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悪役姫は壁を打ち破る。

「……! あんのクソ商人! マジで期限切れ掴ませましたわ!」


 そのミスがこの結果である。


 肩を怒らせるワイトエンペラーは頭と口から蒸気のようなものを出しながら、心なしかめちゃくちゃ怒っていた。


「シュウウウウ……」


「な、なんでですの? わたくし数十回回復薬をぶっかけただけですのに……!」


 言葉にすると、そりゃ怒るわと納得のミリアリアだった。


「……だけど残念ながら。簡単に殺されてあげるわけにはいきませんわね!」


 こうなってしまったからには仕方がない、ミリアリアとて覚悟をしていない訳ではなかった。


 いや、ここに至るまで戦闘という戦闘を避け続けたのはミリアリアの甘えだったのかもしれない。


 闇色の衣の奥からワイトエンペラーの呪いじみたプレッシャーがあふれ出た。


 その圧力は決して侮れるようなものではないが、しかしミリアリアは笑顔に戦意をみなぎらせる。


「さて予定外ですが―――ここで見せてしまいましょうか!」


 マジカルバッグから飛び出したのは鉄球だ。


 ミリアリアは相手を見据えて、穴の開いた鉄球に浮遊をかけて構える。


 ふわりと鉄球は空中で固定され、狙いを定めた先はワイトエンペラーの頭だ。


 ワイトエンペラーとていつまでも待っていてはくれない。


 自らの周囲の財宝の中から大きな剣を一本引き抜いて、ミリアリアに向かって飛び掛かって来た。


 その跳躍は恐ろしく速い。


 だが真っ正面から迫る的は、当ててくれと言っているようなものだ。


「テレポート。連続発動―――ぶっ飛びあそばせ!」


 宣言と同時に鉄球の穴から閃光が瞬いた。


 実験の結果、ミリアリアのテレポートは転送先の同じ座標にすでに物体が存在していた場合、元ある物質を高速で弾き飛ばす。


 上手くいけば激しい光が生じ、威力は銃弾に匹敵する。


 そして転送した物質は、きちんとその座標に残るのだ。


 つまり連続でテレポートを繰り返すことで連射が可能となる。


「!!!」


 視認すら出来ない速度で弾き出された鉛の雨が、ワイトエンペラーの体を容赦なく吹き飛ばす。


 ミリアリアは焦りのままに容赦なく銃弾を浴びせ続けた。


 何度かワイトエンペラーは避けようと部屋を跳ねまわるが、一瞬たりとも狙いは外さない。


「ガ……カカカ」


 数秒後、強靭なはずの闇の衣も一瞬でぼろくずとなって粉砕され、ワイトエンペラーは崩れ落ちていた。


 勝利である。


 緊張していたのか、消えてゆくワイトエンペラーを見た瞬間、ミリアリアの体からどっと汗が噴き出した。


 そして響き渡ったのはワイトエンペラーの断末魔ではなくミリアリアの高笑いだった。


「……やったー! オーッホッホッホッホ! 大勝利! ですわ!」


 ミリアリアにはボスの撃破で解放された隠し部屋の扉が、黄金色に輝いて見える気がした。


 ああ、思い付きだったが十分使える。


 貧弱な腕力を補って余りある、仕様外のチート戦闘方法は通用した。


 通用してしまった。


 それもレベル差を覆すほど圧倒的な形で。


 ―――レベルが上がる。


 勝利のファンファーレを聞いたような達成感は、ミリアリアの本格始動の合図でもあった。


 ここから先はもたもたする必要は欠片もない。


 いくつもの失敗する要素は噛み合った歯車の前に、もはやないも同然だった。


「さて……でもさすがに疲れましたわね」


 ミリアリアは自室に帰って気絶するように眠った。


 その日の夢は黄金のワイトエンペラーに胴上げされながら、鉛玉をじゃらじゃら振りまく夢だった。


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