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Lv1の剣  作者: 豚野朗
魔法都市
64/206

主人公不在(会話)

「なるほどね。助けようとして、魔力をあげちゃったの。私も悪いことしちゃったわね」

「ハイ。物語では、魔力をあげても強くなるノニ、修平は倒レテ……」

 カノンとアリスは、隣の部屋で向かい合って机に座り話していた。

 カノンから事情を聴いて、アリスは申し訳なさそうな顔をしている。


「魔力酔いね。レベル1の新川には、魔力が強すぎたのよ。カノンちゃんが助けようとしていて、知らなかったのよね。なら仕方ないわよ。新川は運がなかったけど、命に別状はないんだから、大丈夫よ。新川に謝れば、すぐに元に戻れるわ」

「ハイ。謝ってイキマス」とカノンは立ち上がる。

 そして新川のいるはずの部屋へと続く扉に向かうも、カノンが開ける前に、ガチャリとその前に扉が開く。


「カノン、調子はどうかな?」とピョイ教授が扉から顔を出す。

「ピョイ教授、修平二……」とカノンが言うと、「新川君なら、もう帰ったよ」とピョイ教授がカノンに伝える。

「あっ……。修平、イナイ?」

「あぁ、帰っちゃったよ。何かあったのかい?」

「私、謝らナイト……」

「そうか。まぁ、明日もあるからその時に謝ればいいんじゃないかな。今日の所は、諦めよう」

「ハイ」

 カノンは元の席に戻った。

 どこかしょぼんと気が沈んでいるように見える。


「私と遊びましょう。ほら、これなんてどう?チェスよ」

 アリスはカノンの機嫌を直そうと、近くにあったチェス盤を取り出して机の上に広げる。

「ハイ。ヤリマス。明日、修平は来ますカ?」

「来るに決まっているじゃない。あっ……」

 アリスは駒を並べる手を止める。

「どうしましたカ」

 手が止まったアリスを心配して、カノンは尋ねた。


「しまったわね。下水道で研究所を見つけた件を、新川にいう事を忘れていたわ。襲うときには、一緒に来てもらいたかったのに」とアリスはぼやいた。

「そういえば、そうだったね。下水道の中の研究所か。私も長年この魔法学校で務めているが、そんなものがあるなんて知らない。あんなくさい所に研究所を作るなんて、とんでもない奴がいるよね」

「結界があったから、それで匂いを防いでいるのかもしれないわね。とても強力な結界よ。渡井でも新川の剣がなければ、壊せないほどの強い結界。あれを作れる人間も魔物もほとんどいないわ。それこそ、幹部レベルかもしれないわ。なんか、凄くきな臭くなってきたわね」

 アリスとカノンは駒を並べ終わって、さっそく試合を開始する。

 コトコトと駒を動かす音が響く。


「強い魔物の出現と砂化事件。それがこの魔法都市で起きている事件だ。それに加えて、フリョ・リダの失踪と下水道の研究所。つながりそうで、つながらないな。まったく別の事件のように感じる」

 ピョイ教授は近くの椅子に座って、説明しだす。

「研究所は強い魔物を作っているんじゃないかしら。でも砂化については、何故フリョ・リダのグループを狙っているのか分からないわ。わざわざ連続で狙っていたら、警戒されるのは当然なのに、何故か同じ魔法であの人たちを殺して言っているわね。バレバレなのに、そんなにつかまらない自信があるのかしら」

 連続でフリョ・リダのグループを襲っている砂化の魔法使いについて、アリスは考察する。


「敵対勢力なのかもしれない」とピョイ教授が言った。

「敵対勢力?研究をしている誰かに敵対している誰かさんがいるってこと?」

 アリスが訝し気にピョイ教授に聞く。

「そう考えたら、研究所と砂化事件がつながるんじゃないか?」

 ピョイ教授がははっと笑う。

 しかしその顔はパッとしない。


「そんな人たちがいるって、ピョイ教授は思っているの?」

 アリスがピョイ教授に尋ねる。

「いない。そう思っている」とピョイ教授が断言した。

 先ほどの発言を否定する言葉だ。


「そんな奴らがいたら、私が気付く。強い魔物が出始めてからずっと追っているんだ、こんな連続殺人で砂化の魔法を使うような魔法使いがいたら、私が当然気付く。でもそんな気配はかけらもなかった。この事件を起こしている犯人しかいない」

「なぜ断言できるの?」とアリスは駒を進めながら、ピョイ教授を淡々と問い詰める。

「研究者としての勘だ。これだけは信じて欲しい」

 ピョイ教授は自信満々に言う。


「一番曖昧な部分を、何でそんなに自信ありで言うのかしら。根拠がなさすぎるでしょう」

 呆れたようにアリスが言う。

 しかしカノンとのチェスの手は全く緩めない。

「もし一つの事件するなら、その研究者、一番怪しいのがゴジョ―先生よね、その人が下水道の研究所で強い魔物をフリョ・リダのグループと共同して作っているのよね。でもそのゴジョ―先生は、フリョ・リダたちを砂にして殺して言っているっていう事でしょう?何故、そんな事をするのよ。しかも魔物まで、砂にしている。意味が分からないわ」

 アリスは肩をすくめて、ため息をつく。


「砂にするトイウのが、目的トカ」とカノンが口をはさむ。

「そうねぇ。だとすると、強い魔物が現れだした件とつながらないのよね。何故、砂化の魔法で砂にするのに強い魔物を作るの?かけられたら、確実に死んでいるんだから強くする必要はないのよね。作るとしても、魔法に対する耐性をつけるべきでしょう。でも戦ってみて、フィジカルの強さは会ったけど、魔法に対してはざるだったわよ」

「ソウデスカ」

 アリスの言葉に否定され、カノンは少し肩を落とす。

 それを見て、アリスは慌ててフォローする。

「カノンちゃん、良い意見だったわよ。でも私の戦ってきた魔物と会わなかっただけだから」

「流石のアリスも、私のカノンにはかなわないのかな」とピョイ教授がニヤリと笑う。


「もう……。カノンちゃんが最近、表情が豊かになってきたから、そうなっちゃうのかも。最初は、遊びをするゴーレムのように見えていたけど、今は少し感情の少ない人間のように見えるわ。さっきも新川に魔力を渡して、魔力酔いを起こして、まるで人間みたいにうろたえていたわ。もし最初に会ったときだったら、冷静に魔力酔いを見抜いていたと思うわ」

「見抜いて、イタ?」

 カノンが戸惑いながら、アリスの言葉を繰り返す。

 まるでその言葉が信じられないとでもいうかのように。


「そうよ。新川があんなことになって動揺しちゃったから、慌てちゃったのね。だからあんな風に抱きしめちゃったんでしょ」

「それは……分かりマセン。修平が変にナッテ、胸がキュッとナリマシタ。それで何も分からなくナッテ、修平に怒ラレルト……ナッテ」

 カノンは目を伏せながら、細い声で言った。

 その様子を見ながら、ピョイ教授は「興味深い」と呟く。


「私、変にナッテいる?壊れているノデショウカ」

「いいえ。カノンちゃんは成長しているのよ。それはとても大事なものだと思うわ」

「大事なモノ……?」

「そうよ、大事なモノ。大事するのよ」

「大事二?これを……?どうすれば、良いのですカ」

 カノンはアリスに尋ねる。


「そのままでいればいいのよ。今、感じている事を素直に受け止めれば良いのよ。難しく考えずに、ありのままでいればいいの。例えば、新川の事、どう思っているの?今さっき抱きしめていたじゃない。どうだった?」

「ソレは……」

 カノンは何かを言おうとして、すぐに口を閉じてしまう。

「難しく考えないで、出てくるものを言えばいいのよ。新川の事をどう思っているの?」

 口を閉ざしたカノンに、アリスは優しく促す。


 そしてアリスに促されたカノンは、恐る恐ると言ったように口を開き言った。

「王子様」

「王子様?あのカノンちゃんの好きな?」

「ハイ」

「なるほど。新川とあの本を一緒に読んでいるんだもんね。そう感じちゃうのも、当然かもしれないわね」

 アリスはうんうんとうなずきながら、新川を王子様と呼ぶカノンについての推測を始める。


「カノンちゃんはメイドね。格好もそれだし。クスクス、お似合いかもしれないわね」

「新川と私は、お似合イ?」

「お似合いよ。でもカノンちゃんはともかく、新川はちょっと王子様感は弱いかな。時々は良い所もあるんだけどね。そういえば、カノンちゃんを外に出してあげるなんて約束をしていたところは格好いいわよね」

 しかしアリスの言葉はカノンに届いていない。


「新川と私がお似合イ……」とカノンは何度もつぶやき、上の空になっていたからだ。

 そしてアリスとカノンのチェスは、カノンの大敗で終わった。

 まるで集中できていないようで、最終番はミスばかり繰り返し、序盤の拮抗状態が嘘のようにぼろ負けをしたのだ。


 ピョイ教授はそんなカノンを見つめながら、「興味深い」と呟いた。

 そして同時に「忘れてた!」と叫ぶ。

「何!?びっくりしたぁ」とアリスが言った。

「明日訪問に来る貴族は、フリョ・リダの父親とそれに連なる貴族たちだって、教えておくのを忘れていたよ」

「それって……」

「そう、魔法学校に多額の寄付をしてくれている貴族さ。ゴジョ―先生側の人間だ。きっと新川君のことも知っているはずだから、気を付けるようにって言おうとしていたのに、完全に忘れていた」

 ピョイ教授は頭を抱えた。


「なら、私が警備するわよ。もう下水道の研究所は見つけたんだし、もう乗り込むまで待機でしょう?」とアリスが提案する。

「もちろん。そうするのが最善だけど、研究所の方に先に乗り込んでほしい。急だから準備するのに、明日の昼までかかるが結界を破るのにぴったりな爆弾がある。それを使って、もう乗り込んで欲しい。これ以上、被害をデカくできないというのが、学長の判断だ」

 ピョイ教授はアリスの提案を首を振って否定し、そして急襲をかけることを宣言した。


「私は大丈夫だけど良いの?新川がどうなるのか分からないわよ」

「それはもう、明日の朝、私が早起きすればいいだけだ。学校に入る前に捕まえて、説明するよ。それだけで済む話さ。危険ならば、研究室に引っ張ってきて、ここに閉じこもればいいさ」とピョイ教授は危機感もない感じで言った。

「分かったわ。新川の方は任せたわ。じゃあ、私は襲ってくるわね」

「あぁ、明日で解決してしまおう」

 アリスとピョイ教授は、ニヤリと笑いあう。


 決戦の時は近い。


 *


「明日か……」

 月光の下、ごとごとと揺れる馬車の中、ワインをたしなみながら、足組をしながらつぶやく。

 金色のひげを蓄え、目つきが鋭い。

 豪華な金糸で縫い付けたローブをまとっている。

「はい。明日の昼には、魔法学校へ到着します」

 そしてその人物の周囲にも、同じようなローブをまとった人が囲むように向き合ったソファに座っている。


「あの方も、唐突に来いとは、常識知らずも甚だしいですねぇ」

「ふん。それはしょうがないだろう。人間ではないのだから」

 ワイングラスを傾け、中身を飲み干す。

「実力は十分ある。あの出来損ないを、まさかあれほどの魔力量にすることができるとは。あの出来損ないですら、あれだけ成長させられるのだ。俺の兵にすれば、どれほどのものになるのか」

「ええ、ええ。確かに目を見張るほどの成長でした」

 手揉みをしながら、首を縦に振る取り巻き。


「あいつは、俺を利用しているようだが、最後に笑うのは俺だ」

 グラスにワインを継がせ、「あいつの研究とやらを、いずれすべて奪ってやる」と宣言し、グイとワインを飲み干した。

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