相棒
(何その流暢な英語。早くてワケわかんねぇよ。)
(この中国人は中学生の女の子か?…スペイン語ならまだなんとかなるが、中国語は分からんな。
しかし、学生の子なら…簡単な英語は通じるか…?)
二人は視線がぶつからない様に見つめ合い、お互いを探る。
「Unnn… I am...」
ここは男、しかも年上の自分から行くべきだろう。マイクが先に沈黙を破る。
「アイム、マイク。アイムアメリカン」
マイクはハルカに警戒を持たれない様に、胡散臭くならない程度のスマイルと優しいジェスチャーを加え、言葉(英語)が通じる様にゆっくりと語り掛ける。
「あ、うん…えーっと、マイネームイズハルカ、ナイストゥーミートゥー。アイアムジャパニーズ」
英語はある程度分るはずだが、喋る機会が無いので咄嗟に英語が出てこない。直ぐ出てきたのは中学1年の頃の挨拶英語。
「OK, Haruka。ナイストゥーミートゥートゥー」
マイクは満遍の笑みで返答する。そして立ち上がり、ハルカに手を差し出す。
ハルカはマイクの「Hey」という掛け声に応答し、手を握り返す。マイクは軽々と彼女の手を引っ張り、身体を起こす。
お互い手を握り合いながら見つめ合い、日本の女子高生とアメリカの大学生の『はじめまして』の握手が完了した。
そして理解した。ハルカもマイクと同じく密室に閉じ込められた同じ被害者だと。
「てか、デカっ…ウケる」
身長190センチを越えるマイク。日本にいてまずこのサイズの人間に合うことは無い。見上げるだけで首がつりそうだ。
密室に女子高生と巨大な黒人男性。ある意味逃げられない状況。普通の女子高生なら恐怖や警戒心を抱くだろう。だが、ハルカにそう言った感情は無かった。
「Oh, by the way... Haruka look!(あ、そうだ。ハルカ、見てくれ)」
大事なことを思い出した。これはハルカにも伝えておこう。マイクが握手を解き、扉の方を指差す。
「え?嘘、扉じゃん!出口じゃん!ナイス、マイク!ナイスマイク!」
ハルカは両手の拳を握り、飛び上がり、喜びの感情を表現する。
ハルカの閉じ込められていた部屋から入って、正面にその扉があるのだが、マイクの存在が余りにも衝撃的過ぎて気が付かなかった。
「って、おーい!鍵掛かってんじゃん」
電子錠が目に入り、落胆する。「お嬢さん、こちらの部屋も謎解きですよ」と嘲笑られる。
「へイ、ハルカ」
「ん?何、マイク」
マイクはハルカに謎の描かれた紙を見せた。
三角形、四角形、また三角形、五角形が描かれた図の下にそれぞれ『4』『6』『8』『12』の数字。
最後にもう一度三角形に『?』の文字。どうやらこの数字を解くらしい。
「なるほど、謎解きね。私に任せて」
ハルカは胸に手を置き、自信満々に答える。
だがマイクはそんなハルカを無視して、扉に向かった。
「えっ、ちょっと、マイク…」
マイクはそのまま電子錠に入力しようとする。
ー『正二十面体』だろ。簡単だ。
『20』と打ち、エンターキーを押す。
緑の○が表示され、ロックが解除される。
「なんだマイク…もう解いてたんだ」
ハルカは喜色を浮かべ、マイクを見守る。
ドアノブが回った。
マイクは力を込め、ドアを引く。
重い扉の先から、青白い光が漏れるーー
正三角形が4つ集まった立体を正四面体、正方形(正四角形)が6つ集まった立体を立方体(サイコロの様な形)、この法則で正八面体、正十二面体、で最後が正二十面体が答えになります。また、この正二十面体が立体の中で最多面になり、これ以上のものは存在しません。
正六面体以上の立体が作れないのです。これは正六面体の「蜂の巣」を立体にすることが不可能と想像していただければ分ると思います。




