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Lv1の剣  作者: 豚野朗
魔法都市
45/206

魔法(アカガ)

 翌日、明日の魔法実習の実践相手が発表された。

 もちろんそこには、俺の名前もあり、そしてその横に不良リーダーの名前もある。

 フリョ・リダ、それが彼の名前だ。

 リダは昨日言った通り、俺を対戦相手にさせたようだ。

 どうやったのかは、分からないが。


「おぉ、言った通りになっちまったな。対戦相手にならない可能性もあったけど、それはならなかったか」

「そうみたいだな。おっ、俺の前の試合は、アカガか」

 俺の名前の上には、アカガの名前がある。

「相手は、ハカナゲ・ハクか」

「ハクって、どんな奴なんだ」

「ハクっていうのは、魔力量だけで言えばこの学校1位の奴や」

「一位?それって、凄い奴なんじゃ」


 不良のリーダーとしてイキっているリダが、3位であれだけのことをしていたのに、一位だったらどんな人間なんだろうか。

 もう天上天下唯我独尊みたいな凄いヤバい奴なんじゃ。

 他の人間なんて、道端のゴミみたいにみているような、そんな人間だったりしないだろうか。


「ハクか。逆だな、すっごい気弱な奴やな。めっちゃ引っ込み思案やで」

「え?リダはあんなに威張っているのに、一位の人は気弱なのか。リダと合わせて、半分にすればちょうどよくなるんじゃないか」

「はっはっは。そうやな。そうなれば修平もリダと戦わずに済んだのにな」

 笑い事じゃないから、困る。


「しかしな、気が弱いのは、身体が弱いからなんやで」

「そうなのか?てっきり、そういう人は、魔法とかで身体が丈夫なのかと思っていたけど」

 病気とか怪我とかをすぐに魔法で治せるんじゃないかと。

「それは身の丈にあった魔力量だったらの話なんやで。レベルが低いうちに、魔力量だけ異様に高いと自分の魔力にあてられてかえって身体が悪くなってしまうらしいんや。だからハクは幼少期に病気で、ずっとベットの上だったそうや」

 なるほど、魔力が高いのにもそんなデメリットがあるとは思わなかった。


 元の世界で言うアレルギーみたいなものに近いのかもしれない。

 自分の免疫が過剰反応するように、魔力で自分にダメージを与えてしまう。

 自分の望まないものを勝手に得てしまい、それで苦労しているという所に共感してしまう。

 俺も女神から与えられた剣のせいで、レベル1のままレベルが上がらず不必要な苦労をしている。

 今回の件だって、レベルを上げたり、スキルを取ったりできればいくらかのやりようがあったはずだ。


「そのハクって子は、今はどうなんだ。レベルが低いうちにってことは、レベルを上げれば問題ないってことだろう」

「察しが良いやんけ。その通りやで、今は普通の可愛い女子生徒や。かなり人気があるんやで」

「女子生徒?」

 リダが男だったから、ハクも男かと思っていた。

 女子だったのか。


「外見が凄く特徴的だから、修平も見たことあるんやないか。髪の白くて、小さい子やで」

「髪が白い……、あっ、見たことある。リダの不良生徒たちに、からまれていた人だ。あれって、もしかしてリダに魔力が高いから当てつけで絡まれていたんじゃないか」

 魔法学校に来た初日に、窓から見た不良生徒たちが絡んでいて先生に庇われていた女の子だ。

「もう見たことあるんやな。どうや、可愛かったやろ」

「遠めだったからよく見えなかったけど、多分可愛いと思う」

 ほとんど顔は見ていないけど。


「せやろ。あんなかわいい子が、オレの実践相手とか心が痛むわぁ」

「勝つ自信があるんだな。そういえば、アカガはどんな魔法を使うんだ?」

 何気なくきくと、アカガは「見てみるか?」と軽い口調で言った。

「見れるなら、見てみたい」と言うと、「なら、昼休みに魔法訓練場に来てくれよ」とアカガは明るく言った。


 *


 昼休みに、魔法訓練場へアカガと共に来た。

 魔法訓練場は円形のドーム状の建物で、強化魔法がかけられた魔法実習を行う場所だ。

 つまりここが明日の魔法実習の実践で使う場所である。

 校舎から少し離れた場所にあり、魔法実習のためにしか使われないために閑散としている。

 広々とした空間と観客席があって、ライブでもできそうだ。

 そんな広大な空間に、俺とアカガだけいて、何ともさみしく感じる。


「よし。時間もないし、さっそくオレの魔法を見せてやるよ」

 アカガは胸を張って、片手を掲げる。

 そしてバンと地面にその手のひらをたたきつけた。

 ズドンと地面から巨大な柱が現れた。

 直方体の見上げるほど巨大な土の塊だ。


 そびえたつ土の塔をパンパンと叩き、どうだと自信満々に胸を張る。

「アカガの魔法は土魔法ってことか」

「そうや」

 これだけの土の塊を動かせるなら、ある程度の魔法なら防いでしまえるだろう。

 土を高くできるなら、横にも広げられるだろうし、それなら火の魔法を受けても自分の身を守る壁を作れる。

 それにこれを人に向ければ、充分な凶器になる。

 汎用性が高そうで羨ましい。


「土の塊を出せるんだったら、穴を掘ったり地面の中に沈めたりとかもできるんだよな」

「うん?まぁ、そうだやけど……」

「なるほどぉ。攻撃も防御もできて、妨害もできるのか」

 自分が使えないにもかかわらず、リダとの戦いに思いをはせる。

 土の壁を出して、火の魔法をしのぎながら、土の塊を飛ばす。

 これだけで、そこそこいい戦いができるんじゃないだろうか。

 問題は、俺が魔力を持っていないというだけで。


「おい、なんかオレに何か言うことないんか?」

「へっ?」

 リダとの戦いの対策を考えていると、口を尖らせたアカガに文句を言われた。

 機嫌を損ねてしまったらしい。

「ほら、凄いとか。かっこいいとか。天才とか。見せたんやから、それくらい言ってくれったって、良くないか?」

 褒めて欲しいとの事らしい。


「ごめん、ごめん。ちょっと考えちゃって。アカガは凄いよ。それにかっこいいし。魔法の天才だわ」

 慌てて取り繕って、アカガをほめたたえる。

「せやろせやろ。もっと見せてやるわ」

 地面をバンバンと連続で叩いて、何本も土の塊を出しまくった。

 危ない危ない。

 考え込んでしまうのは、俺の悪いくせだ。

 アカガを置いていかないようにしないと。


 ズンズンズンと土の塊が、まるで俺たちを閉じ込めるような土の壁になってきていた。

「ちょっと、アカガ!なんかすごい事になってきてるから、そろそろ止めて!」

 魔法を使っているアカガの姿が、巨大な土の壁で見えなくなってしまっている。

「おっと!悪い。調子に乗ってたわ」

 そして逆再生するように、ずるずると土の壁が地面へと戻っていく。

 土の壁が生えてきたのと同じ速度で戻っていって、すぐに土の壁は消えてしまった。


 あっという間に、元の魔法訓練場の姿に戻る。

 さっきまで土の壁が目の前を埋め尽くすほどたっていたとは思えない。


「凄いな。あんなに自在に土を操れるなんて、これはスキルの魔法なんだろ」

「そうやで。オレほどの土魔法使いはそうはいやへんで」

 ふふんと胸を逸らす姿を見るに、それは誇張でもなく本当の事なんだろう。

 でもアリスのド派手で高火力の魔法を見慣れてしまった俺は、ちょっと物足りなく感じてしまう部分はちょっとある。

 でもそれはレベル差によるものだろうから、この感情は自分の胸の中にしまっておこう。


「凄いな。まさに天才土魔法使いだな」

「せやろ。もっと言ってくれてもかまへんで」

「凄い凄い。土の壁が見上げるほどデカかったし、大量に生えてきたし」

「いやー、それほどでも」

 アカガが嬉しそうに笑いながら、頭をかく。

 自分で要求しておいて、凄い照れているな。


「さっきの土は、零から作っているのか。それとも……」

「あはは。流石にそんなことしてられんわ。地面の土をちょこっと拝借しているんや」

「それって、あの壁をはやしていた時はこの地面の下はスカスカだったってことか?」

「そうやで。崩れないようにするのも、めっちゃ手間なんや」

「意外に繊細なんだな。それで……」

 頭の中に浮かんだ案を、アカガに聞いてみる。


 するとアカガはニヤッと意地悪く笑って、「なんやそれ、面白いやないか。いいやん。手伝うで」と快諾してくれた。

 後は、自分が短い間でどこまで整えられるかだ。

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