囚われたいのに
いつものように、神子様のワープで送ってもらう。
ワイワイ、ガヤガヤ、騒音の坩堝だ。
耳が痛いので、ちょっとだけ耳栓をしておこう。
後で外せばいいんだからな。
アヤツの後について行く。
俺は、小さいから、大きな足が邪魔で、なかなか進めないんだよなあ。
奴と距離が出来てしまった。
ん? 奴が止まって、テーブルを指さしている。
俺は頷いて、隣のテーブルからジャンプして、座っている男の背中に飛び付いたのだ。
男の腕を伝って、テーブルの上の……あれ? パンがないぞ。
しょうがないから、ウロウロとパンを探した。
やっぱりない。
ふと見ると、その先のテーブルに沢山あったので、間違えたんだと思い、モモンガ飛行を披露した。
無事にテーブルの上に載り、パン目掛けてテケテケ走った。
あ、意外と美味しいなあ。
モッチャモチャ食べているのに、捕まる気配がない。
あ、耳栓してたな。
外すと、口ひげの男と目が合ったのだ。
海賊の筈なのに、ダンディーだなあ。
更に、モシャモシャパンを食う。
男は俺の顔を覗き、「美味しいかね? 小さな珍入者君」
と言った。
あれ? 捕まえてくれないと困るなあ。
トコトコ近づいて、「俺を捕まえて、宝のありかを吐けえー! って言わないのか?」
と、訊いてみた。
「ハッハッハ! これは愉快だ。小さな珍入者君。君とは友達になれそうだね」
えっ? 俺今回は、女の子と仲良くなる筈だったのに、おじさんと友達かよ。
どうしてこうなった? 解せぬ。
「俺は、女の子と仲良くなりたいのに!」
おじさんは、更に爆笑した。
「それは、済まなかった。お詫びにもっとご馳走しよう」
「いや、そうじゃなくて、捕まえないのか?」
「何故私が、君を捕まえなきゃならないのかね?」
俺は持っていたパンを落とした。
もももももも、もしや……。
俺の視界の先には、奴が腹を抱えて笑っていた。




