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Lv1の剣  作者: 豚野朗
魔法都市
68/206

貴族来訪(学長)

「Yo!ウェルカム、リダ!歓迎するZe!」

「はぁ?」

 貴族の訪問は、最悪のスタートだった。

 陽気な学長の挨拶は、貴族のリーダーたるフリョ・リダの父親の睨むような視線によって砕かれる。

 そして取り巻きの貴族たちも、フリョ・リダの父親が不機嫌となった事を察して、離れた位置で様子を見ていた。


 校門前に止められた馬車から降りてきた貴族たちを、学長は出迎えたが学長のファーストコンタクトは駄々滑りして、校門前はまるで極寒の冬へと変貌していた。

 もう学長側のリダとつながっている職員や貴族リダ側の取り巻きの人間たちも、身動きができないほどである。

 明るい昼前の時刻。

 もう既にぽかぽかと温かくなってきた頃であるというのに、ほぼ全員が自らの冬眠を切願するほどの寒さに襲われていた。


 貴族のリダ家と言えば、大貴族の一つである。

 そして最も貴族の階級や規則に厳しい人間として知られていた。

 彼の前で無礼を働いた人間は、処刑されてしまうことで有名だ。

 だから彼の前では、ほぼすべての人間は礼儀作法を徹底し、ただの一瞬でも気を緩めるなど許されないのだ。

 しかし学長はそんなリダ家の人間に対する常識をすべて無視して、素っ頓狂な挨拶を始めたことに、その場の全員が凍り付く。

 この場にいる人間は、ほとんどがリダ家側の人間だったが、それでも学長の心配を心の中でする人間さえも出てきてしまうほどだ。


 リダはまるで阿修羅のように顔をゆがめ、一目見るだけで怒髪天を衝くほど怒っていることを見て取れる。

 その原因となった学長だけでなく、取り巻きの貴族たちとリダ派の職員さえも身の毛がよだつほどの恐怖に襲われた。

 いや、学長だけは「Hey、もっと陽気に行こうZe!」と周囲の人間から見ると自殺でもしたいのかと思うほどのフレンドリーな事をリダへとのたまう。


 もう周囲の人間は、もうじっとしていられないほどであった。

「り、リダ様、もう昼時ですし、予定を早め、まずは最高級ワインを頂ける店で昼食などはどうでしょうか」

「そ、そうです。まずは腹ごしらえとしましょう。魔法都市のワインは絶品です。魔法都市では、ワインを魔法で醸造しているため香り高いのです」

「わ、私も少し小腹がすいてきたところです。リダ様、いかがでしょう」

 ただでさえ礼儀に厳しく、それに反した人間に過激な処刑を行うリダが、ここまで奇天烈な人間に対して、どんな事を命じるか、それは想像に難くない。

 学長がリダ派に反している行動をとっているとしても、この状況はまずいと判断した。


「HeyHey!そんなことよりも、自慢の生徒たちを紹介するZe!」

 学長はまるでリダを煽るように、ラップ口調をやめない上に、さらに腕を前に投げるようなポーズまでし始める始末だ。

 それを見たリダの姿は、鬼と言っても過言ではないほどであった。

 顔を真っ赤にして、目は見開かれ、恐ろしいほどの魔力が周囲から立ち上り始める。


「り、リダ様、さぁ、早くお乗りください。まずは食事に行きましょう。食事です。早く行きましょう」

 傍にいた貴族がリダの手を引き、馬車の中へ連れ戻そうとした。

 回りの貴族も「そ、そうです。早くお乗りください」とリダに馬車に乗るように促す。

 そして「学長、あなたもまずは、昼食などはいかがですか?というか、食べてきてください」と学長の方にも押さえる人間が出た。

「な、何を言っているんだZe?ぐぁ!」

 学長の方は乱暴に腕を掴まれて、校門から遠ざけられていく。

 これ以上この場にリダと学長を置いておいたら地獄になってしまうと、この場にいる二人以外の人間が思いを共有した。


 リダと学長を早く引きはがさないと、怒りを爆発させたリダが何をするのか、想像することも恐ろしい。

 その考えが、一致した人々の動きは迅速だった。

 学長の態度に頭が沸点を超えた沸点に到達していたリダは、引っ張られるとあっさり馬車へと乗り込んだ。

 頭が怒りで沸騰していたおかげで、リダをうまく馬車に乗せられた。


 そして学長は強引に引きずられて、魔法学校に引き戻されていく。

「何言っているんですか」

「常識的に考えてください」

「時と場合くらいかんがえなさい」

 ぼこぼこに言葉で殴られながら、学長はずるずると袖を引っ張られる。


「待つんだZe!何をするんだYo!」と学長は暴れるが、容赦のない周囲の魔法学校職員によって、学長の部屋へと連れ戻された。

 学長は学長室でぽいと投げ捨てられる。

「学長は、ここでじっとしていてください。というか、今日は出てこないでください、絶対に!」と怒りの声を投げられる。

 そしてバンと扉を乱暴に閉められてしまう。


「No!なんてこったYo!」

 学長は部屋の中央で床に座りんだ。

 閉じられた扉の向こうでは、どたばたと誰かが走り回っている音がする。

 おそらく無礼を働いた学長の後始末をするために、走り回っているのだろう。

 例えリダ派の人間であっても、あれだけのやらかしをしてしまったのなら、リダのご機嫌を取らなければならない。

 今日の訪問も、これからすんなりと行くことはないだろう。


「貴族が何をするか、分からないZe!それが分かるまでは、魔法学校に入れたくないZe!ピョイ教授からの連絡はまだかNa!」

 学長は立ち上がって、窓の外を見る。

 ガラガラと走っていくリダの乗った馬車があった。

 それは大通りを通り、そこから横の道へ入っていく。

 きっと先ほど取り巻きの言っていた通りにどこかで、食事をしに行ったのだろう。


「この魔法都市の食事は美味しいYo!いっぱい食べてくればいいYo!せいぜい時間を稼いでくれYo!」

 学長はにやりと笑った。

 そしてさらに遠くへと視線を向ける。


「やっかいな、ものも持ってきていることだしNe!」

 そこにあるのは、リダ家の旗を掲げたリダ家の私兵たち。

 魔法都市の外で、テントを張っていた。

 ぱっと見で百数十人もいる。

 それは魔法学校への訪問で護衛として、連れてくるほどの兵士の人数ではない。まるで戦争でも仕掛けるかのようだ。


「リダ家が何のために何故来たんだYo!それに私兵を連れてきたのは何が理由なんだZe?」

 学長は窓の外を見ながら呟いた。

 私兵たちはまるで戦いを始めるかのように、装備を整えている。

 魔法都市で、何かの戦いがあることを知っているかのように。

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