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Lv1の剣  作者: 豚野朗
王都
93/206

尋問(国宝級の剣)

「さぁ、本当のことを話しなさい。もしも嘘をついたら、二度と嘘がつけないように舌を切り落としてあげる」

 俺は目の前で高価そうな椅子に座る誘拐犯に、尋問されていた。


 馬車はアリスの入っていった城であることは確かだ。馬車の窓から城に入っていくのがはっきり見えていたからだ。

 しかし迷路のような城の廊下や階段を歩き、どこか分からない部屋に連れてこられたので、具体的な城のどこにいるのか分からない。

 部屋の窓からは王都が見えていて、城の高い場所にいるくらいか。


 部屋の中には黒い色を基調とした家具が置かれていて、黒いドレスを着ていることから察するに、この誘拐犯の部屋の可能性が高い。

 アリスと知り合いだろうか。

 ドレスを着ているからには、貴族とか王族とか、そんな感じなのかもしれない。


「本当のことって、何を言えば良いんですか」

 とりあえず、誘拐犯の目的を聞いてみる。

 そもそも俺の名前を知っていて、俺を誘拐しようと企む人間なんてそうそういない。

 始まりの町でもほとんど知り合いはいないし、エルフの隠れ里は一般人には知られていない場所だ。魔法都市でも、一週間くらいしか過ごせていない。

 だから俺を知っているという事は、何かしら魔王の幹部との戦いを知っているという事だ。


「何って、決まっているでしょう。あなたとアリスお姉さまがついている噓の事よ」

「俺とアリスがついている嘘?」

 何の事だろうか。

 思い当たることがない。

 俺とアリスが嘘をつく必要なんて、今まであっただろうか。

 思い出そうとしてみるが、まったく嘘という物をついたことがない。


「嘘なんてついていない。何かの勘違いなんじゃないか?」

 正直に答えると、「はあ?」と言って、バンと机をたたいた。

 机の上の物が飛び上がる。

「そんな訳ないでしょう」

 立ち上がって、床に座らせられている俺と目線を合わせた。

 日本人のような黒い瞳が、俺をまっすぐに見据える。


「あなたが、アリスお姉さまをたぶらかして、さらったのでしょう!」

 甲高い声で、彼女は叫んだ。


 そして俺はその予想だにしていない言葉に、思考が止まる。

 俺がアリスをたぶらかした?

 しかもさらった?

 何を言っているのか、全く分からない。

 そもそもアリスをたぶらかした覚えもないし、そもそも始まりの町から攫われたのは俺の方なんだが。

 ロック・ジャイアントを倒した後、馬車で寝ていたら、いつの間にかアリスに誘拐されていたはずだ。


 彼女の言葉は、事実と全く逆だ。


 おそらく、アリスが説明をした時に、この人がアリスと俺を逆にして受け取ったのだろう。

 訂正をしなければと思って、「いや、それはちが……」と話そうとしたが、彼女はどこからか剣を取り出していた。

「汚らしい!その首を跳ね飛ばしてくれるわ!さぁ、大人しく首を差し出しなさい」

 もう剣を掲げ、処刑する気満々だ。


「ちょ、ちょっと待って!完全に誤解なんだ!」

 カノンにもらった命をさっそく落としかけていて、俺は慌てて弁明をする。

「たぶらかしたっていうのも、さらったっていうのも、君の勘違いなんだ!話だけでも聞いてくれ!」

「話は十分に聞いているわ。魔王の幹部と戦ったんですってね。それで、あなたの剣が役に立ったとか。他の町でも同じように魔王の幹部と戦って、武勲を立ててきた。違う?」

 俺の首を今すぐにでも斬り落としそうな鋭い眼光はそのままに、彼女の口は間違いのない事実を連ねた。

「そ、それは、そうだよ……」

 あれと心の中で思う。

 何故、そこまで正しい認識を持っていて、彼女は俺に剣を向けているんだ。

 しかも嘘つきと言って、処刑をしようとしているのか分からない。


「ほら、嘘じゃない」と吐き捨てるように言う。

「な、なんで……」

「だって、お姉さまが武器を使える訳がないじゃない!」

「武器を?」

「お姉さまはかつてないレベルの持ち主よ。アリスお姉さまが使える武器なんて、国宝か神話級の武器しかありえないわ。それなのに、アリスお姉さまはあなたの武器を使えてる。おかしいわよね、なんでそんな武器を持った人間が始まりの町にいるのかしら?」

「それは……」

「魔王軍との戦闘の真っ最中よ。そんな武器を持っている人間が、始まりの町にいる訳がないわよね。まず最前線で使われるべき物であるはずよ。なのに、あなたは最前線でなくて、始まりの町にいた。つまり何か意図があって、始まりの町にいた」

 まるでネズミを追い詰める猫のように、淡々と静かに説明をする。

 アリスから話を聞いたのか、正しい認識をしているが、俺がこの剣を持っている事に対して、妄想を働かせすぎている。

 アリスお姉さまと呼ぶからには、アリスの妹だろうか。

 というか、もしかしてアリスの説明を聞いた人間すべてが、この認識になってしまうのか?

 確かにレベルが高くて、俺の持っている剣しか使えないと聞いていたが、その事でこんな勘違いをされるなんて思わなかった。


「どこかでアリスお姉さまが隠居している事と知って、アリスお姉さまに取り入るために、そんな剣を取り寄せたのでしょう。しかも運のいい事に魔王軍の幹部を一緒に倒すことで、アリスお姉さまの信頼を得た。そしてアリスお姉さまとふた、ふた、二人で……」

 最後にはふるふると震えて、俺を親の仇のように見下ろす。

「二人旅をするなんて、うらやま……汚らわしいですわ!アリスお姉さまに、あんなことや、こんなことまでしようとしたに違いないですわ!この世の天国を味わえたのですから、もう未練はありませんわよね。私が直々に本当の天国に送って差し上げますわ!」

 そして覚悟を決めたように、剣を掴む手に力を籠める。


 震えていた剣がぴたりと止まり、俺の首へ狙いを定める。

「か、勘違いなんだ。俺がいたのは偶然で……」

「そんな言い訳が通じると思うのですか?その剣を手に入れた時のように、頭を使ってはいかがです。さぞ、小賢しく立ち回って手に入れたのでしょうね。あなたが死んだ暁には、最前線へ剣を送ってしかるべき方が使うように手配して差し上げますわ」

 完全に殺すつもりでいる。


 しかも話を全然聞いてくれない。

 話の腰を容赦なくおられる。

 アリスをたぶらかそうとしているナンパ師みたいに思われていて、そもそも話を聞く気がない。

 説得しようにも、話ができなければどうしようもない。

 逃げようにも、彼女の護衛なのか部下なのか分からないが、男二人がついていて逃げる隙が無い。

 そもそも俺はレベル1で戦えないのに。

 逃げ足だって遅くて、扉にたどり着く前につかまるのがおちだ。


 彼女自身はアリスのためを思って、俺を処刑しようとしている。

 悪い人ではなさそうだけど、いかんせん思い込みが強すぎる。それで先走った行動をしているにちがいないのだ。

 アリスさえ捕まえて、彼女を説得してもらえばそれで済む話だ。

 この城のどこかにアリスはいる。

 だけどアリスを連れてくる方法も時間もない。


 今にも彼女は俺の首へ剣を振り下ろしてきそうだ。

 剣を避けるようなスピードも防御もない。

 逃げられない。説得できない。

 ヤバい、詰んだ……。

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