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Lv1の剣  作者: 豚野朗
魔法都市
39/206

魔法学校登校(初日)

 職員室に行くと、すぐに教室に案内される。


「まったくこんな忙しい時期に生徒を入れるなんて、これだからピョイ教授は……」

 案内してくれる先生は文句を言っているが、仕方ないだろう。

 昨日来たばかりの人間を突然、魔法学校に通学させろといっているのだから。

 それでも俺に聞こえるように愚痴るのは、どうかと思うけれども。


 2階の東端の教室のドアの前につくと、「ここがあなたの教室です」と軽く説明される。

 そして心の準備もさせてもらえないまま先生は入ってしまい、俺もついていく。

 教室の中では、30人程度の男女の生徒たちが騒がしくしていたが、先生が教室に入った途端ぴたっと静かになる。

 統率が取れていて、なんだか堅苦しそうだというのが第一印象だった。


「本日から、この教室で一緒に過ごすことになるお友達を紹介します」

 そう言って、黒板に俺の名前を書く。

 そして「じゃあ、軽く自己紹介して」と促され、「新川修平です。ピョイ教授から紹介されてきました。魔法はずぶの素人ですので、学んでいきたいと思います」と簡単に自己紹介を言う。

 ピョイ教授の名前を出したら、全員がざわざわと隣の人と話し出した。


「静かに」

 先生の一声で、生徒たちはすぐにぴたりと話をとめる。

「新川さんの席は、一番後ろの席です。あの赤い髪のアカガさんの隣ですよ」

「オレや、オレ!ここやで!」

 赤い髪のアカガさんは声を張り上げて、ブンブンと手を振る。

 短い赤い髪がとても目につく。

 だからこそ目印に、先生は言ったのだろう。

 とても快活で良い人そうに見える。

 その隣の窓際に空いている席があった。


 俺はカバンを机の横にかけて、その席に座る。

「よろしくな。オレはアカガ・レッドや。アカガって呼んでくれよな」

「よろしく。新川修平です」

 差し出された手を握って、握手をする。

「何かわからんことがあったら、オレにドンと任せな!」

 アカガは胸をドンと叩きながら言った。

「じゃあ、一つ頼んでも良いですか」

「もちろんや。何でも良いで」

「教科書を見せてください」

「おう!」

 教科書だけはまだもらっていなかったから、声を掛けてくれて助かった。

 魔法学校生活は良い感じに滑り出した。


 *


「おっしゃあ、今日の授業も終わりやな」

 アカガは隣で伸びをしていた。

 逆に俺は、疲れて机に突っ伏してしまう。

「大丈夫か。今日めっちゃくちゃ授業で当てられてたな。隣で見てて、笑ったわ」

「笑い事じゃない」

 今日の授業は6つあったが、そのすべての授業で何故か俺を最初に当てるのだ。

 嫌がらせでもしているんじゃないかと疑ってしまうほどに。

 こちらは全く知らないド素人なのに、答えられるわけがない。

 しかも当然わかるよなみたいな良い方されるから、たまったもんじゃない。

 俺も当然、「分かりません」と答えたけど。


「先生も修平の実力を見ているんじゃないか」

 たしかにそうとも言えなくもない。

「そういう物か」

「いや、知らんけど。でも修平は全然分かっていないみたいだったけどな」

 先生の質問はどちらかと言うと、基礎的なものだったらしい。

 それでも俺は魔法なんて存在しない世界から来たばかりなんだから、まったく分からなくても仕方がない。

 戦い続きで、アリスや魔王幹部、ミコの魔法は何度も見てきたけど、その魔法がどんなふうに発動しているのかなんて気にしている余裕なんてなかったから。

 そう考えると、今こんなにゆったりして死の危険もなく1日が終わるのは久しぶりだ。

 この魔法都市に来る時にも、何回か戦う場面はあったから。


「自己紹介でも言っていたけど、本当に魔法についてずぶの素人なんやな。全部分からないなんて、びっくりしたわ」

「そうだよ。まったく魔法なんて知らない」

「あはは、変な奴やな。面白い。気に入ったで!」

 正直に言ったら、何か気に入られた。


「オレはこの後、生徒会に行くんやけど。修平もどうや、オレと一緒に来ないか。みんなに紹介するで」

 意外にもアカガは生徒会に入っているらしい。

「いや、俺はピョイ教授の手伝いがあるから、いけないんだ」と断った。

 俺の生活を援助してくれているピョイ教授から任せられたカノンのお世話を、授業が終わったらしなければならないことになっている。

「そうか、ピョイ教授の。それも自己紹介で言っていたな。用事があるんなら良いんだ。無理言ってすまんかったな。じゃあ、オレは行くわ」

「行ってらっしゃい」

「おう。また明日な」

 アカガはタタタと小走りで、教室から外へ出て行ってしまった。


「さて、ピョイ教授の部屋に行きますか」

 カバンを持って、まだ騒がしい教室の外に出る。

 廊下は帰宅する生徒で未だにあふれかえっていた。

 揃って黒いローブと帽子をかぶっている。

 俺もその中の一人と考えると、なんだか魔法使いの一人になったように思えた。

 魔法は使えないけど。

 レベル1というステータスのせいで、ミコから受け継いだ『植物魔法』を使う事ができないほどの魔力がない。


 その時、ごらぁと怒鳴り声が聞こえた。

 窓から外を見下ろすと、5,6人の生徒とゴリラのような体の大きな先生が対峙していた。

 先生の背後には、一人の女子生徒が隠れているようだ。

 登下校している生徒の多い中で、そこだけ避けられて、ぽっかりと穴が空いている。

 そのおかげで様子が良く見える。

「またお前らは、他人が嫌がることをするなと言っているだろう。怖がっているじゃないか」

「何、言っているんですか。俺たちは遊びに行こうって誘ってやっているだけじゃないですか」

 不良な生徒が複数人で、女子生徒を無理やり誘っていたのを先生にとがめられているらしい。

 怒られていても、不良生徒は全然こりていないようで、常に余裕のある人を舐めているような態度をとっている。

 しかもリーダー格のような人間の周りで、仲間ががやがやとリーダーを応援していた。

 元の世界にもああいう連中はいるけど、こっちの世界でもやっぱりいるんだな。


「またやってるよ」

「本当だ」

 俺と同じように窓からそのやり取りを見ていた女子生徒が小声で話をしている。

「いくら貴族で、最近魔力が上がって上位の成績を取っているって言ってもねぇ」

「そうそう。最近調子に乗ってるよね。お金もいっぱい寄付しているって言っても親の金だし」

「だよねぇ。同じ貴族でも生徒会長とは天と地の差だよね」

 隣の女子生徒の言っていることも怖い。

 嫌な奴らだとしても、辛辣過ぎないだろうか。

 貴族のぼんぼんが、金と権力でぶいぶい言わせているのか。


「そうだよな」と先生の後ろに隠れている女子生徒に脅すように聞く。

「俺たちはただお茶をしませんかって言っているだけだよな」

 何故か女子生徒はもごもごとして、はっきりと答えない。

 先生もいるんだから、違うと言ってやればいいのに。

「ほら、早く帰りなさい」

 そう言って、先生は女子生徒を開放する。

 女子生徒は先生に頭を下げて、生徒たちの中に紛れてどこかへ行ってしまった。

 そしてゴリラのような先生は自分の身体を盾にするように、不良生徒に立ちふさがる。

「ちょっと……。あーぁ、行っちゃったぁ。先生どうしてくれるんだよ」


 そして今度は、先生に絡み始める。

「先生さぁ、俺たちに逆らったら、どうなるか分かっているんだよなぁ」

「知らん。さっさとお前たちも帰りなさい」

「言っちゃおうかなぁ。何も悪い事をしていない生徒に怒鳴りつける先生がいたってさぁ」

 間延びしたイヤらしい言い方で、その巨漢の先生に言う。

「勝手にしなさい」

 そう言って、巨漢の先生は去っていく。

 不良生徒は舌打ちをして、「行こうぜ」と言ってどこかへ行ってしまう。


「行っちゃったわね」

「怖いよね。私も絡まれちゃったらどうしよう」

「ほんとだよね、こわーい」

 そう言いあいながら、女子生徒は手すりを乗り越えて下りて行った。

 身投げをしているように見えるけど、彼女たちは一階で安全に着地しているだろう。

 こういう日本ではありえない動きにも慣れて行かないと。

 一瞬、ドキッとしてしまった。

 これでいきなり大声を上げたり騒いだりしたら、いろいろと不審がられてしまうかもしれない。


 さっきの変な不良たちの事は忘れてしまおう。

 どうせ、何のかかわりもないだろうし

 早くピョイ教授の元に行こう。

 カノンも待っていることだし。

 何だったら、ピョイ教授に魔法について教えてもらおうか。

 アリスも今日、地下下水道の調査に行っているはずだから、いたら何か見つかったか聞いてみよう。

 俺は一階に向かって、階段を下りて行った。

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