コビトの妖精です
「何? 虫だ! どこから入ってきたのかな? まぁ、いいや。普段の僕なら真っ2つにするとこだけど、今は、そんな気分じゃないから。感謝しろよ、見逃してやるんだからな」
偉そうなガキだった。
白銀の髪に桃色の頬。少し眠そうな赤い瞳。身なりの良さそうな服を着ている。
「あっ、あの、その……」
「ガチャガチャとうるさく鳴く虫だな」
のあ~! 言葉通じてないよ! どうやって、魔法のこと伝えるんだよ!
兎に角、寒い。手を擦り合わせた。
「見たところ、〇エと思ったが、鳴く訳ないし……でも、仕種からまんま〇エだよな?」
細い棒みたいので、突つかれた。
妖精なんだがなぁ……。
「丁度よい。退屈していたのだ。お前、何かして見せろ。僕を驚かすことができたら、ここから逃がしてやるぞ?」
辺りを見回すと、鎧戸が締まっている。薄暗くなった部屋には、粗末なベットに小さな台があるだけの、ボロボロの部屋だった。
この子供は、囚われているのか? それとも、落ちぶれたここが家なのか?
話せないって、なんて不便なんだ。
ジーッと、見詰められていたので、ここは、先日培った努力の賜物を披露した。
羽が邪魔くさいが、なんとか足をあげることができた。
「うわっ、スゴいスゴい!」
興奮して魅入っている。真正面からの鼻息に、助けられたよ。
適当なところで、手を広げて終わりにする。
ゼイゼイ言ってたら、頭の上から水がビチャッてかけられた。
「水飲んでよ。僕からのご褒美だよ。貴重なんだからね」
ニコニコしながら、鬼畜な仕打ち。
あれ? コレ誰かに似てるな。
まぁ、子供のする事だから、しょうがない。
ブルブルブル。しかし、寒い。
もともと寒い部屋に、汗をかいて水に濡れた体。手をしきりに擦り合わせ、足踏みしたが、体温低下で丸くなった俺。
異変に気がついた子供は、棒で突ついてきたが、反応しない俺をとうとう手のひらに載せたのだ。
「虫さん、どうしたの? 寝ちゃったの? ねぇねぇ。もしかして、死んじゃったの?」
子供らしい、可愛い声だ。
それからも、仕切りと呼び掛けてきたが、体温低下で眠くなってきた。
「誰か! 誰か来てよ! 助けて、助けてよ……ねぇったら!」
それが止むと、シーンとする室内。
「くそ、くそ、くせう!」
テーブルを叩く音。
「僕は……虫1匹ですら助けられないのか……なんて……無能なんだ……」
シクシクと泣き出した。
「虫と、約束したのに……ここから、逃がしてあげるって……」
しばらく、泣いていたようだ。
鼻をすする音が響く。
俺は、子供の体温の高さで、少し暖まってきたから、何とか立ち上がろうともがいていた。
ところが、子供体温だとばかり思っていたら、ジリジリとなんだか焦げ臭いのだ。
「!」
「アチッ」
羽に火がついていた! ぎゃーっと、駆け回る俺。
子供は一心に何か呟いている。
さっきの水溜まりに慌ててダイブする。
火は消えたが、背中と尻が丸見えになっていた!
子供は、赤い瞳をさらに光らせて、鎧戸に向かって手のひらを向けたのだ。
バーン!
衝撃波のような炎が当り、鎧戸が弾けとんでいった。
危ね。俺ごと燃えるとこだぞ?
俺の非難の目をスルーして、そっと、俺の尻を持ち上げた。
「何をするう!」
弱々しくもがいたが、所詮、虫の抵抗だ。人間に勝てる訳がない。
子供は、ソッと窓に置いてくれた。
「約束だよ。逃がしてあげる。2度とここに来ては駄目だよ〇エさん」
いや、俺ハ〇じゃないし、羽は、お前が焼いたんだけどな。それに、尻丸出しで帰るのは勘弁な。
俺が中に戻ろうとすると……。
「ありがとう。心配してくれるの? 虫なのに優しいんだね。でも、もう大丈夫。僕だって魔法が使えた。これからは、立派になってみせるよ。だから、君はお帰り」
そう言って、俺は、外に放り出されてしまった。
あーれーと叫んだ後には、ウエップ。
オスロ様が目の前に立っていらした。




