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Lv1の剣  作者: 豚野朗
エルフの隠れ里
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バトル(対黒騎士翁)

「確かにダークナイト・グランドね」とアリスが、森の奥を見て言った。

 俺には全く見えないが。

 一昨日の時といい、どんな視力しているんだよ。


 馬車を壊されてはたまらないので、遠くに置いている。

 森の中を歩きで、足元の悪い中動くのは大変だった。


「どうされますか?」とガリアさんがアリスに問いかける。

「周りのエルフは退避させた?」

「はい。すでに四方100mから出ています」

「そう。なら、私がやるわ」

 アリスがこちらに手を差し出してきたから、もう言葉もなく剣を渡す。


 明るい陽光が、彼女に渡した剣と金色の髪をまぶしく輝かせた。

 その後ろ姿は華奢な女性にしか見えないのに、どこか大きく見える。


「ミコ、みんなを守ってね」

「はい。お任せください」

 アリスはミコに声を掛け、俺の隣に立つミコは大きくうなずいた。


「新川もお願いね」と最後に俺に言った。

「ああ、俺は何もできないけどな」

 俺の役割は剣を渡すみたいなしょうもない事しかないけど。


 ダークナイト・グランドがいるらしい方向へ剣を構えた。

 そして剣が輝く。

『プロミネンス・エクスプロージョン・セイバー』

 剣を振り、その剣閃からまっすぐに光が放たれる。

 それはあっという間に、森の奥に消えて、その後凄まじい爆発が巻き起こった。


 ドウと爆発による爆風が、森を駆け巡り、俺たちに襲い掛かる。

「きゃ……」とすぐ近くで悲鳴が上がり、とっさにミコの小さな手を取った。

「すみません」と小さな声で謝られる。

 いや、そんな事はないよと言おうとした瞬間。


 ギィン!


 金属がぶつかり合う音が聞こえた。

 アリスの女神の剣と黒い鎧の大剣がぶつかり合い、つばぜり合いをしている。

 俺が見えない範囲から、あの一瞬でここまで移動してきたっていうのか?

 この森の中という足元の悪い空間で?


 つばぜり合いの中、アリスは力で黒い鎧の剣を押し退け、そのままもう一度黒い鎧に剣を振り下ろす。

 押し退けられたにもかかわらず、少しも体制を崩さず、黒い鎧はその剣を受け止めた。

 ガィン!

 剣と剣がぶつかり合う甲高い嫌な音がする。

 そして黒い鎧は後ろへ飛び距離を取った。

『シャイン・フィフス・アロー』とアリスが唱え、アリスの周りに5つの光の球体が現れ、そこから黒い鎧へと放たれる。

 黒い鎧はまだ宙にいた。

 これは当たるだろうと思っていたが、『シャドウ・ウォール』と黒い鎧が低い男の声で言うと、突然下から黒い四角い壁がそそり立った。


 光りの矢は、その壁に阻まれて黒い鎧に当たらない。

『シャドウ・ソー』

 そしてその壁から何本もの黒いとげが、俺たちに向かって放たれる。

 そのとげをアリスは軽やかに空中に跳ねて避け、『プラント・ウォール』とミコの呪文で生えてきた植物が前方を覆って、とげを防いだ。


 空に飛びあがったアリスは、木の幹を蹴り、まるでロケットのように黒い鎧との距離を詰めた。

 黒い鎧は待っていたとばかりに剣を悠々と構え、アリスの突撃に応じる。

 再びの金属音。

『シャイニング・セイバー』とアリスが叫び、剣が輝く。

『シャドウ・スライド』

 黒い鎧はぬるりと不自然に地面を滑る。

 全く身体を動かさずに、真後ろへ動き、アリスの輝く剣の振り下ろしを避けた。


 アリスは後ろへ飛んで、俺たちの近くに来た。

 そしてタイミングよく、俺の手の中に剣が戻ってくる。

 渡そうとすると、何も言わずに手で止められる。

「ギリギリまで持ってて」とアリスが小声で言った。


「ほう、久しぶりだな。やはり、一昨日の一撃はお主だったのか」

 黒い鎧、ダークナイト・グランドがしゃべり始めた。

 魔法を使っていたからそうではないかと思っていたけれど、しゃべれるし高度な戦術も使ってくる。


「そうよ。久しぶりね、ダークナイト・グランド。まだ生きていたのね。命中したと思ったのに」

「儂がそう簡単に死ぬわけがないだろう」

 アリスとダークナイト・グランドが軽口をたたき合う。

「こんな場所で、こんな珍しい者どもと出会うとはな」

 ガチャとダークナイト・グランドは大剣を中段に構えなおす。


「そこの生意気な人間の姫とまさか大昔にダークエルフ以外滅びたと思っておったエルフ族とまた出会えるとは」

 ギラリと兜の下の目がこちらに向いた気がした。

「また楽しめそうだな」

 ぎゅっとミコが俺と握っている手を握ってくる。


 痛いんだけど……。

 そう言いたいが、ちらっとミコの顔を見ると、そういえない雰囲気がある。

 どこか固く緊張しているように感じる。

 女の子に手を握られているのは役得だし、少しの痛みは我慢しよう。これ以上強く握られたら、振り払うけど。


「まずは私を倒して見せてから、言ってくれない?」

「お主の剣はどうした?」

「ハンデよ。これ位で十分でしょう」

「ほう。面白い。ならば、その剣で儂を倒してみよ」

 ダークナイト・グランドは鎧を着ているにも関わらず、一切音を立てずにアリスへ走りこんだ。


 俺の手から剣を奪い取り、アリスも応えるようにダークナイト・グランドへと突撃した。

 ギィンギィンと何度も剣が打ち合う。

『シャドウ・ソー』

 ダークナイト・グランドの足元からとげがアリスの顔に向かって射出される。

 回転しながら回避して、その勢いで続けて攻撃した。

 ダークナイト・グランドはまるで分かっているかのように、アリスの剣を簡単に受け止める。


『シャドウ・ナイフ』

 ダークナイト・グランドが俺たちに向かって、手を振るう。

 黒い刃物が飛んでくる。

『プラント・ウォール』

 その刃物は植物の壁に防がれる。

「流石、ミコさん」

 そしてミコはなぜか俺に寄りかかってきていた。

 腕にミコの発達中の身体が当たるから、やめて欲しいんだけど。


 ダークナイト・グランドとの戦いは、どんどんと激しくなっていく。

 黒いとげやナイフが飛びまわり、それをアリスは回避したり光の壁で防いだりしていた。

 ロックジャイアントの時のようなデカい攻撃をぶつけていくような戦い方ではない。

 相手の不意や死角をついて、相手より少しでも優位に立とうとする戦い方。


 俺の手の中に剣が戻る。

『シャイニング・ボム』

 ぴかっとまぶしい光が溢れた。

「こっちよ」

 アリスの声が上からして、剣を持っている手を上に掲げる。

 一瞬で剣の感触が消える。


『シャイニング・セイバー』

 真上で金髪をなびかせながら、宙を泳ぐアリスが剣を振るう。

 剣閃がそのまま光の刃となって、ダークナイト・グランドへと飛んでいく。

 しかしダークナイト・グランドは足さばきだけで、その光を避ける。

『シャイニング・セイバー』

 もう一度光の刃が飛ぶ。

 それも軽く避けられ、『シャドウ・スライド』とまるでスピードスケートのように、地面を滑るように近づいてくる。


 ドン。バキ。

 アリスが木を足場にして、ダークナイト・グランドに突進する。

 衝撃で木が折れてしまうほどの力だった。

 そしてダークナイトへ両手で剣を握って、全力の切り付けを行う。

 ギィン。

 鳴り響く剣の打ち合う音。


「不思議な戦い方をするな。どうしたお主らしくもない」

「黙りなさい」

 アリスはダークナイト・グランドの鎧の上から腹をけりつけて、ダークナイト・グランドは吹き飛ぶ。

 ざざざと着地するも、よろめく気配はない。


 そう、この戦いはアリスに不利だ。

 何故なら武器を常に持っていられないから。

 そしてダークナイト・グランドに早くも悟られ始めている。

 接近戦で戦っても、どこかで離脱をしなければいけない。

 さっきの『シャイニング・ボム』も目くらましをして、武器が消えるのを悟られないようにするためだったのだろう。


「その剣には、怨敵たる女神の強力な祝福がかかっておる。こちらの剣が刃こぼれしそうだ。だが、何かデメリットを持ってるな?」

 ダークナイト・グランドが『シャドウ・ソー』とアリスを攻撃し、さらに『シャドウ・ナイフ』と俺たちに向かっても投げてくる。

「あの者たちは、何故あそこにいる?」

 ダークナイト・グランドがアリスに上段から凄まじい威力の振り下ろしを放つ。


 顔の前に構えた剣で受け止め、「ぐっ」と少し苦しそうな声を出した。

 すぐにダークナイト・グランドは上段に構えなおし、『シャドウ・バイト』と唱えながら振り下ろす。

 上から振り下ろされる大剣。

 それと同時に影の中から現れる巨大な刃。

 まるではさみのように、アリスの身体を縦に両断しようとしていた。


「危ない!」

 俺は咄嗟に叫んでしまう。

「分かってる!」

 アリスはタタンとステップを踏んで、そのはさみ攻撃から逃げる。

 ガシャン。

 大剣と刃がぶつかり、刃が砕ける。黒い刃は塵となって消えた。


 ダークナイト・グランドは黒い大剣を振るい、逃げたアリスを追う。

『シャイニング・セイバー』

 追ってくるダークナイト・グランドに光の刃を放つも、かがめるだけで避けてしまった。

 そして再び交差する剣。

 つばぜり合いになる。


 ダークナイト・グランドとアリスの剣がそれから何度も打ち付けあう。

 4桁のレベルを持った者同士がぶつけ合う金属音が数度鳴り、そして俺の手元に戻ってくる。


 手の中から剣が消えるや否やアリスは、ダッと地面を蹴り離脱する。

「なるほどな。その剣はずっともっていられない、ということらしい」

 今度こそ完全にばれてしまった。

 大剣を担ぎながら、ゆっくりと俺たちの方へ向かってくる。

「あら、あなたの足もでしょう?」

 俺たちの目の前にアリスは一瞬で移動して、ダークナイト・グランドに言い放つ。


「あなたはもっと早いはず。私の一撃が効いたみたいね。魔法に頼らなくては、高速で移動できないなんて、ダークナイト・グランドの名が泣くわよ」

「ふっ。なりたくてなった訳ではない。ただ戦っていたら、いつの間にかその名が付いただけの事」

「けがを押してまで、戦う理由は何かしら?本来のあなたなら、万全を期して回復に専念すると思ったけど、何かここに御用があるのかしら?」

 ダークナイト・グランドが大剣を構える。

「答えると思うか?」

「いいえ。全然」


「しかしエルフに王女。それがいるという事は、この付近に何かがあると思って間違いない」

「それは、どうかしらね?」

 ダークナイト・グランドとアリスの会話が続く。

 俺たちはすっかり蚊帳の外だ。


 しかしこのまま戦闘が続けば、アリスは剣が消えるたびに戦いが振り出しに戻される。

 しかも剣を持っていない瞬間は無防備だ。

 次の剣が俺に戻ってくる時を、ダークナイト・グランドは見逃してくれはしないだろう。

 だから今も、アリスは俺の手から剣を取らず、会話をしてタイミングを見計らっている。


 ダークナイト・グランドも足を怪我していると言っていた。

 それを利用して、アリスは追い詰められるのか。


 きっと次のタイミングが、最後だ。

 どちらかが追い詰められればおしまいだ。

 俺にできることは何もないのか?

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