魔法都市(見つめる者ども)
「あれをお前が作り上げたというのか。あれほどの化け物を……」
ワイングラスを片手に、窓の外で行われる戦いを見る。
「はい。もちろん。そして増産も可能です。素体があれば……の話ですが」
ニヤリとゴジョ―先生は、暗い笑みを浮かべる。
「素体か。あの愚息でもあんな化け物に置き換えられるなら、どれほど強力になるのだろうな。私の集めた魔法兵団なら」
「おそらく、町や村なら一人で焼き尽くし、何なら国でも……」
「くくく……。気に入った。気に入ったぞ。お前たちを買おう。いくらでも、出してやる。研究施設とやらにも案内せよ。私の領地に来れば、もっと巨大な場所をくれてやろう」
「ありがたや。しかしもうここまでド派手に動いてしまった以上、研究施設は即廃棄するしかありますまい。もう侵入者へ魔物どもをけしかけ、魔物どもがすべてを破壊しつくしてくれることでしょう。そして魔物どもが外に出て、いずれ火もかけられ、全ては灰の中です」
「ふっ、段取りが良いな」
ワイングラスの中身を一気に飲み干す。
「あんな落ちこぼれどもで魔法兵団の精鋭と張り合うとは、素晴らしい。……ふむ、また一体壊れたか。強度に問題があるのではないか?」
たくさんの魔法を撃ち込まれ、ひびまみれの壊れかけゴーレムは上半身を吹き飛ばされて、粉々に砕け散る。
一体一体に集中攻撃を加える戦略を取り始めてから、確実にゴーレムは数を減らされていた。
しかしまだ十体はいる。
「さすが、ご慧眼。元が土ですから、強度は魔力に依存します。だけどその問題もすぐに解決できるでしょう」
「こちらも流石という言葉をくれてやろう。さて、最後までこの戦いを見させてもらおうじゃないか。私の魔法兵団と落ちこぼれどものゴーレムのどちらが勝利するのか。気になるところだ」
傍のお付きの女性にワインを注がせ、下品に笑う。
「んっ?」
その時、外の景色の異常に気が付く。
「なんだ。あの一体が背を向けて、どこかに行くぞ。何をしているんだ?」
魔法兵団と戦っていたゴーレムたちの中の一体が、魔法兵団へ背を向けて、どこかへと歩いて行こうとしていた。
その背に何度も魔法が命中しても、まったく動じない。
ただ何かを追うように、歩いている。
そして羽虫を払うような動作で手を動かしていた。
「ふむ、あれはあなたの御子息のゴーレム。何か動きがおかしいですね。少しお待ちを……」
リッチは目を閉じて、そのゴーレムに戻るよう命令を下す。
しかしうまくいかず、リッチは眉間にしわを寄せた。
「申し訳ありません。誤作動のようです。見てまいりますので、ここで観戦していてください」
「あいつか。最後まで面倒な奴だ。それにお前のようなものでも、失敗はあるという事か。ふっ、私の下に入る前にそんな顔を見られて満足だ。早くいけ」
「はい」
煽られるような言葉をかけられながら、リッチは扉から外に出る。
「ちっ。人間ごときが……」と小さく悪態をつきながら。




