第7話:ドラゴンスレイヤー
それからもミーはダンジョンを突き進んだ。魔法陣に乗り、通路を進み、敵を倒す。その繰り返しも30回以上を過ぎた。Lvアップの頻度が速過ぎて気づかなかったが、Lvが上がると、体力と魔力が回復するようだ。
98層への転移魔法陣を前に今一度ステータスプレートを確認した。
リリィ・ド・アルシェ Lv.179(10/17900Exp)
職業 Fランク冒険者
体力 303/303
魔力 50/50
攻撃力 1129(+1024)
防御力 120
魔法攻撃力 133
魔法防御力 144
素早さ 1024(+800)
知力 17
スキル:ネコミミ・隠密2・短剣1・格闘3・迅速果敢
アビリティ:石火(消費魔力5)・貫徹拳(消費魔力7)・破空脚(消費魔力10)
ギフト:青天井
格闘スキルが3段階目に突入し、97層目のそれ一体でAランクの蜥蜴騎士団長を一撃で粉砕できるまでの打撃力を手に入れた。
アビリティ貫徹拳は、拳が命中した瞬間、衝撃波が発生し、対象の内部まで攻撃を与えることができる殴打だ。破空脚は、直接蹴りが当たらなくとも、発生した風の刃が敵を切り裂く蹴り技である。
ここは神が都合よく作ったダンジョンだ。98、99、そして100層。強大な敵が待ち受けているに違いない。
ミーはこれまでに宝箱から、3メートル程の黒い布、羽のように軽いブーツ、黒い革鎧の上下セット、持ち運ぶものの重さを感じないマジックバッグ、全ての傷を癒す霊薬エリクサーを2つ手に入れた。
ちなみに、黒い布はちぎって上下の下着にして、残りをエリクサーが割れないようにグルグル巻きにしてマジックバッグにしまってある。
「ミーはもう弱くない」
魔法陣に足を踏み入れた。
そして、現在98層。うすら白く広大な空間が広がっていた。あまりにも高すぎる天井に、煌々と魔石がまたたき、まるで月の上に立っているようだった。
だが、そんな景色に見とれたのは、ここに転移したその瞬間だけだった。
ミーはいま、龍と向き合っている。現存する最強の龍種である黒龍だ。
「リザードマンがいっぱい出てきた時点で覚悟してたけど、丸腰はきついにゃ……」
──GUWAAAAAAAAAAAAAAN
見上げた巨体から放たれる咆哮。この階層自体が振動する。真っ黒の翼を大きく2度羽ばたかせると、立っていられないほどの暴風が巻き起こった。
「ここまできたら、やるしかない……っにゃ!」
空を覆い尽くすような巨体が、隕石のように迫る。でも、いまのミーなら避けられる。地面が揺れる振動と共に、黒龍の着弾点がクレーターとなる。
着地の隙を狙って攻撃を仕掛ける。アビリティ石火、一歩の踏み込みで黒龍の頭部に迫る。貫徹拳で自分の胴体ほどの犬歯を粉砕する。
衝撃で黒龍が体勢を崩す。その時だった。嫌な予感。
「みゃごっ……!」
空中で身動きが取れない体に、衝撃と骨の砕ける音が響いた。尻尾に吹き飛ばされた。
黒龍の姿が急速に小さくなる。壁に衝突し、ずるずると地面に落ちた。
「……っ!」
一瞬の判断で頭部を守れた。そのおかげで即死は免れた。でも、全身の骨が砕け散って、激痛で声も出せない。
地面を揺らしながら黒龍が迫る。
餌をみる目。
かすかに動く左手の人差し指と右足の親指でマジックバッグを探る。
エリクサーだ。割れないようにと布でグルグル巻きにした自分を呪う。
あごが痛みと恐怖で震えて、カタカタと音を立てる。
黒い口、茶色い牙、焼ける息。
喰われる喰われる喰われる喰われる喰われる喰われる──
──カラン
エリクサーの薬瓶がマジックバッグからこぼれた。黒龍の牙が頭上の壁を削る。
ミーは地面に顔を埋め、エリクサーを瓶ごと噛み締めた。
──スキル疾風果敢は疾風迅雷に変化しました
──アビリティ石火は電光石火に変化しました