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悪役姫はエンカウントする。

「ということがあったんだけど、あれは何だったのかしらメアリー?」


 かくかくしかじか夕食の時間に雑談のつもりで話すと、カランとメアリーはお盆を落とした。


「そろそろそのお盆、円の形をとどめていられないんじゃないかしら?」


「何をやってるんですかミリアリア様……そ、それはもしかして……公爵家のご子息なのでは?」


「……なんですって? なんでそんなのがいるの?」


「そ、そんなのなんて言ってはいけません! なんでも公爵様がお仕事に連れていらっしゃったと聞いていましたので」


「……わたくし。知らないのだけれど?」


「ミリアリア様には久しぶりのお休みでしたのでお知らせしませんでした。何分突然の話でしたので」


 公爵家の令息とはいえ、子供が来たことをわざわざ子供に伝える必要はないか。


 おそらくは自分とそう変わらないか年下の相手と顔を合わせる機会は王城では珍しい。


 もっと言えばあそこまでかわいらしい子は……まぁこの世界ではそう珍しくもないだろうけど得した気分なのは間違いない。


 ミリアリアはなるほどなー公爵かーとぼんやり考え、浮かんだ疑問を口にする。


「名前はわかるの?」


「はい。エドワード様と聞いています」


「んぐ!?」


 だがその名を聞いたミリアリアは、口に突っ込んだでっかいステーキで、思わず喉を詰まらせた。


「お嬢様!?」


 大慌てで出された水を飲み下す。


 その名前は聞き捨てならない。


 公爵家のエドワードとは、「光姫のコンチェルト」に置いて、ヒロインと共に魔王ミリアリアを打ち滅ぼす攻略キャラの名だった。


 中でも金髪碧眼の、ザ・王子様はメインルートだと言っても差し障りない、物語の中心人物である。


 そりゃあ美形なはずだぜ。ははは。


 ミリアリアは何とか肉の塊を飲み下してフゥとため息をついた。


「だ、大丈夫ですわ。ちょっと肉を大きく切りすぎただけです」


「お、お気を付けください。心臓に悪いです」


「ステーキごとき飲み下せないほど食道は狭くありませんわ! わたくしを殺したかったらもっと分厚いアメリカンな奴をもっていらしていただけるかしら?」


「……いえ、落ち着いてお召し上がりください」


 それはそうですね。


 お肉の切り方が大きめなのはまぁしょうがない。まぁ登場人物についてはもうミリアリアには関係のない話だ。


 そんなことより最近はお腹がすいてしょうがないのだ。


 この頃日々の運動は激しさを増す一方なのだから。


 迷宮攻略は、ゲーム時代でもやりこみの世界。


 敵の強さもさることながら、時間こそが一番のネックである。


「はぁ……何もかもわたくしは美しさが足りませんわ。精進しませんと」


「そうですね。お転婆はほどほどにですよ」


「やかましいですわよ」


 メアリーの苦言はちょっと違う気がするが、現時点でゲームキャラなんてどうでもいいほど目先の大問題は山済みなのである。




「ヤキトリが食べたいですお父様!」


「ヤキトリ? なんなのだそれは?」


 この日からエドワード様が、好物にヤキトリなる謎の食べ物を上げて、度々公爵を困らせることになるのだが、まぁそれはミリアリアには関係のないことだった。


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[一言] 砂肝の味を覚えてしまうと、呑み助おやじ一直線
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