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美味しかったのはパンだけ

 俺は、丁寧に頭を下げて、「なかったことにして下さい」と頼んだ。


 それから、斜め後ろの、人相の悪い男達のテーブルに飛んだのだ。


 テーブルの上は酷く汚れていた。それでも、食い散らかしたパンに、嫌々噛じりついたのだった。


 タン! 俺の横スレスレに、ナイフが刺さった!


 ヒーッ。〇〇っ〇チビるよ。


 襟首をつまみ上げられて、俺は本気でジタバタした。


 「やい! 放せ! 放しやがらないと噛みつくぞ!」


 「おう、なんとも威勢がいい、コバエだな」


 「ギャハハハハ」


 「イヒヒヒヒ」


 ダミ声で笑う海賊達。


 「船長どうします?」


 「酒のビンにでも詰めて、泳がせやてやったらどうだ?」


 「ガハハ、そりゃいいや」


 「どのビンにしやす? お頭」


 「バカタレ! 船長だ」


 「へい! 船長」


 「ギャハハハハ」


 「待ってくれないか」


 やや! 先程のダンディーが声を掛けてきた。


 海賊達は、警戒している。


 「なんだ、あんた。文句でもあんのか?」


 「いえ、とんでもない。ただ、死んだ母親が、虫にも1枚の金貨が宿ると、教えてくれたものですから、コレで購わさせてくれないだろうか。そう思って、声を掛けただけなんですよ」


 そう言って、1枚の金貨をテーブルに置いた。


 お頭と呼ばれた男は、大きなナイフを取りだして、ニヤリと笑った。


 「足りねえな。旦那」


 「ハハ、私も旅の途中で、あまり手持ちがないんですよ」


 そう言って、金貨を4枚テーブルにのせた。


 「まぁ、俺達相手にちと少ねぇが、手を打つとするか」


 俺をプラーンと下げていた手下に、顎で合図すると、手下は、俺を放ると見せかけて、ナイフで攻撃したのだった。


 ダンディーさんは、なんなく手下の腕を掴み、捻り上げてしまった。


 お強い! いやいや、関心してる場合じゃなかった。


 なんて、余計なことをしてくれるんだ。


 俺は手下の手をのがれ、アヤツと合流した。


 お頭が、テーブルをひっくり返したので、乱闘になってしまっている。


 が、まるで用意していたかのように、ピーッと呼子が鳴って、外から、憲兵が数人現れて、あっという間に、海賊は全員お縄になってしまったのだ。


 さあ、大変!


 「おい! おい! どうすんじゃ?」


 「いやぁ、見事な展開ですね。脱帽します」


 「な、何がじゃ」


 「まあ、落ち着いて下さいよ。親ビン」


 「こりゅが、おちゅちゅいていにゃにぇにゅか」


 「それはいったい何語ですか?」


 「わしゃ、知らん」


 「兎に角、これでいいんですよ。こんな遣り方もあるんですね。親ビン、勉強になりました」


 「は?」


 うっ、ウェップ。


 ∈∈∈∈


 気が付いたら、セイユ様が前に立っていた。


 「ほんに、ようやった。はよかえりぃ」


 「はっ」


 「はあ?」


 俺は、またもアヤツに質問した。


 「何が良かったんだ? 女の子にも会えなかったんだぞ!」


 「ああ、要は海賊の捕縛だったので、早く済んで良かったってことですよ。通常なら1ヶ月以上、船に乗っていなければなりませんでしたからね」


 ヌォー。そんな長い時間、こ奴と一緒……。


 「ウム。良かった」


 「俺は残念ですけど、今回も動画撮れたので、満足です」


 アヤツは、草々に部屋に消えて行った。

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