あとからくる
朝、普通に起きて訓練に行った。
奴は、先に来ていたらしく、ソンブレロを小さくしたような帽子をかぶり、青シャツに金の刺繍、赤いふっくらしたズボンに金の腰巻きを身につけていた。
どうやら、今日はひげ面じゃない。
「遅いですよ、親ビン。さ、早く始めましょう」
昨日と同じように、砂鉄入りサポーターと、鉛入りの靴で足の上下運動100回。
昨日よりましになり喜んでいると、そこからが悪夢の始まりだった。
サポーターを外して、靴を脱ぐと……今度は、どうした?
ガタ。ピシ。グキッ。
曲がらない関節が待っていた!
首と足腰が特に酷い。
手を横にちょっと跳ねながら、ヨチヨチと奴に近づけば、口を押さえた奴は、ヒィーヒィー言った。
何か話そうと試みているようだが、口を押さえていたら、話せる訳がない。
「素直に笑えばいいのに」
と、突っ込みを入れられている。
期待を露に、携帯を向けている。
だが、これはもう、〇〇コ座りも出来そうにないんだけど?
ギギギギギーッと、首を傾げて見せたら泣いている。手で口を押さえながらな。
「なっ、何にもしなくとも、存在するだけで、こんなに面白いなんて犯罪です」
いつもながら、コヤツの思考回路は、どうなっているのか?
やれやれ、凡人の俺には理解不能だ。頭がいい奴は、少し変わっているからな。うんうん。
それから奴は、俺に出演料だと金貨1枚を手渡してきたのだ。
不審に思ったが、くれると言うものを返すのも大人げないから、貰っておいてやった。
が、動画を撮りながら、俺の後について来ていた。
お前。それは、完全なス〇ーカーだろうが。
いや、金を貰っているから、俺は、通行人Aさんなんだろうか?
大いに悩んだせいで、帰りは色々とあって、少々、遅くなってしまった。
何しろ、関節が曲がらないんだから、不都合な事が起きるものだ。うん、仕方ない。
アイツは、帰りつくなり自分の部屋に直行していた。
あー。帰り道のを編集するんだね……ちょっとだけ、奴のことを理解してしまった自分が悲しかった。




