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Lv1の剣  作者: 豚野朗
魔法都市
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魔法都市(反撃)

 光が収まると、その光をたどるように小さい何かが空へと飛びあがるのが見えた。

 それがアリスだ。

 きっとアリスなら、この状況を切り開いてくれる。

 そして一度地面に降りて、家の上を跳び回りながら、こちらにまっすぐ迫ってくる。

 きっと上から見て、学長たちの結界が見えたのだろう。


 骨はすぐさまアリスにも槍の雨を降らせる。

 しかしアリスはその豪雨のような槍の雨の中を、頭からかぶったローブをはためかせながら避ける。しかもローブにまったく槍を当てずに、建物の間をぴょんぴょんと跳んでいた。

 リッチは骸骨兵士を動かして、剣を振るもそれも全く当たらない。

 しかし妙なのは、何故か攻撃するチャンスはいくらでもあったのに攻撃をしない事だ。


 そして俺を見つけて、「修平!お疲れ様」と軽い調子で言った。

 そして俺の前に降り立つ。

 その酷い匂いに、思わず俺は鼻を摘んだ。

 下水の匂いと、それと鉄臭さと獣臭さ、さらにいろいろな匂いが混ざり合って、凄まじい匂いになっている。

 ローブに隠れて身体は見えないが、ここまでの動きを見る限り怪我はしていないみたいだ。


「これ、どう言う状況なのかしら?最終決戦みたいなすごい状況だけど。骸骨のデカイ化物に、さらにデカイゴーレムが十体以上?」

「魔法都市の裏で動いていたのは、魔王軍幹部のリッチだったんだ。俺も理由はよく分かっていないけど、リッチが骸骨もゴーレムも操って、魔法都市を襲っている」

「にゃるほどね。よく分からないけど、簡単な話、リッチを倒せばいいって事よね。魔王軍幹部にリッチなんていなかった気はするけど、それは置いておきましょう」

「それでリッチはゴーレムの肩の上にいるあれだ」

 ゴーレムの肩に乗るリッチを指さす。


「了解。剣を貸して。持ってた武器は全部研究所で使い切っちゃったのよ。滅茶苦茶量が多くて、時間かかっちゃった。よぉし。とりあえず、一撃叩き込んでおきますか!」

 俺の剣を華麗に抜き取って、そのままいつものようにリッチヘあの魔法を撃とうとした。

「ま、待って」

 アリスを静止する。

「なに?」

「ゴーレムは元人間なんだ。元に戻す方法もあるかも知れない。だから出来れば、攻撃しないで欲しい」

「うえ……。それ、本当?だったら、本当に気持ち悪い悪党ね、リッチって言う奴は。つまり人体実験をしていたって事?」

「簡単にいえば、そう。リッチは死体を操ったり魂っていう物をゴーレムに植え付けたりできるらしいんだ。アリスの戦ったダークエルフも、リッチが操っていたらしいんだ」

 俺が説明すると、「へぇ」とアリスは少し低い声で言った。


 何かいつもと雰囲気が違った

「なるほどね。私も個人的に倒さなきゃいけない理由が出来ちゃったわ。ありがとう。ゴーレムば傷つけないように立ち回って、リッチとあの骸骨はギタギタにしてもいいってことね」

「へっ、あっ、そうです。できますか?」

 少し荒れたような口調に少し引いてしまう。


「大丈夫よ。それと修平は早く結界の中に戻りなさい」

 アリスはそう言って、剣を片手にひとっ跳びで屋根の上に着地し、まず骸骨の兵士に向かい合った。

『プロミネンス・エクスプロージョン・セイバー』

 骸骨兵士の顔面に、剣から放たれた光が完全に命中する。そして放たれる爆風と爆音。

 爆発によって、頭が粉々に吹き飛んで、その欠片が周りへ散らばる。


 しかしその爆風を裂くように、骸骨兵士の大きな剣が斜めに振り下ろされる。

 頭が吹き飛ばされたというのに、全く関係なく剣を振る骸骨兵士。

 アリスは襲い掛かってくる剣を、隣の屋根に飛び移ることで避けた。そして骸骨兵士の剣の腹に跳び蹴りをかまして、剣を中ほどから蹴り折った。

 地面の骨の中に、折れた剣先が落ちる。

 そしてその剣先が壊れ、地面の骨に混じる。


 リッチに作られて動かされているんだから、頭がなくなっても動くのは当然か。

 しかしそれが当然だとしても、頭のない存在が動いているのは、どうにも気味悪く感じる。

 骸骨兵士は頭のない状態で、違う家の屋根に着地したアリスを両腕を振り回して襲う。家を削りながら、その腕はアリスを両側から挟んでいく。

 アリスはぴょんとすぐに真上に跳ぶ。

 ぐしゃとアリスの乗っていた屋根の家が、骸骨の腕の間でつぶれた。


 そしてアリスは剣を掲げて、骨の腕に着地すると同時に真下を斬りつける。

 太い丸太のような骨がまるで豆腐のように切り落とされた。ズドッと骸骨兵士から切り離された腕が大きな音を立てる。

 骸骨兵士は頭も両腕も落とされて、大きな壊れた骨格標本になってしまっていた。

 そして肋骨の部分を利用して駆け上り、さらにリッチの乗るゴーレムに飛び移る。

 そこからゴーレムの身体をリッチに向かって、まっすぐに駆けていく。

 走るアリスを腕についた虫を払うように、腕を振り回して振り落とそうとする。

 しかしアリスは足元が不安定にもかかわらず、まるで忍者のように跳び上がり、ゴーレムを蹴り、腕を避ける。そして隙をみつけて上へと走り、何百メートルもの高さのゴーレムの肩に乗るリッチへと近づいていく。


「新川さん、大丈夫ですか?」とハカナイさんがわざわざ下りてきてくれた。

 俺のすぐ近くに着地して、座り込んだままの俺の顔を覗き込んだ。

 いつの間にか、近くに恐ろしいほどあった骨はどこかに消えてしまっていた。

 骨はすべてアリスが吹っ飛ばしたのだろうか。

「大丈夫だよ。ハカナイさんは、大丈夫?」

「はい。大丈夫です。それでどうしてあの人は突然新川さんを襲ったのでしょう。さっきまで一緒に……」

 そりゃあ、突然あんなことになったら、混乱するだろう。

 でもそれをうまく説明する言葉が見つからない。


 センダイは操られていたんだとか、実はあのゴーレムたちと同じなんだとか。あのリッチが操っているんだとか、あと半日しか命はないんだとか。

 説明すればするほど、さらに説明しなければいけないことが増えていきそうな気がする。

「その、説明は後だ。今は、アリスの手伝いをしないと、俺の剣は他人が持つのは制限時間があるんだ。時期に剣が戻って来てしまう。そうなったら、またアリスはあそこまで登らないといけなくなる」

「近付きたいんですね。分かりました。乗ってください」

 ハカナイさんが杖に跨り、少し前の方へ移動した。

「ありがとう。お願いするよ」

 空いた杖の空間に跨る。

 ちょうどその時、手の中に剣が戻ってきた。


 上を見ると、アリスはゴーレムやリッチの魔法を避けながら、下へ向かって落ちてきているのが見えた。

 やはり時間切れで仕留められなかったらしい。

 アリスは強すぎて俺の持つ剣以外では壊れてしまい、そして剣でなければ魔王軍の幹部に効かないのだ。

 だからアリスが満足に戦うためには、俺が近づかなければいけない。


「危険なことをさせると思うけど、ごめん」

「大丈夫です。もう何回も一緒に戦っていて、他人っていう感じはしないですね」

「そうかもしれないね。ハカナイさん、アリスは落ちてきているあれだ。攻撃に当たらないようにしながら近づいて、近くに行けばアリスが採りに来てくれるから」

 ゴーレムを避けながら、地面に向かって落ちていくアリスを指さす。

「はい。行きます」

 ハカナイさんの杖がふわりと浮き上がる。


 そしてゆっくりと家の屋根の上まで飛ぶ。

 アリスはゴーレムの攻撃を避けて、すでに地面まで下りてきている。ゴーレムが踏みつけようとドスドスと足踏みをしているようだ。

 俺が手を振ると、アリスはゴーレムの足の間をすり抜けて、こちらまで一瞬で現れた。

「あははっ!間に合わなかった。あとちょっとだったのに。あと少しで、リッチの頭をスパンと真っ二つにできたのに。次はやってやるわ」

 怪我も何もないみたいだ。しかもやる気に溢れている。

「惜しかったな。今度は俺もハカナイさんと一緒に近付く、それなら持っている時間内で倒せるだろう」

「ふふ、あなたはレベル1なのに無茶し過ぎよ。でもありがとう、今回もちゃんと守るわ。ハカナイさんっていうのね。よろしくね。それと危険な時は逃げて大丈夫だからね」

 ハカナイさんにも、アリスはまるで長年の友達のように気軽に話しかけている。

 たかだか5分くらい前の絶望的な戦力差に、必死で生き残ろうとしていたのが嘘のようだ。


「さぁ、行くわよ!良く分からない内に始まっちゃった最終決戦だけど、みんなで力を合わせて、リッチに勝つわ!」

 アリスは俺が差し出した剣を受け取りながら、陽気に笑った。

「おう。リッチを倒して、早く助けなくちゃいけないな」

「はい。私も頑張ります」

 ハカナイさんも合わせた。


 そしてアリスは剣を持って、ゴーレムへと再び飛び掛かっていった。

 いつの間にか修復された骸骨兵士が、横からアリスへ襲い掛かる。

 頭も腕も治っていた。

 しかもまた一回り大きくなっている。

 もしかしたら、地面の骨がなくなっているのは、あの骸骨兵士が強化されているからなのかもしれない。切り落とされた腕の骨や、粉々になった頭蓋骨の骨もいつの間にかなくなっている。

 それも元に戻ってしまっているのだ。


 さらにまだリッチの魔法陣は展開されたままだ。

 つまりまだ攻撃は終わっていない。

 そびえたつ巨大な山のような骸骨とゴーレム。

 また振り出しに戻ってしまったが、もう不安はない。アリスがいれば、大丈夫だ。

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