黒幕動く(リッチ)
「今日は何から何まで、うまくいかなくて困りますね」
ゴジョ―先生ははぁとため息をつきながら、目の前に並ぶリダ派の職員を見る。
現在は、ゴジョ―先生に与えられた魔法学校の私室で、学長がやらかした不手際についての処置を検討していた。
昼前に怒り狂って、魔法学校に入らずに食事へ行ったリダと貴族たち。
彼らは昼過ぎになっても再度、来訪してこなかった。
おそらく未だ無礼を働かれたと思っているリダの怒りが収まっていないのだろう。
この調子だと、いつ復活するのか分からない。
「困りましたね。もう夕方になってしまいましたし、早く見ていただかないと」と言って、ゴジョ―先生はじろりとそこに並ぶ5人の職員たちをにらむ。
彼らは学長と一緒に、貴族を迎えていた人たちである。
「まったく何故、あなたたちは何もせずに眺めていたのですか。学長があんな人間であることは承知していたでしょう。事前に、どうとでも手は打てたはずです」
「そ、それは……」とそこに居並ぶ職員たちは口籠る。
「今日は重要な日なんですよ。あの貴族に研究結果を見せれば、我らの立場も上がるのです。それが分かっていないのですか?」
「わ、分かっております。申し訳ありません。まさか、学長が立場も身分も全く考えないとは思わなくて……」
「ありとあらゆる結果を考えるのが、研究者としての役割ではありませんか?」とゴジョ―先生があきれたように言った。
「それは、そうですが……、申し訳ありません」
一人が頭を下げ、続いて全員が同時に頭を下げる。
「ま、終わったことをあれこれ言ってもどうしようもなりませんね。どうやって連れてくるか考えましょう。今日中に何とか連れてきませんと……。侵入者もどうしましょうか……」
「はい?侵入者ですか?」
「いえ、あなた達には関係のない事です。それに処理が終わった所です」
「そ、そうですか。やはり、リダ様に何か贈り物をして、ご機嫌を取るべきではないでしょうか」
職員の一人がそう進言すると、「準備できますか?」とゴジョ―先生が尋ねた。
「それは、その……1時間くらいあれば、何かワインの良いものでも買う事が出来ます」
「1時間ですか。その後、すぐに渡せますか?貴族と面会するとなると、時間がかかるのですよ。こちら側に怒りの感情を抱いているのでしたら、なおさら……。夜になってしまったら、明日になどとと言われてしまう可能性があります」
「うっ……。それは……。しかし明日でも構わないのではありませんか?」
「明日では困るのですよ」
「な、何故ですか。明日なら、リダ様の怒りも少しは収まっているはずです」
ゴジョ―先生は首を横に振る。
「今日でなければならないのですよ。そのための急な訪問以来なのですから」
「な、何故ですか?そこまで急ぐ必要はありません。ここは安全に動くべきだと思います」
「語っても仕方のない事です」
「仕方のない?」
ゴジョ―先生は立ち上がった。
「ええ、仕方ない事です。とりあえず、あなた達には眠っていてもらいましょう」
「はい?」
彼らが疑問を抱く前に、意識を失ってばたりと倒れてしまう。
「あなた達には、ここで色々な責任を被ってもらわないといけませんからね。そのためにこんな無能な人間どもを飼っていたです。おかげで、学校と言う面倒くさいしがらみにも囚われなければなりませんでした。しかしこれで私はリダの下で自由に研究へ戻れます」
もう聞こえていないが、メイドの土産とでもいうようにゴジョ―先生は倒れ伏した職員たちへ語った。
「残念ながら、魔法学校と言う隠れ蓑を使いながら、最期のイベントをしようと思いましたが、もう無理そうですね。私一人だけなら、彼は閉ざしている門を開けてくれるでしょう」
ゴジョ―先生はぱちんと指を鳴らし、床で倒れている職員たちを部屋のソファへと動かした。
「これから起こることの、全責任を取って頂きましょう。まるでカモの子供のように私の後ろをひょこひょこついてきて、美味しい思いをしてきたのですから、それくらいは簡単ですよね」
ぐっすりと眠りこけている姿に、にやりと笑って、ゴジョ―先生は自室kら出て行った。
そしてリダたちがいる場所へと向かう。
その最後のイベントを引き起こすために。




