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Lv1の剣  作者: 豚野朗
魔法都市
78/206

事件の真相(坑道の終わり)

「それで、二人は別れて、ハッピーエンドってことか?一人は名誉、一人は恋を手に入れて」

 アカガが語り終えて、俺はアカガに聞いた。

「昔話だったらめでたしめでたしで、そうだったかもしれへんな」

「そうじゃなかった……と?」

「そうやな。オレが小さいときに母さんが死んだ。それからやな、親父が研究に取りつかれたのは」

 アカガがそう呟いたのを聞いて、さっきの昔話がアカガの父親の実際にあった話なのだとはっきりと分かった。


「じゃあ、この魔法都市で起きていたすべての異変は、アカガの父親が黒幕なのか?さっきの魔物も、人間も魔物も砂にして殺しているのも……」

「砂にして殺している?……ははっ、そこ以外は正解やで。いや、親父だけではないんやけどな」

 アカガは妙なところに引っかかったが、ほぼすべてを肯定した。

「親父だけじゃないってことは、アカガもってことか?」

「いや、親父がいかに優秀って言っても、流石にここまでの事は出来んかったんや。研究者として優秀であっても、たった一人で大きな事をするには手助けが必要やった」


 アカガの父親を手助け出来る人。

 今のところ、思い当たるのは一人だけだ。

「ゴジョー先生か?」

 ゴジョー先生がアカガの父親でなければの話だけど。


「そうや。あそこまであからさまに動いていれば、そりゃ、知っているやろな。お前とフリョ・リダとの試合を無理矢理当てたからなぁ」

 本人からその話を聞いているから間違いない。

 ゴジョー先生と会った時のあの不気味な雰囲気。

 たしかにあれはただ者ではない雰囲気だった。


「あいつとの出会い。それが親父の暴走を加速させたんや。出会わなければ、どこかで躓いたんやろな。そして諦めもついたはずや。それまで通り、田舎で教鞭を取っていたはずだったんや」

「だけど、出会ってしまった。それでどうなったんだ?何の研究をしていたんだ?」

「親父のか?それとも……」

「全部だ。何が起きているのか、俺は知りたい」

「口封じをされるとかは思わんのか?ここでオレがペラペラと喋っているけど、ここがどこかも分かってへんのやろ?」

「それは、そうかもしれないけど……。やっぱり、俺はアカガが人を殺して回るような事をする酷い人間とは思えない」

「御人好しやな……」

 アカガは口を閉し、数歩歩いた。


「もうノリで話したんや。全部話してしまうか。修平はお人好しやからな」

「なんで俺がお人好しだと話すのか分からないが、お願いだ。全てを教えてくれ」

「もちろんや」

 俺が頼むとあっさりと、アカガは頷いた。


「その前に……」

 アカガはそう言って、俺の方を振り返った。

「オレを信じてくれてありがとうな。オレは一度も人を殺していないんや。砂化事件と読んでいる物も、殺してはいないんや」

「何を言っているんだ?殺していない?砂化?」

 俺が唐突に投げられた言葉に、混乱し戸惑っている内に、『ゴーレム・クリエイション』とアカガは唱えた。


 子供が作った泥人形のような物が、地面から生え、アカガの隣にできあがった。

 そしてすぐにサラサラとその泥人形は、手足の先から崩れていく。

 そしてアカガは何を満足したのか、また前を見て歩き出した。

「な、なんなんだよ。今のは……」

 文句を言いながら、何も言わないアカガの背中を追いかける。


「親父の研究よりも先に、ゴジョー先生の方を先に説明した方が早いやろな」

 何事もなかったかのように、アカガは語り始める。

「まずゴジョー先生は、ゴジョー先生ではないんや」

「はぁ?もう、俺のにぶい頭じゃ追いつかないから、簡潔に言ってくれよ」

 ゴジョー先生がゴジョー先生じゃない。

 そういえば、ゴジョー先生は前線の戦いに出て研究をして、戻ってきたと言っていたような。

 そして戻ってきた時には、どこか人が変わったとか……。


「ゴジョー先生は、魔王軍幹部のリッチや。ゴジョー先生は前線の戦いに巻き込まれて死んで、リッチに乗り移られて、この魔法学校に戻ってきた」

「な、なるほど……。それなら、いろんな人がゴジョー先生が変わったと言っていたのにも合点がいく……。って、魔王軍幹部!?」

 驚いてすっとんきょうな声を上げてしまった。


「せやで、魔王軍幹部、リッチや。修平が驚くのも無理ないで、魔王軍の幹部にリッチがいるなんて聞いた事もないやろうからな」

 アカガは笑っているが、俺が驚いたのは魔王軍幹部というところなので、別に魔王軍幹部にリッチがいるかどうかではない。


「魔王軍幹部のダークエルフ。聞いたことあるやろ。それがリッチが表に出てこなくても良かった理由や。ダークエルフが死体を操っていたと思われていたが、なんて事は無いんや。ダークエルフもまたリッチに操られていた死体の一つなんやから」

 ダークエルフの話はエルフの隠れ里で聞いた。

 元々は魔王軍と戦っていた側の存在で、何故か邪悪龍ディアボロを倒した後、魔王軍幹部になっていたと。

 何故ダークエルフになって、魔王軍幹部になったのか詳細は分からなかったが、死んでからリッチに操られていたのか。

 確かにミコですら、1時間と持たずに魔力切れで亡くなったのに1000年も生きられるのはおかしい。


「ダークエルフは約1000年前の存在なんやで、とんでもないやろ?それをリッチは自分の操り人形として、動かしていたから、リッチという名前に聞き覚えがなくても当然や」

 アカガは俺の知りたい事とは別の事を説明しているが、黙って聞いておく。

 きっとアカガやこの世界の人達には驚くべき無いようなのだろう。


「だけど2年前、状況が変わった。アリス王女がダークエルフにとどめを刺して、二度と操れないように倒してしまった」

 アリスの名前が出て、ドキッとしてしまう。

 アリスがこの街にいるのは、まだ俺たちの他には知らないはずだから。


「リッチの立ち場は一気に悪くなった。リッチはダークエルフの元になったエルフが使ったエルフの術を再現しようという研究をしていたんや。だからどんなに仲間を実験台にしても不問にされてきたが、ダークエルフという一番の実例を失った事で実験を問題視された。知っているか、1000年前暴れた龍や。それを倒した魔法なんやで、魔王軍も喉から手が出るほど欲しがった。でも1000年もかけて、失敗失敗失敗や。それでその唯一の実例を失ったら、そら、誰でも怒るわ」

「それでリッチは、こちら側にやってきたと……?」

「せや。この魔法学校にきて、この鉱山を実験施設にしていた親父と出会ったんや」

「そうか。それでリッチの研究っていうのが……」

 頭に思い浮かぶ研究結果の姿。


「そうや。あのキメラやね。各地の魔物の身体を持ち、さらにエルフの魔法で強化した魔物や。めっちゃ強かったやろ?」

「そうだな。ギリギリだった。それと……まさかとは思うけど、フリョ・リダも……?」

 想像したくはなかったが、リッチとフリョ・リダが繋がっているのであれば、その可能性はあった。


「せやで、フリョ・リダも実験で強くなったんや。そんな簡単に魔力が増えるなんて有り得へんやろ?ま、本人たちには、その辺の記憶はないやろがな……」

 つまりリッチの研究によって、作られた強化された魔物や人間。

 それがこの事件の正体。

 これ以上、強い魔物を作らないようにさせるには、リッチをアリスに倒して貰えばいい。


「いや、待てよ。なら、お前の父親はどこに出てくるんだよ。強い魔物を作ったり人間を強くしていたりしていたのは分かったけど、お前の父親は魔物や人間を砂にして殺していただけじゃないか。どこに研究なんか出てきたんだ?」

 今までの話を聞く限り、アカガの父親はリッチと出会って、その後何にも出てこない。

 砂化させているのは、おそらくアカガか父親。

 アカガが殺していないというんだから、父親が魔法をかけているにちがいない。

 だけど、何でそんな事をするんだ?

 今までの所、殺さなきゃいけない動機は見えてこない。


「何を言っているんや。関係しているやろ。もう全部ピースは持っているんや。ちゃんと考えればいいんやで、分かるやろ」

「分かる?いやでも、全然……」

「そんなこと言わずに、考えてみればいいやろ。外も近いしな。分からなければ、外に出た時に教えてやるわ。それにあれもそろそろやし……」

 アカガはそんな冷たい事を言う。


 今までの話に、父親の研究が関わる場所があっただろうか。

 だって強い魔物もフリョ・リダのどちらもリッチが強化したのであれば、父親の研究の気配がないし、そうだとするなら別のところでやっているのだろうけど、それだとアカガの今までの話で分かるというものと合わない。

 落ち着いて、今までの話を並べてみよう。


 強い魔物。

 フリョ・リダ。

 砂化事件。

 アカガ。

 父親。

 ゴジョ―先生。

 リッチ。

 ダークエルフ。

 エルフの魔法。


 強い魔物とフリョ・リダは、ゴジョ―先生に化けたリッチがダークエルフから研究したエルフの魔法を使って強化した。

 余っている物は、ない。


 いや、待て。

 アカガはまず話す前に泥人形を作って見せてくれた。

 それは、末端からさらさらと砂化事件の被害者のように崩れていった。

 そう、同じように。


 はっと、信じられない事実にたどり着いた。

 アカガが『殺していない』というのも、それだと合点がいく。

 そう、俺も砂化事件に何度も立ち会っているんだから、アカガが魔法を使えば察することができたはずだ。

 周囲にも目撃者は何人もいて、魔法を使ったのがばれないなんてありえない。

 だったら、砂化の魔法を使っていないのだ。

 もともと砂化してしまうのだとしたら。


「おっ、外に出てしまったな。どうや、オレと父親の研究は分かったんか?」

 外に出て、太陽の光を浴びているアカガが見えた。

 外から見える開けた景色を見る限り、どうやら鉱山の頂上付近に来ているらしい。


「もしかしたら、分かったかもしれない。でも、もしこれが本当だったら、ぶん殴ってもいいか?」

 俺は少しとげのある言い方をしてしまった。

「ええで。本当やったらな」

 しかしアカガは全く気にしない様子で、いつも通りの口調で頷いた。

 俺は一度ごくりと唾を飲みこんだ。


「『生物のゴーレムを作る』それが、お前の研究だったのか?今まで砂化した魔物も人間も、もともとはお前たちの作ったゴーレムでだった。そして砂化事件というのは、さっきお前が見せたように勝手に崩れたに過ぎないっていう事なんじゃないか。そしてリッチの研究というのも、このゴーレムで作った生物に行って成功したってことか?」

 一息でこれだけのセリフを言って、大きく息を吸う。

「つまり強い魔物も砂化事件も同じ一つの事件だ。これは、正しいのか?」

 俺は少し願いの込めた確認を、アカガにした。

 できれば、否定してほしかった。

 そしてもしこれが本当なら、フリョ・リダのゴーレムじゃない本体はどこにあるのかやフリョ・リダの意識はどうなっているのか、誰がゴーレムなのかとか色々と聞きたいことは山ほどあった。


「全問正解や。それにあえてフリョ・リダの事にふれてへんな。多分答えを知っているんやろ、リッチはダークエルフの死体をよみがえらせていたんやで、フリョ・リダたちは全員死んでる。ゴーレムを素体によみがえっているだけや。じきに全員魔力が切れて、形を保てなくなって砂化って奴が起こるんや」

 アカガに全ての答えを聞いて、俺は思わずアカガに宣言通り手を上げていた。

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