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Lv1の剣  作者: 豚野朗
魔法都市
37/206

魔法都市(ピョイ教授)

 目覚ましの音に起こされる。

 目覚めきれず、半覚醒した頭で目覚まし時計を手だけで探る。

 何度か手が宙をかき、そして円形の物体にたどり着く。

 滑らかな表面を撫でてボタンを探すも、見つからない。

 ずっとやかましい音が続き、徐々に頭も覚醒していく。


 そしてやっとこの目覚ましは魔力で止めなければならないのだと思い出した。

 ベットの近くに立てかけられた杖を取る。

 その杖の先端についている宝玉を、目覚まし時計に押し当てると、目覚まし時計はやっと静かになった。

「あぁぁぁああ……」

 声にもならない声を上げて、ベットで起き上がる。


 ぼうっとする頭を押さえながら、ベットから抜け出る。

 冷えた部屋の空気に、ぶるりと身体が震えた。

「寒い……」

 ストーブへ杖を向ける。するとストーブにある窓が赤く光り、中で焔の魔石が燃え上がる。すぐに熱を発し始めた。

 近くの椅子に座って、ストーブに手をかざして温まる。


 しばらく温まっていると、やっと頭が覚めてきた。

 そして昨日買ってきたパンを取り出して、おもむろに食べ始める。

 食べ終わると、すぐに出かける時間になってしまっていた。

 制服に着替えて、カバンを手にもって外に出る。


 朝の明るい光に、、目が一瞬くらむ。

 しかしすぐに外の景色が目に入る。

 目の前を杖に乗って飛ぶ少女が飛んで行った。

 一人だけではない、老若男女問わず自分の杖にまたがって3階程度の高さを縦横無尽に飛び待っている。

 そしてほとんどの人は、頭に魔女のようなとんがり帽子と黒いローブを身にまとっていた。


 ここは魔法都市。

 大陸のあちこちから魔法の素質がある人間が集められて、ここで魔法の修練とレベル上げが行われている。

 特に魔法都市には、魔法学校があり、若い男女が多いのは俺と同じように通学中だからだろう。

 俺も魔法学校に向かうために、階段を下りていく。

 かっかっかと固い金属音がする。


 背の高い建物が多く、コンクリートでつくられたような外観をしていて、まるで日本に戻ってきたかのような気分になる。

 地面も舗装されていて、歩きやすいのだが、地上を歩いている人は少ない。

 俺以外に広い道路を歩いて移動している人は、十数人もいないだろう。

 杖に乗れば、空を飛んでどこへでも最短距離で移動できるんだから、歩く人が少ないのにも納得がいく。


 頭上を何十人もの人が、飛び交う様子は昨日も見たが圧巻させられる。

 まるで空に流れる水の流れのようだ。

 空を右に左へ自在に流れていく。


 これぞ異世界といえるような景色だ。


 巨大な西洋の城のような建物が見えてくる。

 あれこそが、魔法都市が誇る魔法学校だ。

 シンデレラ城のような白く美しくそびえたつ巨大な学校である。

 そこに何十人と言う生徒たちが、その学校に向かって杖で飛び、学校の敷地内に降り立つ。


 巨人でも通るのかというほど巨大な校門。

 まるでプールのような敷地外からでも見える巨大な噴水。

 白く舗装された道。

 漫画の中でしか見たことがないような豪華な風景が見える。

 これがこれから俺が通う事になる学校である。


 杖を持っていかつい表情をしている守衛に、話しかけて手続きを済ませる。

 上から何人も生徒たちが下りてきて、一緒に城の入口へと向かう。

 元の世界の学生に戻ったような気分になる。


 城の中に入ると、巨大なエントランスがある。

 吹き抜けになっており、10階建てのすべての階を見ることができる。

 荘厳な装飾がなされていて、学校ではなくまるで美術館に来てしまったかのように感じた。

 高そうな絵や彫刻が並んでいて、どれくらいお金がかけられているかもわからない。


 そして周りの一緒に並んで歩いていた生徒たちは、エントランスに入った途端にぴょんと跳躍したり、杖に乗ったりしてエントランスが吹き抜けと言う構造を生かして、自分の教室のある階へと飛んで行ってしまう。

 目の前にある巨大な階段を使っている人は誰一人としていない。

 豪華な装飾のなされた階段が、どこか悲し気に移る。

 哀れな。


 俺はそのまま一階の廊下を歩く。

 進につれてどんどんと周囲の生徒たちは少なくなっていった。

 まるでこの先には呪われた何かがあるかのように。

 そしてまったく生徒を見かけなくなり、代わりに怪しい人形が増えていく。

 子供番組に出てきそうな巨大な動物を模した人形のようなものから、精巧な人間にそっくりな人形みたいなものまでさまざまなものが廊下の両脇に置かれている。


 どこか並んでいる証明も、エントランスと比べて暗く感じて、不気味さが増していく。

 人形の量が増えて、廊下を塞ぐようになってくる。

 踏まないように気を付けながら進んでいくと、やっと目的の部屋の前にたどり着いた。

 そこからは怪しい正気のような靄が出ているように見えたが、それはきっとこの人形に取り囲まれている俺の見せる幻覚だろう。

 一呼吸を置いて、ガラッと扉を開ける。


「ピョイ教授ぅ!凄い煙出てる!」

「おおっと!失敗だぁ!魔力注ぐのをやめたま……」

 最期までその言葉は続かず、途中で部屋の中の何かが爆発した。

 部屋で悲鳴が上がったが、すぐに笑い声に変わる。


「失敗失敗」とすすで汚れた白衣を着て、今の失敗をまるで反省していないような軽く言いながら笑っている。

「爆発するとか、おもしろぉい!」

 アリスもピョイ教授と一緒に、むしろ楽しそうに笑っていた。

 さっきみえていた黒いものは、厳格ではなく実際に見えていたものだったのか。


「お疲れ様です」

 一秒でも早く入っていたら爆発に巻き込まれて、俺が大変なことになっていたかもしれない状況を作っている人たちに挨拶をしたくはないが、一応挨拶をしておく。

「おお、お疲れ、お疲れ。約束の時間五分前、君、さてはまじめだな」

 ピョイ教授はこちらに両手の人差し指を向けながら、奇怪なポーズをとる。

「日本人なので。アリスもおはよう」

「おはよう。新川ももうちょっと早く来れば、面白いものが見えたのに」

「それに巻き込まれたら、俺がどうなるか分かっていっているのか。化けて出るぞ」

 アリスとも挨拶を済ませて、入りたくないが部屋の中に入る。


 先ほどの爆発のせいか、部屋が汚い。

 いや、汚いのは昨日と変わらないな。

 昨日もこんな感じだった。

 汚い実験道具と山のように積み重ねられた紙の束、筆記用具なども出しっぱなしだ。

 爆発のせいで床にまでそれらが落ちているが、もう気にしたって仕方がない。

 容赦なく紙を踏みつけながら、ピョイ教授に近付く。


 細身で背が高くてモテそうにみえるが、ぼさぼさの髪と巨大な瓶底眼鏡をかけていてはむしろマイナスだろう。

 しかもこんな性格だ。

 更に付け加えれば、人形と言う人形が好きらしく、与えられた部屋に際限なく持ってきてついに廊下にまで侵食させている狂人。

 こんな場所に来たがる生徒もいないだろう。


 来たがるのは、アリスのような変わり者か俺のようにどうしても用事がある人間だけだろう。

「それであの子は、どこにいるんです?姿が見えませんけど……」

 俺は部屋の中を見回して、ピョイ教授に尋ねる。

「あの子なら、ほら、ちょうど来たじゃない」

 指をさす方向をみると、ちょうど隣に続く扉が開いて、あの子が部屋の中に入ってきた。


「ゴ主人様、オ帰りなさいマセ」

 そう言いながら、青いメイド服のスカートのすそ部分を持ち上げて、お上品にお辞儀をするカノンがいた。


「凄いじゃないか!教えたことがちゃんとできているじゃないか」

 ピョイ教授は大きな拍手をしながら、カノンをほめたたえる。

「可愛いわよ!カノンちゃん」

 一緒になってアリスも手を叩いていた。


「そう!そこでもう少し前かがみになって、胸元を見せつければ最高だ!」

 ピョイ教授が過激な要求を流れるようにカノンに与え、「こう、デスか?」とカノンが大きな乳房の谷間が俺に見えるように少し前かがみになった。

 メイド服によって彩られた巨乳が、小さく左右に揺れる。


「って、何をやっているんですか!ピョイ教授!」

 俺は頭に湧き出た煩悩を打ち消すように叫んだ。

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