プロローグ
「ソフィア。こっち来いよ。」
「ジャック!なあに?」
「ん。」
花畑で戯れている少女に手招きし、少年は照れくさそうに一輪の花を差し出した。
「わあ…。可愛い!これ、あたしに?」
頷く少年に少女は微笑んだ。ジャックと呼ばれた少年は「つけてやるよ。」と言い、少女の髪に花を挿した。
「ありがとう!ジャックにもちゃんとあたしが作った花冠あげるから待っててね。」
「べ、別にいい。それに、俺は男だぞ。」
「どうして?ジャックはお花が嫌いなの?」
「そういう訳じゃないけどさ・・・、」
「ソ、ソフィア…、や、やっと見つけた…。」
丁度その時、二人の前にもう一人の少年が現れた。息も切れ切れな少年の様子に少女は驚いた。
「フレッド!一体今までどこに行ってたの?いつの間にかいなくなってたから心配してたんだよ?」
フレッドの様子に気を取られた少女は、ジャックがひそかに舌打ちをした事に気付かなかった。そして、ジャックは誰にも気づかれないほどの小さな声で呟いた。
「…もう追いつきやがった。」
「いつの間にか…、ま、迷ってて…、」
「大丈夫?」
フレッドに駆け寄り、ソフィアは心配そうに訊ねた。
「あ、あれ?どうしたの?ソフィア、その花…。」
「あ、これ?ジャックがくれたの。」
髪に挿さっている花をそっと押さえて嬉しそうに微笑むソフィア。
「ソフィア、可愛い…。」
フレッドの言葉にソフィアは嬉しそうに微笑んだ。そして、フレッドの手を取り、ソフィアは言った。
「フレッド!あなたも一緒に遊ぼう?」
そうして三人は花畑で日が暮れるまで遊んだ。それは、誰が見ても微笑ましい光景だった。