誰の為
これがスタンピード現象なのか?
俺の前を魔物の大群が走っている。
俺もパニクってその後ろを翔んでいた。
地底の穴みたいなところに、ギュウギュウ詰めかけている。
俺も入ろうと近寄れば、「プギャアー~」と、おぞましい叫びをあげる魔物達。
ハッ! 俺は、コイツらから逃げていた筈なのに、いつの間に。
振り返れば、ハエ叩きの様な物を手にしたあ奴がいた。
「おみゃ、おみゃーは、なじょなじょしておりを、なげさらすんじゃボケ!」
「すみません親ビン。手が、親ビンの脂で滑ってしまいました」
どんな時も爽やか笑顔だな。
「すみません、触りたくないので、一度死んで下さい」
妖精は、勇者の一撃で0ポイントとなった。
ベショチャ。
世にも奇妙な音をさせて、俺は魔素になった。
「フハハハハ、流石は勇者。世にもおぞましい、汚物兵器を使うとは、予想も出来ない大ダメージを喰らったわ。褒めてつかわす。だが、お前達の運もここまでだ」
「いや、それ以上喋らないでくれ。私の汚点になるから」
奴は、華麗な身のこなしで、背後から、サブボスキャラの首をかき、続いて空間にサッサと封印した。
奴等の口も封じた方がいいな。
斯くして、奴による大殺戮が行われ、魔族は壊滅状態に陥り、残すは、ボスの鬼ゴウゴンだけとなったのだ。
何度目かの目覚め。
俺は、奴に闘いを挑んだ。
ペシペシと頬を殴るが、ハシュっと、手の平の中に捕らわれてしまった。
「落ち着いて下さいよ親ビン、朗報です」
スポンと奴の親指の隙間から顔を出せば、奴はこう言った。
「まさか、あんな汚ったね、もとい、垂れ流し、ううん。の妖精になると思わなかったので、皆に知られたくないので、私が全滅させましたから、親ビンは安心して下さい」
えっ? 魔族の大殺戮は、俺の為?
いやいや、ここに来てやっと、勇者の自覚に目覚めたのだな。
奴にしては、良いことだな。
「良くやったな。俺にした事は忘れてやろう。うん。俺は寛大だからな」
「はは、今回ばかりは、自分で自分の首を絞めましたよ」
「うんうん。大いに反省したまえ」
スッと身体をずらした奴の背後から、射殺すような視線が二つ。
「どの面下げて息してるのか、死ねや」
「全くだ。汚点だ。勇者の呪いのアイテムだとは、気づくのが遅れた。死ねやこら」
「賢者様も剣士様も、ハッキリ死ねやって言ってますけどお……」
「ハハハハ」
あれ?
和解なし?




