身内に敵
宿の主人は、酒を飲みながら、ハムサンドを食べてしまうと、机に足をのせて居眠りを始めた。
引き出しから出て来た奴は、次に、祖父の屋敷に行くと言ったのだ。
何故?
さっきと同じように、携帯の地図で屋敷に到着する。
通気孔から侵入して、屋敷内の探索開始だ。
最上階の何もない壁の前に、屈強な男がイスに座って待機している。ここは廊下だと思うが、控え室もないのかよ?
隅から様子を伺う。
「従者って大変だな」
思っていたことが、ポロリと口をついて出てしまった。
すると……奴は、もの凄い形相で俺を睨んだのだ!
「身内に敵がいる。親ビン、頼むからもう喋らないでくれ」
どういう意味なんだ? イケメンの考える事は、俺にはわからんな。
「建物の造りからすると、あの壁の向こうに何かあるようです」
こいつ、何言ってるんだ? 壁の向こうは外だろう。
ところが、暫く様子を伺っていると、屈強な男に動きがあった。
しかめ面の中年男が、屈強な男に話しかけて、男が座っていたイスの後ろ側の壁に、中年男が持っていた鍵を差し込んで開けたのだ!
今まで、壁だと思っていたところに扉が現れて、唖然としているなか……奴がダッシュして扉の中に消えていった。
えー! まさかの置き去りですか? いや、この場合、俺が乗り遅れたんだけどな。
困ったなぁ……こんな時どうするんだろう……あの扉の中の様子はわからないし……ん?
携帯電話が点滅している。隅の暗がりで見ると、奴から動画が送られてきていた。
ポチッと再生する。
ドーン、キュキューン。
静かな屋敷中に響く程の大音量が溢れ出た!
ビックリして、10㎝は飛び上がったと思う。
「何だ!」
「今の音は?」
「曲者か?」
廊下に人が集まり、こっちに向かって来た!
俺は、テケテケテンテン走って逃げたのだが、見えてもいないのに、確実に追ってくるのだ。
さすがプロだ。
感心していたが、俺の携帯がうるさいだけだった。
ギャフン。
それで、急いで動画停止させ、庭まで出ていたので草むらに潜伏した。
が、ウォンウォンと危険な声がしたので、木にヨジヨジと登り、そこから、ムササビの様にふよよ~と飛び、なんとか隣の家の屋根に飛び移ったのだ。
そうか、身内に敵がいるって、奴のことだったのか!
うがっ!
兎に角、一旦その場を離れ、落ち着いたところで長老に連絡を入れる俺。
地図を送るので、その場所に戻れと指示される。
仕方ないから、地図の場所までテケテケ行くと、なんと! あ奴が先に居るではないか!
何でじゃ?
「親ビン無事でしたか。それにしても良かったですよ。敵を引き連れての華麗な逃げっぷり。ここ数日は、あの動画で楽しめそうです。親ビンの活躍で、ご令嬢を無事救出して、自治体に保護してもらうことが出来ました。依頼主にも報告済みです。さあ、帰りましょう」
えー! 俺が、大変な思いして逃げとる間に解決ですかあ!
正直、ついていけない。
何で解決したのかも判らん。
が、俺には、一つだけ解っていることがある。
「身内の敵は、お前だな!」
目を丸くしたイケメン。
どうだ。俺だって、鋭いところがあるんだぞ!
奴は、暫くの間、口を押さえて震えていた。
感動したか?
いや。
ヒーヒー言いながら、腹を押さえて転がっとる。
フム。
なんか、思ってたのと違う反応だ。
それを眺めていた俺は、うん。次は絶対に断ろう! そう思った。




