幸運の指輪
今回のお仕事は探索。
先日、見たばかりの黒装束に着替え、武器選びにきた。
どれも扱ったことのない物ばかりで、困った俺は、お願いしてナイフと閃光弾にしてもらった。
奴は、さっさと手裏剣、クナイ、毒針、ヌンチャク、ピアノ線、ナイフと、次々と服に仕込んでいく。
「準備できたのなら、行け」
長老に言われ、神子様がセットしてくれた、ワープドームに入った。
すぐに頭が重くなり、悪酔いしたような気分に襲われる。
そして、無情にも、体にピッタリした服と、関節にプロテクターをした、拳闘遣いの女性プレイヤーの前に出された。
依頼人は、ゲーム内のイベント攻略で手に入れたアイテム、幸運の指輪を使うことによって依頼してきたのだ。
幸運の指輪とは、プレイヤーのどんな願いも叶うという代物である。
よって、神々の契約に基づき、神子様を通じて我々が願いを叶えるのである。
フラフラになりながら、方膝をつき頭を下げた俺。
「お呼びれすかご主人たま」
噛んだ……やっぱりな。
隣の奴は、激しく震えている。
プレイヤーの女性は、気にすることもなく、矢継ぎ早に願いを口にした。
「お願いよ。大切な友人が行方不明なの! 捜して、1秒でも早くね!」
「はっ」
駆け出そうとする、俺の腕を押さえた奴は……。
「詳細をお聞かせ下さい」
そう言って、詳しい内容を、対象者から聞き出していた。
なんでも、クエストの護衛で知り合い、仲良くなったご令嬢が、祖父の遺産相続のために、コルタゴの町からこの街に来ていたらしい。
3日前に、このサンテルーア教会で会う約束をしていたそうだ。
ところが、その日は現れなかった。
不審に思い、宿泊している赤ダル亭の宿まで会いに行ったが、宿に戻って来た形跡がない。
次の日も、宿に何の連絡もないので、宿の主人の証言を頼りに捜索した。が、手懸かりは全くなかったと。
今日で3日目になるが、自治体やギルドにも情報があがってこない現状だそう。
祖父の屋敷にも、足を踏み入れていないそうだ。
八方塞がりで、友人の命には代えられないので、この指輪を使うことにしたようだ。
ご令嬢の名前は、パミュエル・ノースガルド。
褐色の瞳に、明るい茶色の肩までの髪。黄色のリボンを頭に着けて、黄緑色のドレスに灰色の靴を履いていたそうだ。
うん、可愛いらしい女性に違いない。
「失礼ですがこの情報は、赤ダル亭の宿の主人から聞いた情報ですか?」
「ええ。おかしなことに、彼女本人に会ったという人は、宿の主人以外見つからなかったの。でも、ちゃんと、彼女が使った形跡のある荷物は置いてあるのよ。どうやってこの街まで来たのか。乗り合い馬車だと思うのだけど、情報が全くないの。これで見つけてもらえるかな? 彼女が無事なら、私は、それでいいのよ。だから、早く捜してくれる?」
手懸かり無しで、どうやって捜しだすんだよ?
俺が、大変困っていると……。
「親ビン、まずは、宿の主人の、身辺調査から始めましょう」
「どうして、宿の主人を調べるんだよ?」
「唯一の証言者だからです。まず、真偽を確かめにいきましょう。それに、宿泊客の靴の色まで、普通覚えているものでしょうか?」
「それは、スキルの高いプロだからだろう」
「急ぎますよ」
なんだよ。俺の意見はスルーなのか?
まあ、いい。成功すればいいんだからな。
携帯には、直ぐに地図が届いた。
赤ダル亭は、宿だけの経営のようで、この時間お客は、外食に出払っているようだ。
奴は、カウンターにあった卓上ベルを鳴らした。
なんで、そんな事するのか?
「お待たせしました……ん? 誰もいねぇじゃねぇか! イタズラか?」
宿の主人は、辺りを見回し外まで確認に出たようだ。
その隙に、少し開いた扉の奥に潜り込む。
そこには、酒と食べかけのハムサンドが置かれた、机とイスがあるだけの部屋だった。
奴は、ヌンチャクを使って、器用に引き出しを開け中に潜った。
そこに、宿の主人が戻って、また酒を飲み始めている。
「クソ、誰なんだ、イタズラしやがって! まさか、あのしつこい、拳闘遣いの女じゃねえだろうな」
悪態をつきながら、また酒を飲む。
「どうせ、わかりゃあしないさ。誰にもな」
不穏な言葉を吐く宿の主人。
やっぱり怪しいのか?




