帰ってきたコビトのお仕事
帰ってきました。コビトのお仕事。
俺達は、長老に頼まれて、とある仕事に向かったのだ。
しかし、ちょっとしたアクシデントから、ワープ中に衝撃を受けて、なんと、異世界召還されてしまったのだあ!
だがしかし、例によって例のごとく、奴は勇者となって、人間と同じサイズになり、俺はと言うと……。
【一か八か】と言う変な卵に住む妖精アイテムと化していたのだ。
なんでじゃ? 解せん。
立派な謁見の広間で、美しいお姫様に「勇者様、この世界を是非お救い下さい」と懇願されていた。
儚くも可愛いらしいお姫様に頼られるなんて、クソ羨ましかあ。
だと言うに、あ奴は、それをスルーしている。
ムキョ! 何故、応えてやらんのじゃ。
ポテンポテン跳ね飛べば、俺の入っている卵に気づいたあ奴は、取り出して蓋を開けた。
「親ビン! こんなところに居たんですか。また、妖精の格好なんですね」
半笑いしながら、奴は、俺の羽を引っ張りやがった。
ぬお。どうしてだか痛いのだ。
「な、なに、しちくりやくりまがる(何、してくれるんだ)」
「またですか。宇宙人語はわかりませんよ」
取り敢えず、奴の指を噛もうとしたら、サッと手をはずされた。チックショウ!
「退屈だから、早く帰りましょう」
「お前は鬼か? あの美しいお姫様に頼まれて、どーして、断ったりするんじゃ」
「いや、特に」
興味も無い感じだ。
「聞いて驚け! 俺がお前の手伝いをしてやる。勇者に着いたアイテムになったんだぞ! きっと凄い効果のある物に違いない」
俺が危うく、ふん反り返りそうになったのを見て、何事か考えたあ奴は、今まで無視していたお姫様にこう言った。
「親ビンが、この世界を救ってくれるそうです」
ドヒャッ!
このクソドグサレ勇者め、何を言っちゃってくれちゃってんだ?
お姫様は、目をキラキラさせて、あ奴に言った。
「勇者様。私の為にありがとうございます。では、勇者様の手助けをする者達を紹介致しますね」
お姫様は、マイペースらしい。
気を取り直して……。
一部、あ奴が不穏な事を言ったが、賢者マーリン様と剣士アレックス様が揃えば、最強パーティの出来上がりのようだ。
早速、鬼ゴウゴンと言う、聞いたことのない魔物退治の旅に出たのだった。
伝説の甲冑を着けた奴は、正に、白馬に跨がる勇者様だ。
沿道からの歓声が凄い。
しかし、奴は、つまらなさそうに馬に乗っていた。勇者失格じゃないのか?
俺は、窮屈な卵から出て、今は奴の耳に取り付いているところだから、一部始終見てとれた。
最初に向かったのは、勇者の剣が安置されている、聖なる湖の祠だ。
鏡の様な湖を覗くと、底まで見える透明度の高さだった。
諸君、どうやって湖を覗いたのか不思議だろう?
聞いて驚け! なんと、空を跳べるのだ。
妖精だから当然だって? そうか、今までは着ぐるみで、今は本物の妖精だからな。
ウキウキ浮かれていたら、ベローンと伸びた桃色の粘着に巻かれてしまった!
「ウギャア!」
あっという間に、ねばねばの中だ。
狭い空洞に押し込もうとされて、抵抗していたら、腹に食い込んだ粘着のせいで、あれが出た。
食事をしていたら、スマン。
何しろ密閉された空間だったから、俺も毒ガスで死ぬかと思った。
俺を捕まえた魔物は、「ゲッロオー」と言って俺を吐き出し、ひっくり返った。
近くには、あ奴が立っていて、例によって笑い転げている。
「おや、親ビン! フロッグが、ヒヒッ。ゲッロオー言いましたよ。私は、初めて聞きました!」
ななな、な! 見ていたのなら助けるのが普通だろう?
「おにょれは、見ていたにゃら、助けんかボケ!」
「えー、世界を救うなら、こんなチッポケな魔物、こうですよね」
奴は、ムギュッと踏みつけた。
パンと弾けて魔素になるフロッグ。
何気に無慈悲だな、お前。
「それにしても、バッチいから早く洗い流して下さいよ」
湖面に立つ事三回。
俺は、フロッグに好かれているらしい。
見兼ねたマーリン様が洗って乾かしてくれたのだ。
こうして、勇者の剣がある場所に、なんとかたどり着いた俺達は、奴のごねりのせいで、俺が勇者の剣が刺さった隙間に落ちたもんだから、気になったあ奴が抜いて、ダンゴムシまみれの俺に感涙すると。
賢者様と剣士様は、嫌そうにそれらを見守ってくれていたのだ。
おかしい……伝説の勇者の剣を抜く場面。
名シーンな筈!
まあ、いい。勇者と言えばこれからなんだから。




