悪役姫は大いに休日を楽しむ。
夏のバカンスはエンジョイできました。
ダンジョンに意識を割かなくてよい分、精霊術の試行錯誤もできたのは収穫です。
おじい様との団らんも、いつもと比べれば退屈だとかそういうことを言わなかった分円滑だったのは間違いないでしょう。
こういう余裕のある態度こそ、目指すべきところなのです。
団らんと言えば森の散策中、木々が密集した場所は管理が行き届いていない森なのでモンスターがたまりやすく危険だという話を聞いたので、一人で来ることがあればできる限り暗いところに突っ込んで、木々ごと薙ぎ払おうと思いました。
流石はおじい様、確かにゼリーが森の暗がりから大量に襲い掛かってくるというハプニングがありました。
でも不意打ちとかマジありえないです。靴が汚れました。
それにこの世界の真理の関係でちょっぴり怒髪天を突いたので、闇精霊術で叩き潰してやりました。
森はそりゃあもう景気よく木がへし折れて日当たりが良くなったので良かったと思います。
反省するところは木どころか地面まで盛大に陥没してしまってちょっとした湖みたいになってしまったことです。
来年くらいには湖になって観光スポットになったらいいなって思いました。
「ふぅ……こんなものですわね!」
本日の最強ミリアリアちゃん育成日誌を書き上げたミリアリアは満足げにペンを置いた。
実に有意義な休日である。
「低レベル帯のモンスターとも戦えましたし、思ったより強くなれててビックリですわね」
かなり自重なく戦いつつ、自分の実力を示せたと思う。
こういう時、実力を示すことで、原作になぞらないことで生まれる微妙なアクシデントフラグは一掃してしまえるに違いない。
誰しも強そうな相手に、好き好んで喧嘩は売らないに違いないという、野獣スタイルトラブル回避術である。
「んー。どうにも道を踏み外している気がしますが、仕方ありません! なにせこの世界はRPGですからね!」
忘れそうになるが、そう言うことである。
さて楽しかった思い出は胸いっぱい溜まって満足したミリアリアは、とても心地よい気分でベッドにもぐりこんだ。
だが、同じく屋敷の一室。
主のシンバルの書斎では、ミリアリアとは対照的な重苦しい空気が立ち込めていた。
その原因はわざわざ夜中に呼び出された侍女のメアリーと騎士団長のレミントンである。
そして一番のプレッシャーは、手を固く組み二人を椅子に座って待ち受けていた、シンバルその人だった。
「……お前達少し聞きたいことがある」
ビクっと呼び出された二人は体を強張らせた。
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