだという話ですわ。まぁ……うちの気風から言って大丈夫だとは思いますけれど」


 お母様、結構脳みそ筋肉だからなぁとミリアリアはため息を吐く。


 だからこそ危ない気もするが、勢いとかノリとかで押し切れそうな気がしないでもない。


 だがまぁ今回の一件ミリアリア的にはむしろ感謝したいくらいだった。


 外に行く口実としては素晴らしい。


 ちょっと派手に無茶をしたので、怒られはするだろうが全面的にミリアリアだけが悪くないのならきっとうやむやになってくれるに違いなかった。


 その上レアモンスターのドロップ品でもお土産に持って帰れば、実績作りにもなって一石二鳥である。


 ミリアリアは悪だくみの成功を確信してさっそく周囲を見回した。


 転移してきたのは大ムカデのいる山ではあると思う。


 見たこともない景色だが、ミリアリアのレベルアップした空間把握能力はここが目的地であると告げていた。


「それでどうしますの? 決闘なんてしなくてもわたくし一向にかまいませんが? せっかく来たのでわたくしは行きますわよ?」


「な、なな」


 完全に混乱している赤毛君には悪いことをしたとちょっぴりミリアリアは思った。


 まぁ決闘云々は正直どうでもいいミリアリアだが、赤毛君にも闘志は残っていたようだった。


「やる! 俺はあんたの力が知りたいんだ!」


「ならば結構。では勝負の内容も先ほど提案したものでよろしくて?」


「ああ! 構わない!」


 なんともちょろいお子様である。ミリアリアはちょっと心配になって来た。


「あら? でも貴方ひょっとして丸腰? ちょっと危機感が足りないんじゃなくって?」


「お前がいきなりこんなとこ連れてくるからだろうが!」


「そんなこと言われても。わたくしもこんなに唐突に都合のい……不本意な勝負を挑まれるとは思わなくて。急いだほうがいいかなって」


「挑んだ俺が言うことじゃないかもしれないけどそれはおかしい」


「要望通りになっているんだから喜びなさいな。でもわたくしもちょっと悪かったかな? と思わなくもないから、武器くらいあげましょう。貴方の得意な武器はなんです?」


「……剣だ。片手剣。しかしそんなものどうやって……」


「片手剣ですわね」


 ミリアリアはキャリーバックの中から一本の剣を取り出す。


 隠しダンジョンのドロップ品で火属性の片手剣でイフリートというらしい。


 その剣を見た赤毛君は魅入られた様に固まっていて、手に取った瞬間正気を取り戻して叫んだ。


「こ、これを俺に! か、返せばいいんだよな?」


「差し上げたつもりですわ。返さなくて結構」


「そういうわけにはいかないだろう!? この剣なんか……すごい奴だろう? 父上の持ってる魔剣よりすごい力を感じるぞ!?」


 興奮して早口で混乱を口にする赤毛君は、この剣に秘められた力が理解できるらしい。


 ミリアリアは目利きも前途有望そうで何よりと頷くが、説明はめんどくさくなって、先を急いだ。


「まぁ気にする必要はありません」


 勝負など、建前でしかない。大事なのはこの場所に住む大ムカデだ。


 ミリアリアは手配書の出現ポイントに向かって意識を向け、荒れた岩山に道を作り出す。


「ブラックカーペット」


 黒いロールカーペットが現れ、くるくると伸びながら道を作るとミリアリアはその上に飛び乗って前進した。


「なんだその術!」


「山道用の術ですわ!」


 赤毛君はカーペットに驚いていたが、勝負の最中にそんなことを気にしている暇はないはずだ。


 ミリアリアは改めて問う。


「……逃げるならさっさと逃げなさい? 死んじゃうかもしれませんわよ?」


「死?……いや! だ、誰が逃げるか!」


 ミリアリアは軽く溜め息を吐く。


 まぁモンスターに襲われて死なれてもめんどくさい。


 ミリアリアは赤毛君がついてこれる程度にゆっくり目的地を目指すことにした。


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