しょうたい
俺は、今、非常に悩んでいる。
今朝受け取った郵便物が、白くて四角の上質な封筒に、蝋で固めて刻印を押されたものだったからだ。
宛名は、間違いなく俺宛だが、送り主の名前がないのである。
これは、古典的な不幸の手紙では? 先日、謝罪の手紙を書いて出したが、恨んでいる輩もいるかもしれないからな。
しかし、それにしては手のこんだ手紙だ。
開封するかしないかを考えていたが、やっぱり何かの間違いだろうと、そのまま居間のテーブルに置いておくことにした。
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ラーメンを買いに出掛けて戻ると、奴は居間にいて、な、な、なんと!
俺宛の手紙を開封しているではないか!
「おま、な、なにゃをしちょるちょるとだな!」
「お帰り、親ビン。またですかあ(ハァー)……俺、宇宙人語はわかりませんよ」
俺は、奴の手から手紙をひったくった。
奴は驚いて俺を見ている。
「何するんですか、親ビン。乱暴だなあ」
俺は、手紙の宛名をあ奴にに突き出して見せて
「こりには、何て書いちょる? 何でおみゃーがみちょるんじゃ、われ」
「は?」
「はじゃないじゃろが。ちゃんとよみゃんか」
「はあ、だから読んでますよ」
「おみゃーは、おりぇのゆってりゅことが……はぁ、はぁ、わからんのか?」
「親ビンこそ、早くも更年期ですか?」
「誰が、更年期じゃ」
「これは、俺の実家からの手紙で、帰ってくるように書いてあるんですよ。気になりました?」
「へほ?」
あ、落ち着いてよくみたら、奴の体に隠れて俺のはテーブルの上にあった。
その視線に気づいた奴は、笑うかと思ったら怒り出して、俺を仰天させた。
「まさか、俺が、他人の手紙を盗み読みするような奴だと思ってたんですか!」
物凄く恐い圧を出した奴は、スッと冷めた表情をしたとおもったら、その後見向きもしないで、部屋を出て行ってしまった。
なんかすんごく恐かったぞ。あ奴が怒るとこんなに恐いというか、見捨てられたというか、そんな気持ちにさせられるんだな。
とりあえず、謝っておこう。
そうだ、さっき買ったペットボトルのオマケでも、あ奴に持っていってやろう。
グニョーンって伸びる(延びる)うどんの麺なんだが、気に入ってもらえるだろうか?
2階にある奴の部屋をノックした。
しばらくして、扉が2㎝開いたかな?
「………」
「これを、お前にやろうとおもって」
オマケを扉の隙間に入れたら、サッと取って
「嫌みですか? こんな紐を渡してくるなんて!」
ガシャン。
扉を閉められてしまったようだ。
あれは、うどんの麺なんだがなあ。ユーモアのわからん奴だ。
俺は、諦めて下に戻り、ラーメンを作って食べていたんだ。
あ奴が出掛けて、戸が閉まる音がした。
ちょっと驚いてラーメンのスープを、よりにもよって、手紙にこぼしてしまった。
あー、染みになってるな。
仕方ないので開封して読んでみると、知らない人の結婚式の招待状だった。
ぬぁ、やっぱり間違いだったのか。
こういう時、どうすればいいのか分からないので、長老に相談してみた。
すると、なんと、明日一緒に謝りに行ってくれるって長老が言うのだ。
うーん、俺の為に?
解せん。
それから、明日はキチンとした格好をして、時間厳守で長老宅に行くことになった。
そして、奴は、その日帰って来なかった……。
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翌日。
長老の車に乗って連れて行かれた場所は……お城ですか?
幾つもの門を通り、車を降りて立派な執事に案内された先は……広大な土地に豪華なガーデンパーティー、きらびやかなセレブ達の集まり。
黙って隣りの長老を見ると、笑って
「せっかくじゃから、ワシらも楽しむぞ」
はあ?
その場で90℃体が曲がったところを、通りがかりの黒子さんが、ササッて支えてくれた。
この黒子、どこかで視たような?
一応礼をしておく。
こんなにご馳走があるんだから、それなら食べていくかという気持ちになり、長老に連れられて、奥のテーブルについたのだった。




