悪役姫は再会する。
「……」
「……」
「お、目が覚めたようだ。良かったな、ミリアリア」
気軽に言ってくれるダークに苦々しい視線を作る事さえ出来ないのが恨めしい。
そりゃあもう大暴れした家出娘としては、とてつもなくいたたまれない。
なんと言ったらいい?
助けを求めてメアリーに視線を向けると、彼女は良かったですねとそっと涙を拭っていた。
「ううう。良かったですねミリアリア様……メアリーは……メアリーは……嬉しゅうございますぅ」
違う!そうじゃない!
だが迷うミリアリアに、目を開けたクリスタニアは微笑んでいた。
「ミリアリアか……元気そうだな」
「女王陛下……大丈夫ですか?」
「……ああ、問題ない。情けない姿を見せてしまったな」
ただクリスタニアは、ミリアリアの人生の中で一度もしたことがない弱々しい笑みで、こちらに手を伸ばす。
ミリアリアが戸惑いながらも咄嗟にその手を取っていた。
「いいえ。無事で何よりですわ。えっと……それよりも、城によくないものがうろついているようですわね?」
「ああ……わかっている。ライラの体を操って好き勝手しているようだ。しかし……気になることがある」
「なんです?」
「私が狙われた時、光の精霊が躊躇うのを感じた。油断するな……」
クリスタニアと魔王がぶつかった時、光の精霊神は魔王を傷つけるのをためらったのか。
いや、単純に取りつかれたのがライラだったからためらった可能性もあるが、こればかりはよくわからない。
ただ、魔王はクリスタニアの隙を突く手段はちゃんと持っていたということか。
その結果がこれだと言うのなら、慙愧に耐えないミリアリアだった。
「……はい。まかせてくださいな」
「ならば……お前にこれを託そう」
ただ、そう言ってお母様が差し出したのは一本の古びたカギだった。
そのカギを見たミリアリアはまさかと目を見開いて、大粒の汗を流した。
「地下の扉の封印を解くカギだ。お前ならば……あるいはこの先にも行けるだろう」
「……も、もちろんですわ! おまかせください!」
これは「闇の大墳墓の鍵」! わたくしに渡すんですの!
しかし……もう中に入れるからいらない、と言うかなんなら隅から隅まで知り尽くしているよ! なんて、ミリアリアに言えるわけもなかった。