折り紙(折々)
放課後になり、いつも通りカノンと遊ぶ。
今回は折り紙だ。
折り紙の本を見ながら、カノンと一緒に作る。
そして折り紙に使う紙もちゃんと店で売っているらしい。
カノンに頼まれてピョイ教授が大量に買ってきて、二人でさばききれないほどの量が机の上に並んでいる。
一つ二つのセットで良いのに、何故十個も二十個も買ってくるんだ。
昨日、自分をカノンの父親と言っていたけど、頼まれたらいくらでも買ってあげる所は本当に子煩悩な父親のようだ。
折り紙は俺の方が、日本人であるだけあって、最初の方はカノンに教える役割を担えていたが、ページをめくり難しくなっていくにつれて、カノンの方がうまくなっていく。
機械のような正確さで、折り紙を折る。
俺は最初にカノンへ教えていたとは思えないほど、折り紙をぐちゃぐちゃに折りながら、カノンの折り紙の後塵をいく。
これはもうレベル1とか、そういう物ではなく、単なる俺の手の器用さの限界だった。
鶴を折るまでは、スムーズに行っていた。
小さいときに折り紙を折ったことがあるし、意外に覚えているものだなと自分の手の動きに感心した。
カノンが俺の手を見て、真似をしている所を見ると、妹と兄の関係のように感じてむず痒かった。
しかしそれから一気に、小さい範囲を折り目をつけながら折り込んでいく折り紙に変わっていく。
俺は段々とその緻密さと力加減を必要とする作業に、苦しまされていく。
しかしカノンは一度おり方を覚えてしまえば、その緻密さなど大して変わらない動きのようで、あっという間に適応していってしまう。
そして今は、何回も折り目をつけてあてを作るような折り紙に挑戦している。
完成図は、立体のドラゴンのようなものらしい。
完全に俺は置いてけぼりになって、カノンが集中して折っているのを見ているしかない。
そして自然と昨日のピョイ教授と会話した内容を思い出す。
カノンが心を持っているか否かという話についてだ。
今、カノンは何を考えて、折り紙を折っているのだろうか。
「カノン、折り紙は面白いか?」
「面白いデス。あと少しでデキマス」
カノンの手の中で着々と形ができていく。
ページをめくるにつれて、一枚の紙から違う形に変貌して、見本のドラゴンの形へと近づく。
そして数分後には、「デキました」とカノンが手の中にドラゴンを立たせて、俺に見せてくる。
「できたのか。これはすごいな。本物みたいじゃないか」
ちょこんと立つピンク色の紙でできたドラゴン。
可愛いが、少しだけ恐ろしく感じる。
もちろん、それは邪悪龍ディアボロの事だ。
災厄のような恐ろしい力を持ったドラゴン。
あの戦いを思い出してしまう。
「どうしましタカ?どこか変デシタカ?」
カノンが俺が押し黙ったのを変に思ったのか、顔を近づけて俺を覗き込んできた。
「いや、何でもないよ。折り紙のドラゴンが、上手でさ、感心していたんだよ」
「ソウデスカ。次のページの物を作リマス」
そう言って、折り紙の本をめくる。
次の折り紙を始めようとしていた。
「カノンは、何か作りたいものはないか?この折り紙の本にないものでさ」
ふとそんな事を聞いてみた。
心がないというピョイ教授の話から、何かカノンが自分から作りたいと思う物はないかと思ったのだ。
折り紙はカノンは遊ぶのは初めてだし、俺もピョイ教授も何も言っていない。
こんな時、カノンはどんな答えを俺に伝えてくれるのだろうか。
そう期待を込めて、カノンの答えを待つが、一向に返事はない。
そして最後に「分かりマセン」と答えた。
「修平は、何を作りたいデスカ?」とカノンは俺に聞いてきた。
俺の話を聞いて、それを参考にしたいという所だろう。
やはりカノンに心があるという証明はできないのだろうか。
自分から何かを作りたいというのは、カノンには考えることはできないのだろうか。
何とかピョイ教授の思う心と言う物をカノンの中に見つけてあげたいが、どうすればできるだろう。
「俺は、カノンを作ってみたいかな」
「私デスカ?」
頭の中で別の考え事をしていて、目の前のカノンを見て、答えてしまった。
自分が何を言ったのか、カノンが不思議そうに繰り返したのを聞いて、やっと理解する。
カノンが欲しいなんて、まるで変態のようじゃないか。
「あっ、いや、ちが……」
はっと自分の発言の変態性に気付いて、言いなおそうとするも、「修平は私の折り紙が欲しいノデスね。分かりマシタ。ツクリマス」とカノンは俺の訂正の言葉を聞く前に、折り紙に取り掛かる。
「いや、カノン、今のは違うんだ」
俺が訂正しようとカノンに言うも、カノンは聞く耳を持たない。
折り紙をさっそく折り始めている。
素っ頓狂な事をやるが、基本的に頭のいいカノンは、既にこれまでに作った折り紙からの知識を使って自分を作る算段が付いているのだろう。
淀みなくカノンは手を動かして、紙を折って当たりをつけ始めている。
このまま続けさせて誤解されるのも嫌だが、無理に止めるのも気が引ける。
しかしカノンが作るカノンがどんな風に出来上がるのか見てみたい気がする。
でもメイド服と同じように、またカノンに誤解が生まれてしまう。
俺がカノンにどう対応するかうんうんと悩んでいる内に、時間は過ぎてしまった。
そしてカノンの「デキました」という声で、俺は現実に戻される。
俺に差し出される掌に乗る折り紙は、カノンの特徴をよくとらえていて、とても出来の良いものだった。
そう、わざわざ巨乳の部分を折り紙で立体化して再現し、恥ずかしげもなく男の俺に見せてくる美人巨乳メイドに俺は苦笑いを浮かべて、「よくできているよ」と答えるしかなかった。




