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殺人鬼キング  作者: 柘榴アリス
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聞き込み調査

「ソフィア。本当にやるのか?」

「ええ。もう決めたことなの。」

「そっか…。ソフィアは言いだしたら聞かないもんな。…昔からそうだった。」

「ごめんなさい。でも、こればかりは変えられないの。」

「ソフィアが決めたのなら俺は着いて行くよ。でも、驚いたよ。ソフィアが家の力を使うって言いだしたのは。」

「え?」

「ソフィアって、昔からお嬢様だからとか、金持ちだからって色眼鏡で見られるのが凄い嫌がってたからさ。だから、意外だなって…。」

「そうね…。本当はこんな方法よくないのかもしれない。次期当主が私情を挟むなんてあってはならないってお父様とお母様には叱られるでしょうね…。でも…、」

「分かってるよ。ソフィア。例えそうだったとしても君はアニーに対する無念を晴らしたい気持ちの方が強いんだろう?大丈夫。何があっても僕は君だけの味方だからさ。」

「フレッド…。ありがとう。」

幼馴染みである彼の言葉にソフィアは勇気づけられた。

ソフィアが向かったのは、キングと接触したことのある証人達だった。彼らはキングによって、被害を受けた人達だった。一人目はある屋敷に奉公していた従僕の一人で屋敷の主人はキングに殺害された。彼も全身を数十か所も刺され、瀕死の重傷を負い、奇跡的に一命を取り留めた男性は最近になって漸く会話ができるようになったのである。ソフィアは男性に会い、話を聞かせてもらった。

「あの手紙がご主人様の元に届いたんだ。白いカードに金の文字で王冠のマークが書かれた例のカードだよ。」

世間でもその名を恐れられている殺人鬼キング…。彼は殺害する前に殺害する人物にカードを送り付け、殺人を仄めかす予告カードを送り付けている様だった。それだけではなく、新聞社や警察にも自らの署名入りの犯行予告を送り付けたり、警察を嘲笑するかのような挑戦的で大胆不敵な行動を起こしていた。自らをキングと名乗った殺人鬼はその象徴として王冠をトレードマークにしている様だった。

「キング…、俺もはっきりとは覚えていないんだが顔は見たよ。多分、あいつがキングだ。」

「どんな人だったのですか?」

「帽子を被って杖を手にしていた…。白いパルソナをつけていて…、仕込み杖で周りに居た人間をあっという間に斬りつけたんだ…。風のような速さだった…。とんでもなく強かったよ…。ご主人様の家宝を奪った後にご主人様を殺して…、俺の足も斬られてて、頭に血も流していたから身動き出来なかった。けど、キングが仮面を外したのを見たんだ。したら、その素顔は…、」

ソフィアは息を呑んで言葉を待った。

次に会った男性は、キングによって腹部を刺されたが治療により、最近漸く歩行ができるようになったという者だった。男は仕事から帰宅途中に道を聞かれ、近づいた所を刺されたとのことだった。鋭利な刃物で腹を刺され、胃まで貫通したが背中の静脈までは達していなかったおかげで一命を取り留めた。静脈まで刃が達していたら命はなかったとのことだ。その代わり、手術には1リットル以上の血液を要したようで危ない状態だったと聞く。男の元にも予告状が届いていたようで勤務先に送りつけられていたが悪戯かと思って気にも留めてなかったと男は話した。

「そいつは、まだ子供だった。俺の息子と同じくらいの十二、三歳位の年齢の子供だったんだ。」

「子供?キングが…?」

ソフィアは次の男性の元へと行った。予告状が届けられ、自宅でキングに襲われ、キングに両目を潰されてしまった男性だった。

「キングは、女だ!俺はこの目で見たんだよ!金髪碧眼のえらい美女で…、気がついたら視界が真っ暗で…、痛みで気が狂いそうだった。」

―キングが女性?

次の被害者はキングにより顔を焼かれ、顔の半分が痛々しい火傷の跡が残る女性だった。

「キングは黒人よ!見間違いじゃない!私、見たもの!」

またある人は…、

「とっても素敵な男性だったのよ?彫りが深くて精悍な顔つきで…、まさかあいつがキングだったなんて…!」

「キングは黒髪が特徴の色っぽい女だよ。」

「一瞬、女かと見紛う程の甘い顔立ちした美青年だったなあ。」

事件に巻き込まれた被害者たちの生存者から話を聞くが皆が皆、異なった証言をしていた。けれど、どの被害者にも同じ特徴がある。それは必ず犯行前に予告状を送りつけていることだった。被害者の多くは警察に相談している。当初、キングの残虐性や猟奇的な犯行が知名度になっていなかったため、始めはあまり相手にしなかった警察も被害者の数が増え、凄惨な殺害現場に世間も警察も震撼した。それから、キングの名が有名になり、その存在が危険視されるようになったのだ。警察は被害者の警護に当たったり、キングを逮捕するために優秀な警察官を集結したりと対策をとったがキングはその手も掻い潜り、果敢にもキングに立ち向かった警察官の何人かもその凶刃に倒れ、犠牲者となったと聞く。

―キングは…、一体何者なの?

「何なんだ…。あれ…。どいつもこいつも、正反対の事を言って…、」

フレッドが唸るように言い、ソフィアも難しい顔をして考え込んだ。

「キングは…、事件を起こす度に違う人の姿を形作っているみたい。これでは、何を目星にすればいいのかさっぱりだわ。」

少しでも手がかりをと思い立ち、情報を集めるが益々、混乱してしまった。謎は深めるばかりである。思った以上にキングの正体を突き止めるのは困難になりそうだった。

フレッドが別件で聞き込みをしている間にソフィアはベンチに座ったまま手帳とペンを手に考え込んだ。


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