02.グリフォンと猫とジル
「おんなの、こ…?」
俺をここに連れてきた猫は女の子の元へ歩いて行く。そしてそのまま女の子に擦り寄ると、側で丸くなって眠ってしまった。
どうしろって、言うんだ…?
俺をここに連れてきた猫は何故か眠ってしまうし、女の子に驚いて忘れてたけど、グリフォンって、確か、伝説の魔獣…だよな?
こんな田舎に住んでたって、それくらいは知ってる。そんな魔獣が女の子を守るように眠っている。
俺はその場から動けずにいた。が、その時。強い風が吹いて、女の子の綺麗な髪を揺らした。
「っくしゅん!」
あ…!あの子、こんな寒いのに半袖だ…。
女の子は寒いのか、グリフォンに擦り寄る。グリフォンは目が覚めたのか、はたまたずっと起きていたけど目を開けなかっただけなのか、女の子を温めるように羽で包む。そして、俺に視線を送った。
「……もしかして、お前たち、」
何かが、伝わる。俺の中。グリフォンと猫が、この子を頼む、と、言っている気がした。
俺はゆっくりとグリフォンに抱かれている女の子に近付く。
グリフォンは俺に攻撃することもなく、ゆっくりとその羽を退けた。
女の子を抱き上げれば、流れてくる声。
『シャオを、頼むぞ。また、会いにくる』
その瞬間、また強い風が吹く。
そして次に目を開けた時には、グリフォンはいなくなっていてーーーーー俺と猫と少女ーーーーシャオだけが、この森に残されていた。
「シャオ…か」
グリフォンが去っていった空を見上げると、白い雪が降りはじめた。
『ハヤク、行く。シャオ、サムイ』
「っうわああ!!!」
『ナゼ、驚く?』
ゆっくりとその声の主を見れば、青い瞳が俺を見つめる。嘘なんかじゃ、ない?猫の言葉が、聞こえてくる…!
「何故驚くって…!普通動物とか魔獣とかの声は聞こえねーの!!なのに、猫の声、」
『我、猫チガウ。ユキ。シャオ名前つけてくれタ』
そう言って猫ーーーユキは、得意気に笑う。
しかし、驚かない方が無理だ。この国では皆魔力を持って生まれてくる。そして、魔法だって使える。でも、魔法が使えたって、そんなことは無理なんだ。なのに、俺は今、ユキの声が聞こえている。それに確かさっき、グリフォンの声もーーー。
「くしゅん、」
「っあ!それよりも早く行かねーと!」
寒そうに震える少女、シャオにハッとして、俺とユキは森を後にした。