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Lv1の剣  作者: 豚野朗
魔法都市
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昔話(名誉と恋)

 アカガに俺がレベル1であると告げると、唐突に気が触れたかと思うほど笑い始めた。

 確かに笑えることかもしれないけれど、そこまで腹を抱えて笑う必要はないと思う。

 しかし何か楽しそうな雰囲気だ。

 俺がレベル1なことに、不思議がったり怪しんだりすることは予想していたが、こんなに笑われるとは思わなかった。

 そしてひとしきり笑って、最期に「あほくさ」と呟いた。


「あほくさって?」

 唐突な意味不明な言葉に、咄嗟に聞き返してしまう。

 あほくさというのは、どういう意味なんだ。

「そのまんまの意味や。あほくさくなったわ。修平、とっとと戻ろうや」

 アカガはそう言って、奥へと続く道から背を向ける。

「な、何言っているんだよ。奥へ行こうって言ったのは、アカガだろ。それにフリョ・リダは、どうするんだよ」

 俺がアカガの背中に向かって言うと、赤い髪をぐしゃりと手で握り、「この先に行っても、フリョ・リダはいないんや」と言った。


 アカガの言葉に俺はさらに混乱させられる。

 唐突に帰ろうとするのは、俺のレベルを見たからだという納得はできるが、そのほかの行動やフリョ・リダがここにいないと断言できる理由も理解できない。

 しかも岩で塞がれているにもかかわらず戻ろうと言っているのも、不可解だ。

 まるで他の道を知っているかのようだ。

 そう、この坑道を知っているかのように。

 いや、でも、そんな事がありえるのか?

 そもそもアカガがフリョ・リダが連れ去られたと言っていたはず。

 フリョ・リダがいないことを知っていたのだとするなら、アカガが言っていたのは嘘っていう事になる。

 それなら、アカガは何故、こんな坑道に俺たちを誘導してきたんだ?


 俺が混乱していると、崩落した場所ではなくその逆側の壁を触ると、そこが突然崩れた。

「さぁ、行こうや」

 アカガは俺に声を掛けながら、中に一人で入っていってしまう。

「ちょ、待って」

 慌ててその背中を追いかけて、一緒に中に入る。


「何だここ?」

 入ってみると、明らかに坑道とは様子が違った。

 そう、まるで誰かが使っているかのような整えられた両側へ延びる廊下だった。

 埃や苔で覆われていた坑道だったが、ここは全く逆でそう言ったものは見られずきれいなままだ。

 壁には等間隔に、明かりが並べられていて、誰かが住んでいるような雰囲気がある。


「こっちや」とアカガは緩やかに上に向かう方向を進んで行く。

「いや、こっちや、じゃなくて、まず説明しろよ」

 後ろを歩きながら、アカガへ少し文句を言う。


 そしてやっと理解が追いついてきた俺は、事態を飲み込めてきた。

 何でこんな所に廊下があるのか。どうして、その入り口を開けられるのか。

 そしてここでどうしてあんな強い魔物が襲撃してきたのか。

 それは奇跡のような偶然出ない限り、すべてをアカガが仕組んだことに他ならないという事に。


 だからこの魔法都市で起きている事件の片棒を、アカガが担いでいるのだと。


 しかしアカガが唐突に正体を明かすような真似をし始めたのかが分からない。

 それにさっきのあほくさという言葉は、何に対して放たれたのだろうか。

 アカガは無言で俺の前を歩いている。

 声を掛けづらい雰囲気があって、どうにもこの沈黙を脱する勇気がない。

 何故アカガが事件に関わっているのかとか、いつから俺を騙していたのかとか、聞きたいことはたくさんある。


 どうやって切り出そうかと迷っていると、「昔話でも、聞いてくれへんか?」とアカガがこちらを見ずに言う。

「昔話?良いけど……」

 やっと訪れた気まずい沈黙を破ってくれる提案に飛びつく。

「昔々、あるところに……」とアカガはまるで子供にでも読み聞かせるような語り口で、俺に昔話を話し始めた。


 *


 昔々、あるところに、二人の少年と一人の少女がいました。

 少年たちと少女は3人仲良く遊んでいました。

 少年たちは好奇心旺盛で、次第に勉強や研究にのめりこんでいきました。

 少女はその勉強や研究へのめりこんでいく少年たちのために美味しい食事を作ってあげていました。

 おかげで少年たちは幼い時から秀才で、有名な学校へ通う事ができました。

 その学校では、少年たちはお互いにトップを張り合うまでに成長しました。

 恋愛感情を覚えるようになると、少年たちは当然少女の事が好きになりました。


 そして少年たちの密かな諍いの種は、少女の事でした。

 少女は少年たちが争いあう事を嫌ったので、それは少年たちの間の小さな約束事でした。

 どちらが優秀か、どちらの研究が進んだか。

 そして少女とどちらが隣の席に座るか、一緒にご飯を食べるかを

 そんな事を競い合い、少女との小さな恋を二人は進めていきました。


 そして少年が青年に変わり、少女が乙女に変わっても、その関係は結局変わりませんでした。

 更に時が進み、青年たちは一つの大きな場に出ることになりました。

 当然、二人は乙女を密かに賭けた。


 それが3人の関係に決定的にヒビを入れる結果になった。


 この賭けに勝った方が名誉も恋も手に入れる。

 そのはずだった。


 しかし賭けに勝った青年は、名誉だけを手にして、二人の元から去った。

 そして残った二人は結ばれました。

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