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Lv1の剣  作者: 豚野朗
魔法都市
46/206

廊下(黒幕)

「こんにちは、ゴジョ―先生」

 ピョイ先生の自室に向かう途中で、ピョイ教授が誰かと人気のない廊下で会話していた。

「はい。どうしましたか。唐突に挨拶なんかして」

「人と人の関係には、挨拶が必要と思っているんですよ、私は」

 ひょうひょうとピョイ教授は言う。


「そうですか。ワタシはそう思いませんけどね。結局、他者との関係は実力ですよ。研究した成果のみが、ワタシと貴方を関係づけているのですよ」

 なんか妙にしわがれた声の青白い男性だ。

 どこかうすら寒くなるような不気味な声。

 地の底から響くようなしわがれた低い音とまるで嘲笑うような軽蔑した雰囲気。

 嫌な気分になる声を響かせて、そのゴジョ―先生は話している。


「フリョ・リダの魔法実習の対戦相手を組ませたのはゴジョ―先生だっていうのを聞きましたが、これは本当ですか」

 不意に直球でピョイ教授はゴジョ―先生に聞いた。

 フリョ・リダと俺の試合を組んだのは、ゴジョ―先生。

 つまりこの魔法都市で起こっている異常が、この人によって引き起こされているという事なのか。

 だとしたら、この人が黒幕。


 俺は廊下の曲がり角の所で隠れて、息をひそめる。

 ピョイ教授とゴジョ―先生の話に聞き耳を立てた。


「何を気にしているのか、分かりませんが、ワタシはただ公平に決めただけですよ。人聞きが悪いですねぇ……」

 ひひひとどこか老獪な老人のように笑う。

「転入してきた生徒と学年のトップレベルとをぶつけるのは、果たして公平なんでしょうかねぇ。ちょっと転入生に対して、荷が重すぎると私は思いますけどね」

「ご自分の息のかかった生徒だから優しくしてほしいと?」

「いえいえ、そんな事は言っていません。公平と言うには、あまりにも歪んだ戦力差と思いませんか」

 ピョイ教授は普段と変わらぬ態度で、ゴジョ―先生を問い詰めていく。


「歪んでなどいませんよ。フリョ・リダも魔力量が多いと言えど、まだ制御が甘い所があります。それに魔法使いとしては落ち着きがない所もマイナス点ですね。それに魔法もスキルの火魔法は目覚ましい伸びがありますが、それ以外の魔法についてはまだ魔力量に追いついていない。これもマイナス点となります」

 嘲るように、フリョ・リダのマイナス点を言ってみせる。

 俺とフリョ・リダの戦いが公平だと、ピョイ教授に納得させたいのだろう。


 それからもいくつもの欠点を上げて、締めに「これでどうですか。新川修平という転入生と戦うのは公平でしょう」と言った。

 欠点があるからと言っても、レベル1の俺とは全く戦いの場所が違う。

 そんな減算していったとして、俺のところまで届くはずない。

 ピョイ教授も同じように思ったのだろう。

「なら、新川修平の計算を教えてもらえますか。彼はまだまだ学び始めで、授業にもまだ追いついていないようではないですか。聞いているでしょう、そんなことくらいは」


「ロックジャイアント、そしてダークナイト・グランドを倒した」

 ゴジョ―先生の口から出た言葉に俺は思わず声を上げてしまいそうになった。

「それでは足りませんか?」とゴジョ―先生は不敵な笑みを浮かべる。

 何故、知っているんだ。

 ロックジャイアントは始まりの町に出たからまだいい。

 いや、どうして俺がかかわっているのか知っているのか分からないが、そこは置いておく。

 しかしダークナイト・グランドはエルフの隠れ里で起きたことだ。

 あそこは王族にしか知りようのない場所で、しかもあの戦いはエルフたちと俺とアリスしかかかわっていないのだ。

 魔法都市で話したのも、ピョイ教授しかいない。

 後はアリシアさんだけど、彼女がアリスの情報を漏らすようには思えない。


「なるほど……、彼について何か知っていそうだ」

 ピョイ教授は不敵な笑みを浮かべているが、少し口角が震えているように見えた。

 あのひょうひょうとしているピョイ教授でさえ動揺している。

「ええ、どんな力を持って魔王の幹部の古株であるダークナイト・グランドと何前何万の攻撃を受けても死ななかったロックジャイアントを倒したのか、ぜひお聞きしたいですね」

「それはこの場ではやめておきましょう。彼の実力を見るのは、明日でしょう」

「ワタシも楽しみですよ。フリョ・リダ、相手にどんな力を見せてくれるのか」

 そう言い残し、ゴジョ―先生は笑いながら去っていった。


 俺はゴジョ―先生の得体の知れなさにつばを飲み込む。

 そして同時に安心もする。

 最期に言い残した言葉。

 ゴジョ―先生は、どちらの魔王幹部を俺が倒したと思い込んでいる。

 それはつまりアリス・キングについては、まだ知らないのだ。


「出てきてもいいよ」とピョイ教授が言った。

 俺が隠れて聞いていた事に、前から気付いていたようだ。

「ゴジョ―先生っていうのは、どんな人なんですか?」

 いの一番に、ピョイ教授が話していた人間について聞きたかった。

 あの不気味な雰囲気は、ただ者ではないような気がする。


「ゴジョ―先生は応用魔法学の権威だ」

「応用魔法学?」

「簡単に言うと、より簡単で楽に魔法を使えるようにしようっていう研究をしている人なんだよ。私とは全く違う学問の畑の人だ。かなり権威のある方だよ」

 あんなに不気味なのに。


「数年前まで魔王軍との戦いにわざわざ出向いて、そこで実地で研究していた。何があったのか、分からないけどあんなに暗く意地悪くなっちゃったけど」

「もとは違うんですか」

「ああ、もっと明るかったはずだよ。戦いに行くと心が病んじゃう人もいるから、彼もご多分に漏れずっていう感じなんじゃないかな」

 戦争に行くと、極限状態でおかしくなる人がいると聞いたことがある。


「じゃあ、あの人が本当に黒幕?不良生徒を砂にした張本人ですか」

「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。まだ全然証拠が集まっていないから、断言はしたくないね。でも可能性は高いかなぁ」

 やっぱりロックジャイアントとダークナイト・グランドについて知っていたことは、黒幕説に強い信ぴょう性を与える。


「問題は明日の魔法実習だね」

「はい。その件で、少しお話が」

「うん。なんだい」

 ピョイ教授が軽い感じで聞いてくる。

「ケーキを作った材料の残りってありますか?それと今日、買い物をしたいのでお金とこの後カノンに会いに行けません」

「良いよ、いくらいるんだい」

 ピョイ教授の返事が軽い。

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