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Lv1の剣  作者: 豚野朗
魔法都市
59/206

フリョ・リダ(グループ)

 昼休みに生徒会室に行って中を覗いてみると、いつも通り生徒会長とユキ先輩がいた。

 そしてフリョ・リダのグループもいる。

 端っこの方で、しゃがんでぺちゃくちゃとしゃべっているが、どこか小さく見えた。


 何故だろうと思って、注意深く見てみると、すぐにそう見えた理由が分かった。

 フリョ・リダがいなかった。

 いつも机の上に座って、見下ろすようにしてしゃべっていたので、どこか大きく見えていたのだ。

 だけど今はフリョ・リダがいないから、小さくみえているのだろう。


 フリョ・リダはどうしたのだろうか。

 今日は休みだったり、病気になったりしたのだろうか。


 学長にフリョ・リダのグループが砂化事件の犯人に狙われているかもしれないから、できるだけ気にかけて欲しいといわれている。

 俺が努力するだけで助かるなら、少しでも手を貸せたらと思う。

 小さく深呼吸をして、フリョ・リダのグループへと近づいていく。


「お、おい。修平、なにやっているんだ」

 背後でアカガの戸惑ったような声が聞こえた。

 俺が恨みを持っているであろうフリョ・リダのグループに近付くのがおかしいのだろう。

 アカガには説明できないのが、心苦しい。

 だけど砂化事件を解決するためには、目標になっているこのフリョ・リダのグループに近付くのが最も有効な手段だ。

 犯人を見つけられる可能性もあるし、砂化の魔法を人目のあるところで使うのは抵抗があるだろう。

 事件を早く収束させるためには、こうするのが一番だ。


「こんにちは。フリョ・リダは今日はいないのか?」

 できるだけ明るく言って、警戒されないように気を付ける。

「あぁん、何でお前に言わなきゃいけないんだよ」

 グループの一人に声を荒げて凄まれた。

 何故不良っていうのは、こんなに怖い顔をして、怒鳴ってくるのだろうか。


「おい、やめろ!……フリョ・リダは分からねぇんだ。金曜日のあたりから連絡が取れないんだ。今日も魔法学校に来ていないみたいだ」

 グループの中の一人が、俺を怒鳴ってきた男をたしなめて、フリョ・リダについて教えてくれた。

 フリョ・リダが金曜日からいない?

 3日間もフリョ・リダと連絡が取れないなんて、大丈夫なのか。

 もしかして既に砂化事件に巻き込まれてしまっているんじゃ。


「フリョ・リダの事は警察に言っていないのか?」

 俺が言うと、「言ってねぇよ。フリョ・リダが突然いなくなることなんて、ざらにある。突然消えて、突然戻ってくる。そんな事を気にしていたら、あいつとつるめねぇよ」と反論された。

「そんなに何度も何日も開ける時があるのか」

「あぁ、もともとあいつは実家に時々戻るときがあるからな。俺たちに一言残すこともあるし、連絡もしない時もある。だから、あまり気にしてなんていられないんだよ」

「今回もそうだっていう事か?フリョ・リダが実家にいるはずなのか?」

 俺の質問に、金髪の男は首を振った。


「いや、最低でもあいつが魔法学校を休むなんてことはあり得ない。なんだかんだ、あいつは魔法使いであることを誇りに持っている。だから魔法学校を休むなんていう事はないんだ」

「じゃあ、何かあったってことか?」

「そうだと、俺は思っている。警察には魔法学校が終わってから、行こうと思っているんだ。それまでにフリョ・リダが来ればいいし、来なかったら本当に行方不明か何かの事件に巻き込まれたんじゃないかと思ってる」

「なるほど。フリョ・リダが来なければ、警察に捜索してもらうと。でもそれは遅くないのか。もう誘拐されていたりしたら、遅くなったら手遅れになるかもしれないんじゃないか」


 助けようとしている人が、既に巻き込まれていたなんてとんでもない。


「心配ねえよ。お前に負けたけど、あいつは強い。襲われたからと言って、何もしないなんてことはあり得ねぇ。それにあいつが襲われて、抵抗したらあのド派手な魔法で都市のどこからでも見えるはずだ。見えないってことは、襲われていない。あいつが望んで、姿を見せないだけだ。余計なことをしたら、キレられるぞ」

「それは……」

 確かに戦った自分なら、フリョ・リダの強さを思い知っている。

 あの火の魔法の連打は、普通に強かった。

 フリョ・リダが戦って負けるなら、それはもう派手になるだろう。

 俺の時も派手な大爆発で戦いは終わった。


 でもフリョ・リダよりも強い奴なんて、いくらでもいる。

 例えばアリスとか、これまでに戦った魔王の幹部とか。

 そいつらに襲われた場合、手も足も出ないんじゃないか。

 しかしそれを伝えるには自分の素性を説明しなければいけないが、ピョイ教授との約束があるためできない。

 フリョ・リダ対策を早めにしてもらう事はできないだろうか。


「フリョ・リダが学校に来ていないっていうのは、本当かい?」

 生徒会長が俺たちの話しかけてくる。

「あぁ。いつものことだよ。気にすんな」

「そうはいかない。生徒会長である僕が聞いた以上、生徒の無事を最優先に考える。先生に連絡して、警察に通報してもらうよ。それに僕が通報したっていえば、君たちは怒られないだろう」

「ちっ、分かったよ。勝手にしやがれ」

 生徒会長の説得をすると、すぐに男は納得した。


「じゃあ、僕は先生に伝えに行ってくるよ」と生徒会長は席を立つ。

「生徒会長が腰を上げるほどの事なんか?」

 そして唐突にアカガが口をはさんだ。

「アカガ?」

「フリョ・リダはもともと勝手にいなくなることも多かったんやろ。本当に事件が起こったとは限らいやろ。警察に通報なんてしたら、大事になるで。もう少し情報を集めてからでも良いんやないか?」

「それはそうだけど、何かあってからでは遅いだろう。そもそもフリョ・リダが自分で隠れているとしても、それは本人の原因だ。こちらが責められるいわれはないよ。だから言ってくるよ」

 そう言って、生徒会長は扉から出て行った。


「アカガ、どうしたんだ。あんなことを言うなんて」

「それはそうやろ。あいつがどういうやつか、知っているやろ?警察に通報なんてしたら、どれほど起こるか分かるやろ」

「確かにぶちきれるかもしれないけど、万が一もあるんだから仕方ないだろ。これが最善の策だよ」

「せやろか?頭に血が上っているかもな。オレはちょっと外に出てくるわ」

 アカガは生徒会長の後を追うように、生徒会室から出て行ってしまった。


「何だったんだ?」

 アカガが出て行った生徒会室で、俺は唐突に切れたアカガの様子に呆然としていた。

 あんなことを言うような人ではないと思っていたのに、何か過去にあったんだろうか。


「ありがとな」

「はい?」

 背後から突然お礼を言われて、疑問と共に振り返る。

 さっきまで俺と話していた男が、お礼を言ったのだ。

 照れているのか、頬をぽりぽりとかいている。


「通報は生徒会長がしているから、生徒会長に言った方が良いよ」

「いや、それだけじゃねぇ。あの時、砂になっていくあいつを助けようとしてくれただろ」

「あれは咄嗟にしただけで、それに全然助けられなかったし」

「助けようとしてくれただけで、お礼を言う価値はあるだろう。フリョ・リダは切れていたが、俺は感謝しているぜ」

 素直にお礼の言葉を言われると、照れてしまう。

 視線を窓の外に逸らす。

 窓の外は穏やかな晴れの日が見える。

 外の木には、小鳥が止まって気持ちよさそうにさえずっている。


「俺たちはさ、あいつと同じ落ちこぼれの貴族なんだ。魔力がなかったり、才能がなかったり、いろんな理由で見放されたんだ。だけどフリョ・リダは俺たちに居場所をくれた。だから俺たちは実はフリョ・リダが心配なんだ。あいつが怒るから、警察に通報は渋っていたけど、何回も俺たちの間で話していたんだよ。だからありがとう」

「実際に通報しているのは、生徒会長だけどな」

「それでも、お前が話してくれたからだよ。フリョ・リダの目があるから、あいつがいる前では協力できないけど、何かあれば手伝うぜ」

 ぐっと親指を上げて、俺に向けてきた。


 少し怖い奴だと思っていたが、意外に良い奴なのかもしれない。

「あぁ、何かあったら、手伝ってくれ」

「もちろんだ。俺の名前は、センダイだ」

「よろしく」

 俺はセンダイと握手をした。


 学長にお願いされて声をかけたが、センダイと言う協力者を得ることができた。

 フリョ・リダのグループの中に協力者を得られたことは、砂化事件でとても大きい情報源を得られる。可能性がある。

 砂化事件の解決への大きな一歩を踏み出した。

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