第6話:ネコミミ無双
リリィ視点です。
なにいってんだろ。
前を行くルルを見る。
自分の何倍も強いのに、世界の言いなりになったルルが許せなかった?
どっかの神に唆されて、魔王となり家族を捨てた兄さんを許せなかった?
それとも、兄さんを止められなかったミーを許せないのかな。ミーは弱い。ずっと弱い。悔しい。守りたいものがあっても、変えたい世界があっても、Lvがないと何にもできない。
あんなことを言った後なのに、ルルはミーを庇いながらどんどん奥へ、下層へと進んでいく。ミーのレベルはすでに50を超えて、100に迫ろうとしている。
ミーはずるくない。ミーはずるくない。ミーは──
「ねぇ、ルル」
「な、なに」
「ルル、ありがと。ミーは、やっぱり、一人で行くにゃ。もう、これ以上ルルに頼れないよ。ルル、馬鹿なんじゃない。ミーもうすぐLv100だよ。どんなに強いからってお人好しがすぎるよ。ミーはもうちょっとLv上げてから帰るから、先に帰ってて。じゃあね」
「えっ」
「ごめん」
「わ、わかった」
ルルはうつむいて力なく返事した。力のあるやつ、金のあるやつ。ミーは何でも利用してきた。
「ルルはこれからどうするのにゃ?」
冒険者として細々と暮らすって。そんなの絶対無理。また、誰かの人形になるだけ。
「なおさらミーと一緒にパーティする意味ないにゃ。なにかやりたいことでも探すといいにゃ」
わかった、だって。そればっかり。分かってる。魔王を倒すのはミーの役目。ミーの責任。ミーはこれまでもこれからも1人。これでいい。ミーはこの物語の主人公なのだから。
それからミーは走った。Lv99は強かった。
鎧に身を包んだ暗黒蜥蜴騎士が見えただけで5匹。それぞれが燃える短剣や電気を帯びた槍を装備している。
まず1匹目。燃える短剣が振り下ろされる。まるで自分以外の時間が遅くなったように感じる。燃える剣を最小限の体のひねりで避けて、鎧に拳をねじ込む。
「火遊びはミーの方が得意にゃ」
よろめく暗黒蜥蜴騎士の首の裏に回転蹴りを食らわす。するとあっけなく敵が溶けた。
「まだまだにゃ」
溶けた敵の飛沫越しに、雷槍の閃光が顔をかすめる。
「伸びるのは反則にゃ」
奴とは10歩分の距離がある。とりあえず詰めなきゃ。
顔面を狙った突きが来る。全速で走りながらしゃがんでやり過ごす。ブーンという嫌な音がネコミミをかすめて鳥肌が立つ。
次に足を狙った突き。これを飛び込み前転の要領で躱す。
あと3歩。縦の振り下ろしが迫る。思いっきり地面を蹴って奴の足元に滑り込む。後ろで地面が焼ける。ここまで来ればミーの手番だ。
寝そべった状態から蜥蜴の局部を蹴り飛ばす。悶える隙に素早く立ち上がり首に手刀を落とす。
あと2匹。すぐ全方、大振りの斧を頭上に掲げる蜥蜴騎士に駆け寄る。一瞬で景色が後方へ流れた。何が起こった? 考えるのは後。勢いそのままに、あいての胸に正拳を放つ。敵は弾け飛んだ。
最後の1匹。敵の背後に回り込む。蜥蜴はミーを見失う。両手を握りしめ、後頭部を殴打し、最後の敵が倒れた。
深呼吸して額の汗を拭う。激しい鼓動が収まるのを待ちながら、ステータスプレートを確認した。
リリィ・ド・アルシェ Lv.132(5600/13200Exp)
職業 Fランク冒険者
体力 266/281
魔力 34/44
攻撃力 1094(+972)
防御力 103
魔法攻撃力 120
魔法防御力 131
素早さ 972(+800)
知力 17
スキル:ネコミミ・隠密1・短剣1・格闘1・迅速果敢
アビリティ:石火
ギフト:青天井
さっき一瞬で移動できたのが石火なのかな。あと、素早さがそのまま攻撃力にプラスされている。迅速果敢がこれかな。他はLvの割に強くなってないなぁ。