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Lv1の剣  作者: 豚野朗
魔法都市
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魔法実習開始(救いの手)

 翌日、俺は陰鬱な感情で起きた。


 昨日おきた事件のせいで、目的の物が買えなかったのだ。

 せっかく思いついた魔法実習をこなす策だったのに、俺はほぼ無策でフリョ・リダに立ち向かわなければならなくなってしまった。

 家に帰ってからも、考えてはいたがあれ以上に効果的な策は思いつかない。

 せいぜい頑張って逃げ続けるくらいだ。

 しかし逃げてどうにかなったのは、アリスがいたからだ。

 今回はアリスはいない。


 たった一人で戦うしかない。


 魔法学校へ行く準備をしながら、気を重くする。

 ボコられるまでならいいが、死にかねない。

 いっそのこと、ずる休みでもして休んでしまおうか。

 ベットの上に飛び込んでため息をつく。


 さらに言えば、人の死もこんな短いスパンで見てしまったことも気分を重くする一つだ。

 しかも俺には助けることはできなかった。

 人の死を見るたびに、こんなにも落ち込んでしまう自分の弱さにがっかりする。

 しかも逆に自分が死ぬかもしれない。


 その時、コンコンと扉がノックされた。

 誰だろうか、こんな朝早くから俺の所に来る人間なんている訳ないのに。

 そう思っていたが、「起きてんやろ!一緒に学校行こうや」と言う声ですぐにそれが誰か分かる。

 アカガだ。

 おそらく昨日作戦の要となるものが買えなかったことで心配してきてくれたに違いない。


「すぐに準備するよ」

 俺は扉越しにアカガに声を掛ける。

「おう、元気そうやな」

 せっかく来てくれたのに、俺が落ち込んでいる所を見せる訳にはいかない。

 そして制服にバタバタと着替えて、準備済みのカバンを持つ。

 扉を開けて、外に出る。

「よっ」と軽く手を挙げて、快活な笑顔を向けるアカガがいた。


「おはよう」

「おはようさん。早くいかんと、遅刻するで」

 アカガの声に促され、俺は魔法学校への道を走る。

 例え、何が待っていようとも、立ち向かうしかない。


 *


 魔法学校の校門をくぐると、すぐにアカガは「俺は少し寄るとこあるんや。先に教室に行ってや」と言ってどこかへ走っていった。

 唐突に取り残されてしまって、少しの間呆然とする。

 ここまで一緒に歩いてきて、そんな素振りを微塵も見せなかったから少し見放された気分になった。


「遅かったじゃないか。いつ登校してくるかとやきもきしていたよ」

 玄関の方から生徒会長が歩いてきた。

「おはようございます。何かありましたか」

「もちろん、ほら、君の探していたものだよ」

 生徒会長はその手に持っていた袋を俺に差し出した。

 何かごつごつとしていて、まるで石が入っているかのような。


「もしかして、これって……」

 それを受け取って、急いで中を確認する。

 袋の中には、赤く光るルビーのような石がパンパンに入っていた。

「ああ、火の魔石だ。昨日買えなかっただろう。先生方に当たって、火の魔石を持っていないか確認してみたら、都合よく持っていてね。快くもらう事が出来たよ。さぁ、もらってくれ。今日の魔法実習で使うのだろう」

「はい。良かった。これがあれば、なんとかなります。ありがとうございます。生徒会長は、俺の命の恩人です」

「そこまでの事はしていないよ。ただできることをしたまでさ」

 生徒会長は謙遜するが、俺にとっては本当に命の恩人だ。


 この魔石がなければ、きっと俺はどうにもできないから。

 それでもまだ勝率が五分五分と言えないのが、何とも世知辛い所だ。


「そろそろ授業が始まってしまうね。僕も自分の教室に戻るよ。君も早く教室に行くんだよ」

「はい」

 生徒会長は俺に背を向けて、玄関の方へ戻っていく。

 俺も教室に向かおう。

 これで悩みはなくなった。

 後は、全力で戦うだけだ。


 *


 魔法実習の時間となった。

 魔法実習では、昨日言った魔法訓練場の中に順番に一対一の魔法を使った戦闘を行う。

 もちろん、安全のために魔法訓練場の中と外には魔法で結界が張られ、防音と魔法防御は万全らしい。

 危険な行為や明らかな違反行為は先生によって戦闘は止められるが、俺にとってはどんな魔法も致命傷になる。

 レベル1で、魔法も使えないから。


 俺が座席に座って観覧していると、わざわざフリョ・リダが不良たちを引き連れて俺の所に来た。

「逃げなかったみたいだな。それだけは褒めてやるぜ」

 人を馬鹿にしたような口調で言ってくる。

 逃げそうになったのは、心の中に置いておいて、負けじと言い返す。

「逃げる必要なんてないからな。吠えずらをかくのはどっちだろうな」

「あぁん!なんつったぁ、今!」

 顔を真っ赤にして、フリョ・リダは凄まじい声で叫んだ。


「俺は負けないって言ったんだよ。耳も悪いのか」

 更に畳みかける。

 子供のような煽りなのに、フリョ・リダはあまりにも簡単に乗ってきた。

「あぁ!この俺様に!よくも!」

 座っている俺に顔を近づけてきて、メンチを切る。


 俺も負けじと睨み返す。

 ここで負けては煽った意味がない。

 心の中では、その怒りっぷりに少しビビり気味だけど。

 怒らせておいて、冷静な判断をさせないというのも戦略だ。

 だからここではじっと耐えて、フリョ・リダを怒らせ続ける。


「ちょっと、そこで何をしているの!そういうことは、魔法実習の中でやりなさい!」

 魔法訓練場を整備している先生にも、俺とフリョ・リダのいさかいは聞こえていたらしい。

 あれだけ大声をフリョ・リダが出していれば当然か。

「ちっ!丸焦げだけじゃゆるさねぇ!」

 フリョ・リダは舌打ちをした後、捨て台詞を残して、大人しく俺から離れて行った。


「大丈夫なんか。あんなに煽って、マジで怒ってるぞ」

 隣のアカガは俺に耳打ちしてきた。

「大丈夫だよ。それよりもあれ、よろしくな」

「あれって、あれなんか?いいけど、できるんか?」

「あぁ、問題なしだ」

 俺は親指を上げて見せる。


「準備が整いましたので、これから魔法実習を始めます」

 先生の魔法で拡張された声が聞こえてくる。


 ついに俺だけの戦いが始まる。

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