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Lv1の剣  作者: 豚野朗
魔法都市
79/206

アカガvsレベル1(Fight!)

「痛ぁ……」

 俺はアカガを殴った手を逆の手で押さえて、しゃがみこんで涙をこらえていた。

「そりゃそやろ。修平とオレには、とんでもないレベル差があるんやで、素手で殴ってきたらそうなるやろ。本当に変わっているんやね。ちゃんと自力でたどり着いた事は褒めといたるで」

 アカガはパチパチと祝福するように拍手をした。


「いらないよ、こんな正解なら。それで、フリョ・リダたちを殺したってことは、元に戻すってことは……」

「できるわけないやろ。そんな事ができるなら、こんなしょうもない事をやっていないわ」

 だとしたら、フリョ・リダたちはこのまま砂化してしまうのを待つばかりなのか。

「何とか、砂になるのを伸ばせないのか?作ったのは、お前たちなんだろう」

「残り1日を一週間に伸ばしたところで何ができるんや?」

「それは……」

「何も変わらないやろ。結局のところ、壊れるのは変わらないんや」

 アカガはとても冷たい事を言った。


「そんな事を言わないで、フリョ・リダに悪いとは思わないのかよ」

「ちょっとは悪いとは思っているで。でも力を欲しがったのは、あいつらやで。こんな怪しげな人間の言葉を真に受けるからいけないと思わんか?」

 フリョ・リダたちは自発的にアカガ達の研究に参加したということか。

「でもその前にアカガは止められなかったのか?フリョ・リダたちを研究する前に」

「ふっ、もしかしたら、できたかもな……」

 アカガは俺から目線を逸らした。


「だったら……」と俺がさらに言葉を続けようとした時、ドンと何か大きな音がして、地震が起きた。

 立っていられず、膝を地面に打ち付けて、膝立ちになり、何とか転ばすに済む。

「な、何が……」

 周りを見ても変化はない。

 ただ山の斜面や周囲の草原が見えるだけだ。


「始まったんやな……」

 アカガの悲しそうな顔を見て、何か嫌な予感がした。

 俺は目の前の峰を走って登る。

 そこならば、きっとここから見えない魔法都市を見ることができるはずだ。

 息を切らして上り詰め、天辺から魔法都市のある方向を見た。


「何だよ、あの化け物は……」


 魔法都市は黒煙を上げながら、巨大な化物に襲われていた。

 子供が作った泥人形のような不恰好な人の形の化け物が5,6体。

 腕や足の太さも頭の大きさや、胴体の構造もまちまちで、どこか不気味な雰囲気を感じる。

 近くの家や店に、腕を振り下ろし、破壊して歩いていた。


「見ろや、あの不恰好で醜い化け物。あれが力と知恵の粋らしいで。まったく、笑えるで。あんな物が、オレが今まで手伝ってきたものなんてな……」

 後ろからアカガが追いついて、横に立って言う。

 そしてその口は全く笑っていなかった。

「あれもアカガがやっているのか?」

「あれを動かしているのはリッチや。あれを作るのを手伝ったというなら、関係者やけどな」とアカガはただ淡々と口にする。


「止められないのか?」

「止めるなら、リッチを倒さんとな。レベル1の修平にできるんか?」

「それは……」

 できない。

 だけどできる人が、あの街にいるはずだ。


 なら、俺ができるのは、情報を引き出すことだけ。

「フリョ・リダは?フリョ・リダはどこにいるんだ?無事なのか?」

 助け出す人間の安否と、これから何をしようとしているのか。

 それをアカガきら聞き出して……。


「何言っているんや。見えているやろ?フリョ・リダたちが」

「はっ?そんなの……どこにも……」

 周囲を見渡して、人影がない事を確認する。

 そしてぱっと頭の中に浮かぶ最悪の結末。


「まさか……」

 魔法都市に再び目を向ける。

 そこで暴れている巨大な化物。

 化け物は見ている間に、口らしき物を開け、そこに赤い光が溜まる。

 そして光から炎が放たれた。

 地面を焼き、建物を焦がす。


「そうや。あれがフリョ・リダやで。限界まで強化と土を盛り上げた。親父とリッチの最高傑作や」

 アカガは俺の前に立ち、表情の消えた顔と声で言った。

「持って半日の命やけどな……」

「そんなことって……。あれが、フリョ・リダ?あと半日って、どういうことだよ。これから、どうするつもりなんだよ?」

「どうするつもりなんやろなぁ。オレにも全く分からんわ」と肩をすくめて見せた。


「どうするつもりって、アカガも手伝ったんだろ」

「せやな。言い訳かもしれへんが、こんなことをやるために研究していたんやないんやで、ただオレは……」

 何かをアカガが言いかけた時、ぴかっと魔法都市の外側の方で光り、それがまっすぐにフリョ・リダたちに命中した。

 それは魔法による砲撃だ。

 ドドドド……。

 何度も何度も続けて魔法が飛び、化け物となったフリョ・リダたちへと降り注ぐ。


 フリョ・リダたちは痛みはまだあるのか、うろたえながらよろよろと後ずさる。

 身体の表面もぼろぼろと少し崩れているように見えるが、あれほどの魔法に当たったにも関わらず、ほとんどダメージを負っていないようだ。

 すぐにフリョ・リダたちは、その巨体をその魔法が飛んできた方に正面を向けた。

 そして先ほどと同じように飛んでくる魔法をものともせずに、口の部分をそろって開き、そこの部分が明るく輝く。

 その輝きは一瞬で、凄まじい光量を帯び、それはまるでビームのように放たれた。


 いくつもの光線が、一点に収束していく。

 魔法を放った人たちにそのビームは向かう。

 ここからでも魔法都市の外側に集まっている集団が見えた。

 遠すぎて掲げられている旗も見えやしない。

 どこの誰だか分からない人たちが、フリョ・リダたちと戦っているのだ。


 結界がその集団の周囲に張られ、結界とビームのような魔法が激突した。

 ばりばりと結界とビームが激しく音を立てる。

 そしてビームは結界を破り、爆発した。

 戦っていた集団の一部が吹き飛ばされている。


「あぁ!アカガ、フリョ・リダたちは止められないのか。戦いを止めないと!」

 被害にあった人たちの安否も気になる。

 どうにかもっと良く見えないかとアカガの前に出ようとした。

 すると「止められないんや。もうここまで来たらな。止めたければ……」とアカガは言って、俺の胸をドンと押す。


『ロック・ウォール』

 俺は突き飛ばされ、レベル差もあって抵抗もできず、1メートルくらい吹き飛ばされた。

 そして俺とアカガの間に土の壁が地面から現れて、そそり立つ。

「な、なにするんだよ!」

「何するんだよって、なんなんや。オレ達は敵同士なんやで。行かせるわけないやろ」

「敵同士って、結局お前は何をしたいんだよ。坑道の中からいきなりここに連れてきたり、種明かしを唐突にしてきたり……」

 俺の問いに、アカガは沈黙で返答をしてきた。


「アカガ、お願いだ。通してくれ」

「言ったやろ。敵同士や。通してほしければ、オレを倒してみろや」

「倒すって、何言っているんだ。通してくれって言っているんだよ」

「オレを倒さなければ、あそこの戦いにはついて行けない。そうやろ?」

 壁をはさんで、アカガは俺に挑発的な言葉を並べる。

「レベル1に、俺を倒すことなんてできるんか?ロック・ジャイアントやダークナイト・グランドを倒した実力って奴を見せてみろや」

「何でそうなるんだよ。今からでも、やり直そう。フリョ・リダを元に戻す方法とかを……」

「もう話すことはないんや。イヤなら、尻尾を巻いて逃げればいいんやで」

 アカガは壁の向こうで、どんな表情をしているのか分からない。

 どうして、こんなことをするのかも分からない。


 だけどここで止められる訳にはいかない。

 俺の剣を待っている人が魔法都市にいるんだから。

 いくらたくさんの剣を持っていても、魔王の幹部と戦うには俺の剣が必要なはずだ。

 だから何としても、アカガを乗り越えなければいけない。


「アカガ、俺に特別な力はないよ。ただのレベル1の弱い人間だ」

「だから?逃げるっていうんか?」

 俺は手に持った杖の先端にある石に触れる。

 そして俺とアカガの間にある土の壁を殴った。

『フォレスト・ウォール』

 一瞬の魔力酔いと同時に、俺は魔法を唱える。


「ぐあっ」

 壁の向こうで、アカガの悲鳴が聞こえた。

 土の壁が崩れ、俺も同じように地面に崩れ落ちる。

 頭が魔力酔いの後遺症で、くらくらとした。

 俺の杖は、魔力を発する石をつけたものだ。

 それは生活用品に魔力を与えて、作動させるためのものだが、それを俺が受ければ魔法を使える。

 もともとの魔力が少ないから、すぐに魔力酔いになるのが問題だけど。

 崩れた土の壁の向こうで、アカガは生えた木によって、地面に押さえつけられていた。


「なんで、お前も倒れているんや。格好悪い奴やなぁ」

「しょうがないだろ。俺はレベル1なんだぞ。お前に勝つなら、無理しなきゃいけないんだよ」

「ハハッ、油断した。まさか木の魔法なんて、相性最悪やな。それが修平の魔法か?」

 脳裏に思い浮かぶ彼女の姿。

「いや、俺じゃない。ミコっていう人の魔法だ」

「何言ってるんや。全く分からん」

 やっと酔いがさめてきて、立ち上がる。


「今、説明している時間はない。先に行かせてもらう」

 まだおぼつかない足元だったが、まだ火が上がる魔法都市の方へと足を進める。

「あぁ、行け。不意打ちを食らって、もう立てないんや」

 アカガはぐてっと伸びて、立ち上がる素振りを見せない。

「じゃあな。後で、迎えに来る」

「黙っていけや。少し眠れば、オレ一人で帰れる」

 そしてアカガは目を閉じた。


 さて、アカガに勝ったが、これからどうやって戻るか。

 ここから魔法都市まで、山を下りて、草原を歩いてとなるとかなり時間がかかってしまう。

「新川さん!」

 ちょうどその時、空から俺の名前を呼びかける声が聞こえた。

 見上げると、そこには白い髪をなびかせたハカナイさんとセンダイがいた。


「ハカナイさん、無事だったのか。生徒会長たちは?」

 二人は俺のすぐそばに降りた。

「新川さんを一緒に探していたんですが、魔法都市であれが暴れているのが見えて、救助とか避難とかを手伝わないといけないと言って、先に戻ってしまいました」

「それで何で、こいつが木の下になっているんだ?」

「それは……。いや、それよりも俺も魔法都市の方が心配なんだ。一緒に戻ろう。アカガは多分大丈夫だ」

 それに一応、黒幕の仲間だ。

 魔法都市に連れて行ったら、余計に悪化させるかもしれない。


「お前が倒したのか?意外だな、アカガも相当の実力者だったはずだが。いや、フリョ・リダを倒したんだから、当然か」

 センダイが勝手に納得してくれるので、黙っておくことにした。

「センダイ、また乗せてくれ」

「あぁ、良いけど。結局、お前は飛ばねえのかよ」

「ごめん」

 そしてセンダイの杖に俺も一緒に跨り、宙に浮きあがる。


 後は、アリスにこの剣を渡して、リッチを倒してもらおう。

 そしてこの事件は終わりだ。

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