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殺人鬼キング  作者: 柘榴アリス
12/22

犠牲者

「ここが…、そうなの?」

「ああ。」

ディオスに連れられ、ソフィアは住宅街に入った。

「お邪魔しますよ。レヴィンさん。」

「ディオスか。」

一軒の家に入ると、例の新聞記者が二人を出迎えた。資料の山に囲まれ、記者は眼鏡を押し上げた。

「そっちが話していたお嬢さんか?」

「ああ。親友をキングに殺されたんだ。」

「初めまして。ソフィア・ローゼンクォーツです。」

ソフィアは挨拶を返した。記者の男は二人を椅子に座らせた。

「殺人鬼キングについて教えろって言われてもなあ…。俺もあの事件以来、キングについて調べてるけどほとんど有力な情報を得られてないんだよ。」

「何でもいいのです。!キングについて、何か知ってることがあれば教えて下さい。」

ソフィアの言葉に記者はそれじゃあ…、と今まで調べた資料を元に説明してくれた。まず、第一の犠牲者は売春婦でベッドで絞殺され、殺害された姿を住人に発見された。豊かな栗色の髪が特徴的な色っぽい女性だったらしい。発見当時、女は全裸で情事の跡が残っていた点から痴情のもつれだろうと判断された。色を売る女の世界ではよくある話だ。この時はキングの名は知られておらず、犯人がキングだとは警察も予想していなかった。結局、犯人も疑わしい人間は複数いたが証拠もなかったため、そのまま未解決のまま捜査は打ち切りになったらしい。この事件が起こった時は予告状もなかったのだが、後にキングが起こした殺人事件で絞殺された女性の指紋と他の事件で殺された人物からの指紋が一致したのだ。今までの事件の時系列から見て、この事件がキングが初めて起こした殺人事件だった。次に殺されたのも売春婦だった。帰宅途中に路地裏で頸動脈を切断され、絶命していた。妊婦だった彼女は腹部も切り裂かれており、胎児は残っていなかった。その猟奇的な殺人事件に世間は震撼したがこの時もキングとの関連性は繋がらなかった。三つ目の事件で被害に遭ったのは若い男だった。男は中性的な容姿で異性から大層人気があり、一般企業に勤めている会社員だった。廃墟のビルで遺体として見つかった彼は鈍器のようなもので頭部を殴られ、撲殺されていた。男の周りにはその他にも複数の男達が無残な形で殺されていた。何故、そこに被害者がいたのかも犯人と顔見知りで呼び出されたか、拉致のような形で連れ出されたか等の憶測がされたが真相は分からないままった。女性関係が派手だった点から、異性のトラブルかと思われたが犯人は浮かび上がらなかった。四番目の事件では川で溺死した壮年の男が発見された。が、男はその直前に同僚とバーで酒を飲んでおり、かなり泥酔していた。店の主人や一緒に酒を飲んで家の近くまで送った同僚から証言が得られ、泥酔により足元がふらついて川に落ち、溺死したのだと思われた。後に川の近くで王冠をトレードマークにした印が木に刻まれたいたのだが警察はそれを見落としていた。キングが挑戦状を突き付けるようになったのはそれからだった。五番目に犠牲になったのは女学生だった。華やかな容姿の彼女は学校でも人気者で近所や友人からも親思いの優しい娘だと評判だった。バイト帰りの彼女は人気の少ない林道で全身を滅多刺しにされて刺殺されていた。即死にならないよう急所を外し、痛めつけて嬲り殺すという残忍な殺害方法だった。彼女の遺体のそばには白いカードで金の文字で書かれた王冠がトレードマークの手紙が落ちていた。手紙の差出人にはキングと記されていた。ここで漸く殺人鬼キングの名が知られるようになり、他の事件の犯人がキングであると判明したのだった。本格的にキングを逮捕しようと警察も尽力するがその後も事件は次々と起こった。その後も被害者は男だったり、女だったり、時には一度に数人の人間を殺害していた。死因も異なるがある者は絞殺され、ある者は刺殺された。それ以外でも身体の臓器を持ち去るケースもあった。犠牲者はその数が数十人以上にも増えた。そして、ここ最近で新しい犠牲者となったのがソフィアの親友、アニーだった。アニーは事件当時、一人で深夜に外を出歩いていたらしい。何故、婚約前の彼女がそんな真似をしたのか分からない。所持品も碌に持っていなかった。出かけた際に婚約指輪だけを指に嵌めた状態で外に行き、遺体が発見されたのは墓場の近くだった。アニーには親戚も両親も健在だ。友人、知人でも最近で亡くなった人間はいない。何故、墓場に行ったのか理解できなかった。

―アニー…。一体、あなたはどうして…。

「ああ。そういえば…、アニー嬢の婚約指輪は発見された当時、紛失していたらしい。もしかすると、犯人が奪っていたのかもしれない。」

記者の言葉にソフィアは顔を上げる。

「何故、そんな事を…、金銭目的なのでしょうか?」

「さあ。けど、殺人鬼キングは強盗目当てというよりも快楽殺人の傾向がある。」

「快楽殺人?」

「その名の通り、殺人行為を楽しむことだ。快楽を得る為に殺人や遺体損傷を行う異常な行為だ。」

「殺人を…、楽しむ…。」

理解できない。人の命を奪う行為に何故、快楽を感じるのか。そんな身勝手なもののために親友は殺されたのか。怒りでソフィアは震える。ディオスが心配そうにそっとソフィアの膝の上に置かれた手に触れた。目が合うと、ソフィアを安心させるように微笑んだ。荒れていた感情が静まっていく。ソフィアは冷静さを取り戻した。

「一つ分からないことがあるのですが…、何故、キングは自らをキングと名乗っているのでしょうか?」

「さあ。何せ、正体不明の殺人鬼だからな。動機も行動パターンも読めない以上、理解できないことばかりだ。」

「そう…、ですよね。」

「そういえば…、」

結局、キングについては謎だらけのままでソフィアは気落ちしているとレヴィンは思い出したように

「五番目に殺された女子学生…、彼女は被害者の中でも一番惨たらしい方法で殺されたが…、確かブラウン系の髪をしていたな。その髪もキングが切ったのか発見された当時、切り落とされた髪の房があちこちに散らばっていたらしい。もしかしたら、キングは茶髪の女に恨みでもあるのかもしれない。」

「え…、」

記者とディオスの視線がソフィアに注がれる。ソフィアの髪が栗色だったからだ。

「怖がらせてすまない。けど、よく考えればアニー嬢は赤毛だし、彼女も遺体損傷が激しかったから髪の色は関係ないのかもしれないな。」

慌てて言い繕う記者の言葉にソフィアは何か胸に引っかかった。

「悪かったね。ソフィア。結局、有力な手掛かりは得られなくて…、」

記者と別れたディオスはソフィアを送る道中、申し訳なさそうに言った。

「そんな事ないわ。あなたのおかげでキングのことをたくさん知れた。ありがとう。」

「それなら、いいんだけど…、」

ディオスはまたいつでも連絡してくれと言い、ソフィアを迎えの車まで送ってくれた。


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