買い物(魔道具屋にて)
「お、やっと来たな。さぁ、街に繰り出すで」
アカガと校門前で待ち合わせをしていた。
魔法都市に来たばかりの俺では、どこにどんな店があるかなんてわからないから案内してもらおうと思っていたのだ。
「遅いじゃないか。生徒会室でもう少し時間をつぶしておけばよかったな」
「そうよ。連絡してくれてもよかったんじゃない」
しかし生徒会長とユキ先輩がアカガと一緒に待っていた。
「生徒会長とユキ先輩。何でこんな所に?」
「どうしてって、買い物にいくんだろう。頭数は多い方が、良いと思ってね。魔法実習に備えて、魔道具屋に行くんだろう」
「はい。でも良いんですか。急な話だったのに」
アカガに魔道具屋に連れて行ってくれと伝えたのも、授業の終わり際だったのに。
「困っている人を助けるのも、生徒会の役目だよ。ぜひとも僕に手伝わせてくれないか。な、ユキ」
「ええ、私にも手伝わせて」
生徒会長とユキ先輩がいるのは、心強い。
「ご迷惑でないのなら、よろしくお願いします」
「いやいや、僕たちが好きでやっているんだ。頭を下げないでくれよ。じゃあ、アカガ、行こうか。どこに行くんだい?」
「そんなアングラなところにはいきません。普通にビルディ魔道具屋やで」
「あそこね。ぴったりだわ」
「やろ。修平、出発や」
アカガが俺の肩に腕を回し、俺の肩をぐいっと引っ張るようにして、夕暮れの魔法都市を歩き始める。
夕暮れの道は帰宅途中の生徒が多く、生徒会長とユキ先輩は何度も声を掛けられていた。
そのたびに、二人は気さくに返事を返している。
そしてアカガは俺に腕を回したまま、道に面している店を指さし紹介してくれる。
「あの店は、美味しい串焼きの店なんやで。すっごく安くてな、両手にもって食うと幸せになれるんやで。それにあっちの店は、焼き肉の店なんや。そこで出す牛肉が安い上に、うまいんや。ここは凄いおすすめなんや。それとあっちは、菓子屋でさケーキが甘くて最高やで。ここのショートケーキが甘くて、ふわふわで美味しいんや。今度行こか?」
アカガはマシンガントークでしゃべり続け、俺が口をはさむ間もない。
「そうだな。今週末にでも行ってみようか」
「おお、そうやな。楽しそうやで、生徒会長とユキ先輩もどうですか」
一緒に歩いている先輩二人に、アカガは臆することなく話しかける。
「うん。ぜひ、参加させてくれよ」
「私も付き合うわ」
二人は快諾してくれた。
「よっしゃ。行くで!どこから、回ろか?」
「そこらへんは、任せるよ」
ハイテンションで週末の予定をアカガがしゃべり始める。
アカガが楽しそうで、自分も楽しくなる。
そして週末の予定はあっという間に決まってしまった。
これでこの週末は楽しみになった。
*
ビルディ魔道具屋は、大通りに面した大きな店だ。
綺麗な外見をしていて、ガラス窓から見える店内には、たくさんのお客さんがいる。
そのお客さんたちが全員、魔法使いの恰好をしているから、すごく怪しくみえた。
陳列されている道具も水晶やら小さな色のついた石やら変な模様のお守りなど、元の世界にあったら怪しいものばかりで、それを大勢が真剣に選んでいる事に違和感がある。
しかもアカガや生徒会長もそれに含まれる。
「修平、こんなのどうや、火の魔法を軽減する護符や」
「こんなのも面白いと思うよ。魔法石の指輪だ。これをつければ、少し魔力が上がるよ」
効果の良く分からないものを進めてくるが、「俺の買いたいものを先に見つけてからで、俺のお金にも限度があるし」と言ってかわす。
心配してくれているのは分かるが、ぶっちゃけそれを使ったとしても俺の防御力や魔力の元の値が低すぎるので、効果はないように思う。
「そうか。じゃあ、探しに……」
二人が俺に見せてきたものを棚に戻したとき、悲鳴が上がった。
既視感のある状況に、俺は胸をざわつかせる。
アカガと生徒会長、ユキ先輩を見ると、さっきまでの楽しそうに俺に商品を進めてきた顔から一転して緊張した顔つきとなっていた。
俺たちは頷き合って、その悲鳴のあった方角へと急いだ。
人だかりの中を謝りながら、その中心へと向かう。
そしてその中心で、砂になっていく中年の男性が見つけた。
やっぱりと心の内で思う。
どこかそういう予感がしていた。
既に腕はなくなり、おそらく胴体より上しか残っていない。
助かりようがないと思いつつも、その砂になりかけている男性に手を伸ばす。
しかし俺が何かをする前に、その男性は完全に一山の砂へとさらさらと変わってしまった。
店内は騒然となった。
そして俺たちは警察がくるまで待たされて、警察に事情聴取を受けた後、店から追い出された。
まだなにも買っていないのに。
魔法実習の対策が、俺の作戦が……。




