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Lv1の剣  作者: 豚野朗
魔法都市
52/206

噂(広がる)

 次の日に教室へと登校すると、人だかりができていた。


 何があったのか分からないけど、その人だかりに交じって中を見てみようと近付く。

 すると「あっ、いた!」という声が上がる。

 誰がだいたんだと思っていると、その声を上げた女生徒が俺を指さしているのが見えた。

 そしてその人だかりのすべての瞳が一斉に俺に向く。

 まるでホラー映画の一場面のような異様さに、思わず足が止まった。


「魔法実習で、あのフリョ・リダに勝った新川っていうのは、こいつか!」

 人だかりの中の男子生徒が俺を見て言った。

「そうだよね!」

 食い気味で指をさしてきた女子生徒が俺に確認をする。


「そ、そうですけど、俺、何かやっちゃいましたか?」

 近付けられる顔から逃げるように、のけぞりながら答える。

 すると女子生徒の後ろの人だかりから、おおと歓声があがった。

「やっぱり!そうだった。凄いね、君、あの憎たらしいフリョ・リダに勝っちゃうなんて!」

「マジか。全然魔力があるように見えないけど。あいつに買っちまったのか」

「一回も魔法を使わなかったって本当か?」

「いや、火の魔法を使ったって聞いたぞ」

「フリョ・リダと同じ、火の魔法か?」

「いや、煙の魔法を出していたって聞いたよ」

「爆発したって聞いたけど」

「じゃあ、やっぱり火の魔法を使ったの?」

 人だかりの中で話が進んでいく。


 自分が火の魔法を使ったことになっていっている。

 これが噂話に尾ひれがつくという事なんだ。

「実はフリョ・リダよりも魔力量が多いんじゃない」という話し声まで聞こえてくる始末。

 いや、俺はレベル1だし、魔力量も一番弱い魔法を使う事も出来ないくらいに弱いのに。

 それにフリョ・リダよりも魔力量が多いとか強いとかいう噂話が広がったら、もしかしたら力試しをしたがる人間に目をつけられてしまうかもしれない。

 そんな事になったら、命がいくつあっても足りない。

 というか、前情報アリのフリョ・リダにもぎりぎりだったのに、そうなったら即死する。


「ちょっと待……」

「おい。ここで溜まっていないで、早く教室に戻りなさい」

 俺が訂正をする前に、先生が来て人だかりを散らしてしまった。

 やってしまった。

 誰かに話をしておかないと、このまま噂話が広がってしまったら、俺はどうなってしまうんだ。

 しかし無情にも俺が話をしようとする前に、人だかりは雲散霧消してしまう。


「もう、なんなんだ」

 自分の席について、ぼやく。

「ははっ、大変やったな」と隣の席のアカガが慰めてくれる。

 また不要な危険を呼び寄せてしまったような気がする。

 フリョ・リダの件で懲りたのに、乗り越えたと思ったらまたこれだ。

 あいつ以上の強さの奴が来てしまったらどうしようか。

 でもあいつ以上って言うと、魔力量一位と二位か。

 たしか魔力量一位はハカナイ・ハクで2位が生徒会長だったはず。その次がフリョ・リダと。

 魔力量一位のハクは、臆病な感じがあって、進んで戦いそうな雰囲気はない。

 生徒会長の方は、さすがにいきなり襲い掛かってこなさそうな気がする。


 だとしたら、逆に4位五位の方が脅威か?

「アカガ、魔力量の4位と五位って誰なんだ。一位から3位は知っているけど、4位と5位は知らないんだけど」

「4位と5位か……。4位は置いておいて、5位は修平も知っているんやで」

「え?うそ、このクラスの誰かってことか?」

「いや、2,3日前に砂になった、あいつや」

「あいつが……」

 名前も知らない不良学生の一人。


 死を恐れながら指の先から砂になっていった男。

 あの名前も知らない不良学生が、そんな凄い奴だったとは。

 それなのにあんなことになってしまうとは、人間どんな事があるかわからない。


「そういえば、砂になる事件ってどうなっているんだ?警察とか学校とかの方で調査するって話だけど、調査している気配とかないんだけど。進んでいるのか」

「進んでいるらしいんやで。なんか、先生は職員室で忙しくしているで」

「なるほど。一応進んではいるのか、見えていないだけで」

「せやな。生徒会長も忙しそうやで。先生に協力して、調査しているみたいで」

「そうなんだ。悪いな、一昨日も昨日も手伝ってもらっちゃったし」

 生徒会長にはいろいろとして貰っちゃっていたな。

 買い物の付き添いとか火の魔石とか。


「明後日には、一緒に出掛けるんやから、その時にお礼でも言えばいいんやない?」

「そうだな。それと生徒会長に何かお礼を渡そうか。アカガは生徒会長が何が好きか知っているか?」と聞くと、アカガは腕を組んで考え込んだ。

 生徒会長の好みはそんなに難しいのか。

 それとも何か俺に伝えるのに問題があるのか。


「オレはたこ焼きが好きやで」

「いや、お前の好きなモノじゃないから。生徒会長の好きなものだよ。何か分からないのか、生徒会で一緒なんだろう」

「そうはいってもやなぁ。プライベートな話はあまりしないんや。無難に文房具とかでええんやない?」

 文房具か、生徒課長は真面目そうだし、優しそうだからそれでも喜んでくれそうだな。


「文房具で良いか。文房具ってどういうのがあるんだ?」

 ボールペンとか消しゴムとかあるのだろうか。

 どんなものが高級品なんだろうか。

「魔法ペンなんてどうや。魔法でインクを作って、それで魔力が続く限りかけるんやで。どうや、よさそうやろ」

 なんと魔法ペンなんて言うものがあるなんて。


「良さそうだな。それにしよう。どこで売っているんだ?」

「前回言っただろうあの魔法道具店で買えるんやで。また一緒に行かんか」

「いや、今回は良いよ。場所も分かったし、アカガにずっと付き合ってもらっちゃって悪いからな」

「オレは大丈夫やで」

「今日は、遅くなると思うから、良いよ」

 学長に放課後会わなければいけないのだ。


 軽く話すだけと聞いているが、どれくらい遅くなるのか分からない。

 だから今回の買い物は、一人だけで行くことになる。

 街の中で暴れるような危ないやからはいないだろうし、一人でも問題はないだろう。


 その前に学長とカノンについて説明しなければならない。

 外の世界を見てみたいというカノンの願いを叶えるためには、俺が学長に安全だと納得してもらうためにより良く聞こえるように説明しなければ。

 気を引き締めて行こう。


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