朝から平凡じゃいられない
【ノーマル】間宮一尋
世の中には2種類の人間がいる。
「金持ち」か、「貧乏」か。その2種類だ。
しかし、この俺。
「間宮 一尋」【まみや かずひろ】は本来存在しない3種類目に
分類される人間だった。
平凡、中間、地味。そんな言葉がふさわしい。
普通のサラリーマンの父と、専業主婦の母。
普通の弟がいて、ペットの犬がいる。
ご近所付き合いも人並みで、俺自身も普通。
普通の人間関係。普通の家庭で育ち。大きなトラブルも無く平穏に過ごせている。
ただ1つ、おかしい事があるとすれば・・・。
学校だろうか。
俺はとある私立高校に通っているのだが、その学校は普通という概念とは
かけ離れた一種の国のような教育機関で、世間でいうセレブや金持ちから
貧乏人までステータスが幅広く存在する。
当然、そこに通っていれば俺もそんな普通の学校生活は送れない訳で・・・。
「お迎えにあがりました。一尋様」
「・・・あ、どうも」
普通の高校生が黒塗りのハイヤーで迎えに来られるか?。
普通の家庭なのに?。有り得ない。
そんな毎朝の光景に慣れもせず、俺は猿臂服を着た紳士然とした運転手に促されて
後部席へと乗車する。黒と茶色で統一された豪華な車内の空気に
物怖じしてしまって、くだらない感想を口にする。
「俺も将来、こんな車乗れるかな・・・」
「乗れますとも。貴方様なら」
運転手は優しい声で俺の言葉を肯定してくれた。
俺の1日は、金持ちの象徴とも言える高級車の出迎えから始まる。