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悪役姫は散歩に向かう。

 誰も見ていない自室でのティータイム。


 本を片手にミリアリアはそれをじっくりと読み込んでいた。


 メアリーはそんな主人に心配そうな視線を向けて言った。


「お嬢様……一体何を読んでいらっしゃるんですか?」


「冒険者ギルド発行、月刊危険モンスターリストですわ」


「……なんでそんなものを読んでいらっしゃるんですか!?」


「そりゃあ気になるからでしょう?」


「危険モンスターに一国の王女が何を気にする要素があると!?」


 いちいちリアクションの大きなメアリーを煩わしく思いながら、ミリアリアは視線をモンスターリストから外した。


「わたくしですわよ? 恋愛小説なんかよりもらしいと思うんですけれど?」


「それは……それで問題があるのでは?」


「些事ですわ。ああ、でもこのこぶ山の大ムカデって素敵じゃありません? 確か中々防御力が高いとか」


「とても危険なモンスターだと聞いたことがありますが……素敵な要素がありますかね?」


 心底訳が分からないという表情のメアリーにミリアリアはもちろんだと頷いた。


 まだ討伐されていないのなら、ぜひ一度見に行きたい。


 それというのもこの大ムカデというモンスターは作中で大変重宝されたモンスターなのだ。


「でも……さすがにちょっと今は出歩きづらいですわね。まぁ戦闘スタイルの確認はできたのだし、今はこれで良しとしましょう」


「お嬢様は一体どこに向かわれているのですか? それとこの浮いてる鉄球はずっと浮きっぱなしなんですか?」


「いい加減なれなさいな。城で浮かべるならタダの鉄球では浮くと思って、デコレーションしたんですから。中々絵になるんじゃないかしら?」


 わざわざ職人に特注しただけあって、その輝きは高品質なツボのごとしだ。


 どんなコーティングを施したのか、触り心地も抜群である。


 このまま美術館にだって飾れそうなのに、残念ながらメアリーにはこの良さがわからないらしい。


「絵になるというか……理解不能で、なんだこれ? って感想なのですが」


「認知度の問題かしら? 心身ともに鍛えられて優れモノなんですけど……こうなったらわたくしが何としても流行らせましょう! デコレーション鉄アレイとかから始めたらワンチャンいけるんじゃないかしら? ほら、やっぱり部屋に置いてあると無骨じゃない?」


「ど、どうなんでしょうか?」


 ふむ。メアリーの戸惑い気味の反応を見るにやはり新しいものというのは戸惑いを生むものらしい。


 こういう時に効果的な魔法の言葉をミリアリアは呟いた。


「とにかく鉄球は必須です……精霊術の訓練には欠かせませんわ」


「お嬢様。……すべてそれでごまかされると思ったら大間違いですよ?」


「ええい! うるさいですわよ! なんと言われてもやめるつもりはないんですから諦めなさい!」


「やめさせはしませんが……精霊術は王族にとってとても大切なものですから」


「でしょう? 大事なことですのよ?」


 いえね? 本当に生命線になるくらいには大切なんです。


 これから先、強くなるための方法を試すのは何もラストダンジョンだけがすべてではない。


 この大ムカデもそう、本当を言うならもっと早い段階に戦ってみたい相手ではあった。


 だが問題は、全面的にわがままを押し通せるほどミリアリアは日頃の徳の積み方が足りないということだろう。


 まぁ、「何かあってもミリアリア様なら大丈夫よね?」 みたいなそう言うものが足りないのだ。


 ついでに何をやってもいい噂にならないのは、メアリーの反応を見れば明らかである。


 お出かけ一つするにも気の使い方が半端ではないのは、一国の王女の辛いところだった。


 ミリアリアはなんかめんどくさいなーとため息をついた。


「はぁ……なにかこう……面倒を丸っと肩代わりしてくれる方はいらっしゃらないかしら?」


「お嬢様?」


 メアリーの顔が怖いけれど、そう都合よくいくものじゃない。


 ミリアリアは仕方がないと、この平行線の議論はやめにして、お茶を飲み干して席を立った。


「今日の精霊術の授業はお休みよね? ちょっと気晴らしに散歩でも致しましょう」


「そうです、そういうお姫様らしい息抜きの仕方がよろしいのです。すぐにご用意いたしますわミリアリア様」


「メアリー何か面白いことありません? お城に都合よく伝説の剣士とか来ていないかしら?」


「残念ながら……騎士の修練場ならありますが」


「考えようによってはこの国最強の戦士が沢山いるんでしょうけど。まぁ行ってみましょうか」


「え? 騎士の修練場にですか?」


「もちろん。貴女が言い出したんでしょ?」


 ミリアリア的には肉弾戦も興味がある。


 最強装備を手に入れたのだから、かなり関心があると言ってよかった。


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