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殺人鬼キング  作者: 柘榴アリス
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謎の男

―殺人鬼キング…。警察ですらも手掛かりが掴めていない今、その正体も動機も不明。でも、分析してみるとキングはよく聞く犯罪者とは違う気がする…。何か目的がある様な…。

メモを整理し、ソフィアは考え込んだ。新聞で報道された犯罪者は多く存在する。キングだけが犯罪者だけではない。今までもたくさんの殺害は起こってるし、多くの犯罪者が存在する。その中でも犯罪者は心の闇があり、何か大きな事をしたい、人に注目されたい、誰かを殺してみたかった、死刑になりたかったから、むしゃくしゃしたから等の理由で殺人を犯す人間が多い。けれど、どの犯罪者も誰でも良かったと言いながらも社会的弱者の立場の人間を狙うケースが多い。高齢者や女子供といった反抗できなさそうな簡単に殺せそうな相手を選んでいる気がするのだ。が、キングは違う。会った被害者の中には女もいたが若い男性もいたし、警察ですらも手にかけている。だからこそ、危険だ。キングは腕が立ち、人を殺すのを厭わない。そして、あれだけ事件を起こしているのだから恐らく人を殺すことにも慣れ、その道のプロと言っても過言ではない。ソフィアは応戦しても勝てる自信はない。ソフィアも次期当主の教育の一環で銃や武器の扱い方も心得ているがそれはあくまでも護身術程度だ。そんな自分が人を殺し慣れている殺人鬼に適うのか…。勝機はない。けれど、やるしかないのだ。何か手掛かりはある筈だ。ふとソフィアは一つ気になる疑問を抱いた。何故、キングは殺人鬼キングと名乗ったのだろう。もしかして、そこを突けば何か分かるかもしれない。その時、ペンを落としてしまった。そのまま、転がるペンを拾おうとすると、ソフィアが拾い上げるより先に、誰かがそのペンを拾い上げた。その人物は、ソフィアにペンを差し出した。

「ありがとうございます。」

お礼を言おうと顔を上げると、

そこには一人の男性が立っていた。金髪に翡翠の瞳をした目を瞠る美貌を持つ男だった。が、切れ長の瞳と纏う雰囲気からどこか冷淡さを感じさせる。男がペンをソフィアに渡した。ソフィアはそれを受け取るが男はペンから手を離そうとしない。訝しむソフィアに男は言った。

「あんたか。キングについて嗅ぎ回っている女というのは。」

「え?」

「これ以上、キングに関わるな。でないと…、命を落とすぞ。」

「な、どうしてそれを…、」

「あんたのことはよく知っている。伯爵の爵位を持つローゼンクォーツ家の次期当主…。先日キングに殺されたアニー・バートンの親友でもある。大方、親友の仇をとるためにキングを探っているんだろう?」

「っ…!?な、何で私のことを…、」

「さあ?何故だろうな。…忠告はしたぞ。ではな。」

そう言って彼はペンをソフィアに渡すと、そのまま立ち去ろうとする。

「ま、待ちなさい!」

男は一度立ち止まり、

「どうしても、キングを倒したければ感情は抑えろ。冷静になって行動することだ。それを克服しなければ…、取り込まれるぞ。」

そのまま立ち去ろうとする男をソフィアは追いかけるが人混みに紛れてすぐに見失ってしまう。

「あれ?ソフィアじゃないか。こんな所でどうしたんだ?」

「ディオス…。」

「最近、会ってなかったな。あれ?ソフィア…、何だか痩せてない?大丈夫?」

偶然会ったディオスは今日は非番だから暇なのだと笑い、そのまま二人はベンチに座った。ソフィアは彼に今までの事を話した。

「そうか。親友が…、それは辛かったね。確か、その子って、もうすぐ結婚する予定だったって言ってた娘だよね?」

ソフィアは頷き、

「私…、キングを捕まえたいの。」

「キングを?危険だよ。ソフィア。そいつは殺人鬼だぞ?巷を騒がせてる連続殺人犯で犯行の手口も狡猾で残虐な奴だって噂だ。警察ですら手掛かり一つ掴めてないんだ。君みたいな女性が手に負える件じゃない。最悪、狙われて殺されるかもしれない。」

止めようとするディオスにそれでも、とソフィアは顔を上げた。

「それでも…、私はアニーの仇をとりたいの。キングを捕まえて法廷の下で彼を裁いてもらう。これ以上の犠牲者を出さないためにも。」

ソフィアの強い視線にディオスは

「君は強情だな。仕方ない。じゃあ、僕も協力するよ。」

「え、でも…、ディオス。無関係のあなたまで巻き込む訳には…、」

「大丈夫。これでも、一流のナイフ使いなんだから。多少の腕は立つよ。それに…、僕は君を守りたいんだ。」

「ディオス…。ありがとう。」

「ソフィア。良かったらこの後、時間ある?」

「ん?ええ。今日は特に何も予定を入れてないから…。」

「良かった。それじゃあ、少し僕に付き合ってくれないかな?」

ディオスに連れて行かれた先は博物館だった。

「懐かしい…。昔、お父様やお母様と一緒によく来たの。」

博物館に入り、展示品を見ながらソフィアはそう口にした。

「良かった。気に入ったかな?」

「ええ。とても。あ…、」

ソフィアはある一つの展示品に目を留める。大きなエメラルドと象牙の細工でできた短剣…。

「これ…。」

「どうしたの?」

「あ、ううん。何でもないの。」

別の展示品を見ようとするソフィアは不意に博物館に来ている客の中に男の子と女の子が楽しそうに話している姿を見かけた。

「わあ…。綺麗…。」

「俺、知ってる。これ、国宝なんだって。」

「国宝って何?」

「国の象徴みたいなものだよ。お金じゃ買えない高価な物なんだ。」

「へえー。」

物知りな男の子に感心する女の子…。そういえば、ジャックと初めて会ったのも博物館だった。


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