赤とんぼ
Kobito様主催「ほっこり童話集」企画への参加作品です。
夏の終わり、僕は山を下りた。
彼岸花の上で休んでいると、人間の男の子がやって来た。
こっちを向いて、指をくるくる回している。
僕は男の子の指にとまった。
次の瞬間。僕は足を掴まれて、虫かごに入れられてしまった。
***
家に着いて暫くすると、男の子が泣きべそをかいていた。
さっきはあんなに嬉しそうだったのに、どうしたのかな。
僕もちょっと疲れたな。お腹が空いたな。仲間に会いたいな……。
そんなことを考えながら、僕は眠ってしまった。
***
虫かごが揺れている。
心地よい風。
川面のきらめき。
男の子とお父さん、ふたつの影。
虫かごの天井が開く。
見覚えのある、ふっくらとした手が僕を元の世界に戻してくれた。
(ありがとう、またね)
僕の眼に、少しだけ大人になった男の子が映っていた。